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「幼児期の習い事」はまだ早い?子どもらしく育てるための順番とは

2020年12月09日 06時00分更新

文● 虹乃美稀子(ダイヤモンド・オンライン

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早期の習い事などで、幼児にふさわしくないプレッシャーやストレスが与えられることもある(写真はイメージです) Photo:PIXTA

料理にも目安としての「順番」があるように、人間の成長発達にも普遍的な「順番」があります。からだを育てる時期に早期教育や知能開発を無理にさせると、自己肯定感が低かったり、何事にも受け身に育ってしまう恐れがあると、虹のこども園園長でシュタイナー幼児教育者である虹乃美稀子さんはいいます。そこで今回は、虹乃さんの著書『いちばん大事な子育ての順番』(青春出版社)から、幼児期に心がけたい育児のヒントを紹介します。

「個性」を大事にするあまり「発達の順番」を見落としがちに

 子育てにおいて今は「個」が尊重される時代。個性を育むこと、それはとても素晴らしいことなのですが「個」を尊重したいと思うばかりに、大事な「発達の順番」の視点が抜け落ちてしまっていることが多いのです。

 そして、発達にそぐわない関わりやアプローチによって子育てを難しくしてしまったり、発達のバランスがとれていないところを安易に「個性」と認めて接してしまったりしていることが、実は子どもの健やかな成長を阻害していた、というケースも少なくありません。

 人間の成長の法則は、下から上へ、つまり「足から頭へ」です。人間たる象徴が直立二足歩行であるように、まずはしっかりと立ち上がり、己の人生を生きる土台となる「からだ」を育てることが、幼児期には最重要課題です。

 そのからだづくりの基礎工事が終わる大体の目安が7歳前後に始まる「歯の生え変わり」です。このサインから、足の次の段階である胸の領域、つまり「感情」を豊かに育てていく時期に入ります。

 そしてそれ以降、成人するまでの間に発達の領域は頭へと至り、「思考」の力を育んでいくのです。

幼児期は文字をまだ覚えなくても大丈夫

 幼児期は、おしゃべりも達者になっていき、大人の真似をして智恵のあることも言ったりやったりします。また、子どもたちは、字を早く覚えたくて仕方のないものです。幼児は模倣欲求がありますから、大人たちが字を書いているのを見れば真似したくなります。

 では、文字に興味を持った子どもたちにはどんどん教えてあげたほうがよいのでしょうか。実は私は、卒園するまで子どもに文字を教えることは一切ありません。

 幼児期は、人間の進化の歴史の中で言えば「縄文時代」。まだ文字のなかった時代の意識の在りようを、人間は育ちの中で十分に体験する必要があるのです。それは、人生の宝物ともいうべき生まれてからおよそ7年間の「最初の子ども時代」を保障することでもあります。

 それ以降は、否が応でも文字文化にどっぷりと浸っていくことになります。もう、文字が分からなかった時代に帰ることはできません。現代において、文字のない世界に生きることはほぼ不可能です。文字に触れずにこの世界を直接体験することができる時代そのものが、今や絶滅の危機に瀕しています。

世界をイメージで捉えさせることの大切さ

 たとえば、「A」という形が英語の文字であると知らなければ、これは三角帽子の小人に見えたり、お父さんの使っている脚立に見えたりするかもしれません。しかしこれが文字の「A」だと教えられれば、もうそれはいつどこで見ても、アルファベットの「A」にしか見えなくなってしまうのです。

 知的になっていくということは、魔法が解けていくようなものです。幼児の感覚は世界に開かれていて、まだ自分と他者を分ける感覚もおぼろげですから、お花が語りかけてきたり、自分がぶつかった机も痛くて泣いていると思ったりするのです。

 幼児期にこういった心象の中でたっぷりと過ごすことは、他者への思いやりや愛情を育てる上でとても大切です。知的な働きかけをあまりに急ぎすぎると、こうした宝物の時間を味わえず、子どもなのにどこか疲れ切った心を持った幼児になってしまいます。

 子どもは、子どもらしく過ごせるよう、その子ども時代を保障されなくてはいけません。知的なことを学ぶのは小学生になってからで十分です。楽しみに待つことが、学習意欲を高めます。

習い事は早くから始めさせるべきか

 時々、いわゆる「お勉強型幼稚園」にお子さんを通わせているお母さん方から悩み相談を受けます。クラスで子ども同士の揉め事が続き、楽しく遊べていないとか、「自分なんて」という言葉をよく口にするようになったとか。これらは、幼児にふさわしくないプレッシャーやストレスを与えていることであらわれてくる、「本来の子どもらしくない」姿です。

 学齢期前の幼児時代にお勉強させたり、タイムスケジュールで管理したりするような時間の過ごし方は、心身の発達の側面からすると逆効果なのです。

 よくメディアでいわれる「○歳のうちに○○を始めないと手遅れ」「脳は早いうちに働きかけないと、そのあとは成長しない」などの言葉はすべて、子どもをターゲットとしたビジネスで使われる常套句です。そこには必ずと言っていいほど、有名大学の先生やお医者さんといったその道の専門家の言葉や数値が「証言」として紹介されます。

 しかし、子どもにとって本当に望ましいことを知っているのは、子どもの発達に常に寄り添っている大人です。つまり保育士や幼稚園の先生、そして小児科の先生など。もちろん、発達支援のサポートをしている先生も、非常に豊富な経験に基づく知識をお持ちです。

 そうした子どものことを本当によく知っている人たちは、安易に習い事や早期教育を勧めることは決してありません。子どもにとって、どんな環境や働きかけが、健やかな成長にふさわしいかということを、よく知っているからです。

「発達には順番がある」ということを大人が理解して関わるということは、別の角度から見ると、「子どもが子どもらしく過ごせる子ども時代」を保障するということでもあります。

 子どもを小さな大人として扱うのではなく、子どもらしく在れることを大事にする社会は、そうした価値観を市民文化として育んでいくことができるでしょう。

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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