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「アパ社長カレー」が700万食達成の大ヒットとなった理由

2020年12月16日 06時00分更新

文● 元谷 拓(ダイヤモンド・オンライン

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コロナ禍で経済的ダメージを受けているホテル業界。そんな状況で、常に斬新な企画を打ち出し、積極的に新しい取り組みにチャレンジしているのがアパホテルです。中でも、アパ社長カレーは、700万食を達成するほどの大ヒット商品。飽食といわれる時代に、ホテルカレーがなぜここまで売れる商品となったのでしょうか。そこで今回は、アパホテル株式会社代表取締役専務でアパ社長カレーのプロデューサーでもある元谷拓氏の著書『アパ社長カレーの野望』(青春出版社)から、「アパ社長カレー」大ヒットの背景に迫ります。

アパ社長カレーが生まれたきっかけ

アパ社長カレー

 アパ社長カレーはアパホテル直営レストランの本格派ビーフカレーとして開発し、2011年3月に個食用としても発売。発売以降は、数々の栄えある賞や評価をいただき、着実に売り上げを伸ばしていきました。気づけば、累計700万食を超えるミリオンセラー商品にすくすくと成長中です(2020年12月現在)。

 正直にいえば、「ここまで売れるとは思わなかった」というのが本音です。というのも、もともとはアパホテルの直営レストランの味を統一したいという思いから、業務用カレーとして開発したもの。せっかくおいしいカレーができたのだから、個食用にパッケージしてお土産としても活用してもらおう、といういわば「業務用のついでに」販売したのです。

なぜカレーのパッケージに“社長の顔”が入っているのか

「せっかくおいしいカレーができたのだから、ホテルに泊まらない人にも食べてもらいたい」というわけで、ホテルの業務用カレーだけでなく、1人前用200グラムも発売することになり、アパグループ代表・元谷外志雄のもとに企画書が上げられました。

「うん、うまい!」カレーを試食した代表はそういって決済のハンコをポンと押したのですが、「味は合格だがネーミングがな……」と渋い顔をしていました。

 実は、私が企画書を提出した段階では、商品名は「アパホテルの本格派ビーフカレー」。もちろん、パッケージにはとんかつとキャベツをあしらった金沢カレーの盛り付けイメージを前面に出すつもりでした。

「アパホテルといえば社長だろ。社長どこ行ったんや」

 言葉につまる私を見透かしたかのように代表が一言、ズバリと放ちました。

「逃げるなよ」

 そして追い打ちをかけるかのように、

「隠すなよ」

 そこからは経営のプロにして、敏腕プロデューサーの元谷外志雄の独擅場です。

「これじゃ面白くもなんともない。お客様も手に取らん」

「ネーミングを間違うと誰も買わない」

「アパ社長カレーでどうだ」

「それならパッケージにも社長がいなきゃダメだろ」

「インパクト重視だ。フロントに置けばいいお土産になるぞ」

 こんな経緯で、おいしそうなカレーを見下ろす位置に、レオナルド・ダ・ヴィンチが描いたモナ・リザのような、謎めいた微笑みをたたえたアパ社長の写真が入ったアパ社長カレーができあがりました。

 代表の読み通り、フロントに来る人の目をくぎづけにし、通りすぎる人の足が止まり思わず二度見する強力な魔力……もとい「魅力」で売り上げに貢献しています。

 お客様の手に届けるためには、意表をつくインパクト、大胆で強気の戦略、話題性のあるトンガリ感が必要です。そして何より、自分のなかの「スマートにコトをおさめたい」という見栄に打ち克つ覚悟が大事、と痛感した一幕でした。

「万人受けしない覚悟」が強力なファンを生む

「編集部員が勝手に食べ比べ!ホテルカレー勝手に番付」

 そう題された『週刊ダイヤモンド』の記事で、ノミネートされていたのは、大手シティホテルを筆頭とするそうそうたる名門ホテルのカレーでした。

 そのなかにアパ社長カレーが7位に堂々のランクイン!うれしく思うと同時に、味には自信があったので納得の結果でした。

 さらに、記事の詳細を読んで、「これはガチ(真剣勝負)だな!」と膝を打ちました。「パッケージ、ネーミングともに強烈なインパクト」というのは周知のとおりですが、「最もおいしいの獲得数だけでいえば最多だった」とか。

 好きな人と嫌いな人がはっきりしている。実に、アパ社長カレーらしい結果でした。好みというのは、人それぞれ。辛いのが好きな人もいれば、甘いのがいいという人もいるし、苦みがなきゃダメだという人もいます。全員が好きなものなどありえません。

 だから商品はどこかに的をしぼるわけです。そして、そのしぼり加減がアパ社長カレーはご存知の通り、かなりトンガリ気味。アパ社長のどアップ広告も、面白がってくれる人と、「公共の福祉に反する!」と怒る人がいるほど両極です。

 すべての人に支持されようなんて欲張らず「好き」といってくれる人を大切にする。そういう「万人受けしない覚悟」は商品への情熱になります。結果、応援してくれる人も多くなる。それが証明されたのです。

 満点の獲得数のほかにもう一つ、並み居るホテルのカレーの中でアパ社長カレーがダントツだったのが、390円(税込み)という価格の安さです。一番高価な大手シティホテルさんは900円以上、もっとも多かった価格帯は800円代ですから、ほとんどのホテルカレーがアパ社長カレーの倍以上です。

 実をいうと当初、アパ社長カレーの販売価格を390円にするか500円にするかで悩みました。当然、500円のほうが利益も出ます。でも、もともとアパ社長カレーは利益目的じゃなく熱い想いで生まれたんだ、ということを思い出しました。

「アパホテルのおいしいカレーを食べて、アパを知ってほしい!」「キッズファーストでお子様にも食べてほしい!」…500円で得られる利益より、もっと大きな野望があるのです。そして、そのパッションが予期せぬ効果や思いがけない御縁を連れてくることにもつながっています。

「おいしい」だけでは終わらない人気のヒミツ

 自分が食べておしまいだったら、アパ社長カレーのここまでのヒットはなかったことでしょう。実は、お土産やちょっとしたプレゼントなど、「使い勝手のいい商品」は広がりを生みます。

 アパ社長カレーは、「誰にあげても確実に一定の効果が期待できるシチュエーション」で活用ができます。それは、忘年会やパーティでのビンゴ抽選会、ゴルフコンペなどの賞品です。

 パーティやゴルフコンペで、幹事さんが意外と苦労するのが賞品選びと盛り上がる演出。それもどちらかといえば下位のものです。優勝や上位の賞品は、そのときの最新機器や人気グッズなど、高額の「いい賞品」がすんなり決まるもの。でも、下位の商品は限られた予算内に収めつつも喜ばれるものを選ばないといけないので、みなさん頭をひねるようです。

 その適役として、お手頃価格で賞味期限が長くみんなが好きなカレー、しかもインパクト抜群!なアパ社長カレーの出番です。「景品パーク」というサイトでは、常時ランキング上位と好評です(2020年11月現在、参加賞・残念賞景品部門2位)。

「下位の賞品として購入。通常、下位の賞品はもらっても喜ばれない物が多いなか、アパ社長カレーは紹介しただけで、ドッと笑いがこぼれ、場が盛り上がりました」

「クイズの残念賞で配りました。面白いし、残念賞と言えど美味しいと評判」

 など、幹事さんたちのコメントを読むと、みなさん上手に使ってくださっていて、こちらが勉強になります。

 さらに、アパ社内や会社のゴルフコンペでも使うなかで、「もっと大きいのも欲しいなぁ」とひらめいたので、アパ社長カレー4個分を面で並べたビッグパッケージもつくりました。当然、社長の顔も4倍になるのでインパクト増。会場の笑いの大きさだけなら、優勝賞品を抜いて1位です。

 こんなふうに、もらった人だけじゃなく周りの人も楽しめるのがアパ社長カレーの強みです。個性を活かして、自分の持ち場で一番をとる。人でもモノでも大事なことですよね。

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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