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全米女子オープンで苦汁をなめる選手たち、渋野日向子は「断捨離」で開眼か

2020年12月27日 06時00分更新

文● 藤江直人(ダイヤモンド・オンライン

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photo:Jamie Squire/gettyimages

新星が次々と輝きを放った今シーズンの女子ゴルフ界は19歳のルーキー、新世紀世代の笹生優花が賞金ランキングで堂々のトップに立ち、新型コロナウイルスの影響で合算の形で争われる来シーズンへ折り返した。プラチナ世代の20歳・古江彩佳が2位、黄金世代の21歳・原英莉花が3位で続く一方で、不振にあえいだメジャー覇者、22歳の渋野日向子も12月の全米女子オープンで4位に入り、復活ののろしを上げながら激戦必至の2021年を見すえている。(ノンフィクションライター 藤江直人)

黄金世代、プラチナ世代、そして新世紀世代
女子ゴルフのスター続々

 黄金世代の背中を追うようにプラチナ世代が続き、さらには新世紀世代までが台頭してくる。新型コロナウイルス禍に見舞われ、23試合が中止を余儀なくされた今シーズンの国内女子ゴルフを振り返ってみれば、20歳前後の若手選手たちがまばゆい輝きを放ち続ける光景が生まれた。

 勝みなみ、畑岡奈紗ら1998年度生まれの黄金世代は、攻め抜くゴルフで昨夏のAIG全英女子オープンを制覇し、日本人選手で2人目のメジャーチャンピオンになった渋野日向子が成就させたシンデレラストーリーとともに一気に注目を集めた。今シーズンでは9月のゴルフ5レディスで小祝さくらが通算2勝目をマーク。ジャンボ尾崎を師匠に持つ原英莉花は10月の日本女子オープン、11月のJLPGAツアーチャンピオンシップを制覇。昨シーズンの畑岡に続いて、国内メジャーを連勝した史上11人目の選手になった。

 2000年度生まれのプラチナ世代(ミレニアム世代とも呼ばれる)をけん引したのは古江彩佳。9月のデサントレディースで通算2勝目を挙げると、11月には伊藤園レディス、大王製紙エリエールレディスを連勝。ルーキーの西村優菜も、11月の三菱電機レディスでツアー初優勝を果たした。

 さらに2001年生まれの新世紀世代が鮮烈なデビューを飾る。日本人の父とフィリピン人の母の間に生まれた笹生優花が、プロ転向後で2戦目となった8月のNEC軽井沢72ゴルフトーナメントで初優勝。2週間後のニトリレディスも制し、11月のTOTOジャパンクラシックでも2位に入った。

 賞金ランキングでは、19歳ながら9389万1170円を稼いだ笹生が堂々のトップ。2位が9050万2992円の古江で、3位は7072万2208円の原、4位は6288万6208円の小祝だった。西村も4796万4000円で7位につけるなど、3つの世代が上位をほぼ独占している。

アメリカで打ちのめされた日本女子ゴルフ

 しかし、国内での戦いを終え、アメリカへと移した舞台で全員が打ちのめされた。従来の6月開催が新型コロナウイルスの影響で12月へと移った今年最後の海外女子メジャーである全米女子オープンに挑んだが、日本ツアーの賞金ランキング上位陣で、予選を通過したのは笹生だけだった。

 西村が通算6オーバーの95位タイ、古江が同8オーバーの113位タイ、小祝が同10オーバーの129位タイという結果に終わった。そして渡米直前のJLPGAツアーチャンピオンシップを制し、勢いと自信を持って初の海外メジャーに挑んだはずの原は、同19オーバーの152位で大会から姿を消した。

 ただでさえ距離が長く、女子選手に容赦なく牙をむいてくるタフなコースに雨や急激な冷え込みを含めた悪天候が拍車をかけ、3日目以降は難易度が増した全米女子オープンで優勝争いを展開。時差の関係で未明になる日本のファンを、最終日まで熱狂させたのは渋野だった。通算1アンダーの4位で激闘を終えた。

 最終日に4アンダーをマークし、メジャー初優勝を怒涛の逆転劇で達成したキム・アリム(韓国)とは2打差。日本人選手で初めてとなるメジャータイトル2冠獲得を逃し、さまざまな思いが脳裏を駆けめぐっていたなかで、渋野は涙をこらえながら努めて前を向いた。

「この悔しい気持ちはアメリカツアーでしか晴らせない。今回戦ってみて、アメリカツアーへ行きたい気持ちがさらに強くなったので、絶対にまたここで戦いたいと思います」

渋野、「断捨離」の末に手にした成果

 今シーズンの渋野は順風満帆な軌跡を描いてきたわけではない。連覇がかかった全英女子オープンを含めて、初陣から3戦連続で予選落ち。舞台をアメリカ本土へ移しても2桁順位が続き、海外転戦のひと区切りとなる10月のメジャー第3戦、KPMG全米女子プロ選手権でも58位タイ。しかし、ホールアウト直後に漏らした言葉が、右肩上がりに転じさせるきっかけとなった。

「こっち(アメリカ)で戦うとしたら、メジャーチャンピオンという言葉をもう捨ててもいいんじゃないかと。日本では42年ぶり(のメジャー制覇)だったので、何かを背負っていかなければいけないけど、こっちではその名が恥ずかしいと思うぐらいのレベルの低さなので」

 全英女子オープンの舞台となったスコットランドでは、海沿いのコース特有の強風に苦しめられた。アメリカ本土では粘り気のある深いラフと高速グリーン、そして連日のように厳しい位置に切られるピンと、自分自身だけでなく難易度を上げんとする主催者の意図とも戦い続けた。

 昨シーズンは国内ツアーでも4勝を挙げて、賞金ランキングでも2位に躍進した。オフはさらなるステップアップを目指してさまざまな改造に着手しながら、通常ならば3月初旬に迎えるシーズン初陣が6月下旬にまでずれ込むなかで、成果に対する手応えをつかめないまま海を渡った。

 再渡米前の大王製紙エリエールレディスで5位、JLPGAツアーチャンピオンシップで3位タイと上向きに転じたものの、賞金1652万9600円はランキングで35位に甘んじている。ただ、昨シーズンの10分の1ほどに減った獲得賞金額は、より高く跳び上がるために屈んでいる状態の証しでもある。

 全米女子オープンの2日目を単独首位で終え、好調の要因を問われた渋野は再び「捨てる」という言葉を口にしている。気負いやプレッシャーを生み出す過去の栄光だけではない。オフに施した改造も合わないと判断すれば迷わず捨てて、以前の自分に戻した上で磨き上げていく。いわゆる「断捨離」を断行した末に手にした成果に、渋野は新たな光明を見いだしていた。

「いままでの自分を捨てることです。捨てたことかな。プロ1年目というか、プロになりたて、ゴルフを始めたてぐらいの気持ちの方が、ゴルフでも気持ち的にもすごく成長できると思っています」

 あえて高いレベルへ挑み、一敗地にまみれ続けたからこそ、はい上がっていくためのターニングポイントを自ら手繰り寄せた。来シーズンも国内ツアーと、メジャーを中心にスポットで海外へ挑む日々が繰り返されるなかで、渋野の目線はすでに高く設定されている。

「自分で作り上げ始めた新しいゴルフを完成に近づけていけるように、しっかりと努力していきたい」

渋野の苦しみが、他の選手たちにも当てはまる

 半年ほど前の渋野と同じ図式が、全米女子オープンで浮上のきっかけすらつかめず、予選落ちを喫してしまった黄金世代やプラチナ世代の担い手たちにも当てはまる。

 例えば原は悔しさを手土産にしながら帰国し、新型コロナウイルス防疫のための2週間の隔離生活に入ったなかで自身のインスタグラムを更新。そのなかで最後に力こぶを表す絵文字を添えながら、来シーズンへ向けて捲土重来を期している。

「“いい経験でした”って言葉は薄い気がしてなんだか好きではないけど、何年後かにそう言える日が来るように。戦えなかった悔しさもバネに課題をひとつずつクリアしてコツコツと前進していきます」

 予選を突破した新世紀世代の笹生は、通算5オーバーの13位に食い込んだ。来シーズンの出場権が得られるトップ10まではわずかに及ばなかったが、下を向くことなく視線を前へ向けている。

「悔いはない。子どものころからずっとアメリカに来たい、という夢がある。オフに入って今後やるべきことを、伸ばしていくべきところを考えていきたい」

 アメリカツアーでは世界ランキングで日本人最上位の7位につける畑岡が、2018シーズンからたくましく戦い続けている。そして日本国内に目を移せば今シーズンを席巻した3つの世代が現状に満足せず、視線をより高いステージへと掲げながら、2021年3月に幕を開ける戦いに向けて、つかの間のオフで英気を養っていく。

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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