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離職率の高い業界こそ「正規雇用・人材育成」にこだわるべき理由

2020年12月03日 06時00分更新

文● ジャイアント佐藤(ダイヤモンド・オンライン

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コロナ禍で労働市場が激変
離職率が高い業界では人手不足は続く?

 コロナ禍で景気はどんどん悪くなっている。そして景気が悪くなるとその影響がはっきり現れるのが労働市場だ。非正規社員、外国人労働者は真っ先に契約終了や解雇の対象になっていく。

 ただし、元々離職率が高い業界では景気が悪くなっても人手不足は続いていくと予想されている。例えば、建築塗装などの現場仕事だ。

 そもそも、なぜ離職率が高いのか?現場仕事の業界は元々、非正規雇用の労働者が多い。そして、それに加えて、若い頃から「この仕事をしたいという高い意識」を持って入社する人が非常に少ないことも原因の1つとなっている。

 世の中には、華のある業種はたくさんある。建築塗装業界で働く若者に限っていうと、そういった華のある業種に行きたくても行けなかった人が入ってくる傾向が強いのだ。さらに、孫請けひ孫請けの立場で仕事をするのが当然の建築塗装業界では、個人の努力や成果が見えづらく、いくらやっても顧客からの評価につながりにくい。

 つまり、離職率が高くても当たり前の仕組みになってしまっているのだ。

 そんな中、この不況下でも正規雇用・人材育成にこだわり、従業員のモチベーションを最大限に上げることにより離職率を激減させ、さらには高い顧客満足度を実現している企業を見つけた。

 屋根・外壁のプロ「ヤネカベ」を提供する株式会社プロタイムズ総合研究所だ。今回は同社代表取締役の大友健右さんに話を聞いてみた。

何よりも重要なのは
業界の『慣習』を打ち破ること

「全ての業界にはその業界特有の『慣習』があります。それ自体は当然ことなのですが『慣習』が当たり前になりすぎた場合、『慣習』はルールを超えてしまいます。建築塗装の業界はこの『慣習』が非常に強い業界なんです。それが、働く人間のモチベーションを奪っている1つの原因でもあるのです」(大友さん)

 具体的にその慣習とは、『早く完成させる』ことが最も重要とされることだ。

 丁寧に仕事をする、材料にこだわる、顧客にわかりやすく説明をするなどということは2の次、3の次なのだ。とにかく早く完成させる職人が最も評価される。

 また建築塗装の仕事は職人の腕に依存する部分が多いため、腕のいい職人は材料が足りなくてもそれなりに見栄えのいい状態を短時間で作り上げてしまう。これでは腕のよさ=手抜きの技術にもなってしまう。

 結果、建築塗装に限らずリフォーム回りの業界は、手抜き仕事をする業者がごまんと存在する状態に陥っている。そこに仕事に対するこだわりや誇りは存在しない。

 この状況を打破するためには、慣習を壊す必要があると大友さんは考えた。

職人が所属するのは
「現場革命部」という部署

 まず一番に大切なのは従業員だ。

「業界に魅力がないのだったら、うちの会社に業界の常識を超えた魅力を作ればいいと思いました。基本正規雇用、仕事をしっかり丁寧に教える、一人ひとりが言いたいことを言える環境を作る、評価は最大限にする、といった基本的なことですが、そのような文化を作ることにより従業員が自分の仕事に『誇り』を持ってくれると考えました。その『誇り』により従業員は長く心地よく仕事ができる、そしてそれが丁寧で質の高い仕事、顧客満足度の向上につながるのです」(大友さん)

 厚生労働省の発表によると大学新卒者の3年以内の離職率は32%だという。しかし同社の離職率は8%と非常に低い。売上高は、2011年は12.8億円だったが右肩上がりで成長を続け、2019年は45.8億円になった。

 従業員の「誇り」が数字にも表れているのだ。

 顧客からの信頼も高く、工事の際は気に入った職人を指名して注文する顧客もいる。また家の窓から「いつも丁寧なお仕事をありがとうございます」とメッセージカードを出してくれる顧客もいるという。

 これまでの建築塗装の現場には、なかなかなかった現象だ。そんな同社の職人が所属する部署名は「現場革命部」。これまでの現場に革命を起こすための部署なのだ。

ベトナム人スタッフと
技能実習生が活躍

 同社では6年ほど前から外国人スタッフも働いている。きっかけはベトナム人のトアンさんが入社したことだ。

「本当、お試しに程度くらいにしか考えていなかったのですが『仕事への姿勢、働きっぷり、誠実さ』などどれを取っても素晴らしすぎて衝撃を受けました」(大友さん)

 瞬く間にトアンさんは仕事を覚え、今ではCADオペレーターとして働いている。結婚もして子供もいる。

ベストスタッフ賞として表彰されるザンさん。仕事終わりに日本語の勉強をし、職人とコミュニケーションを取りながらどんどん技術を習得するザンさんは、チーム全体の成長に大きく貢献している

 トアンさんの活躍をきっかけに、同社ではベトナムから数名の技能実習生を受け入れることにした。

 技能実習生といえば劣悪な環境に住まされたり、パスポートを取り上げられたりといったことが頻繁にニュースを賑わせているが、同社の技能実習生が住む寮は新築だ。また日本という異国で暮らす彼らの心のケアにも細心の注意を払っている。

 取材に応じてくれたトアンさんと、塗装の技能実習生・ザンさんは流暢な日本語で声を揃えて言っていた。

左から大友さん、トアンさん、ザンさん。打ち合わせでは日本人外国人問わず全員がファーストネームやニックネームでフランクに話し合うのが同社の特徴だ

「最初は日本語もほとんどわからないし不安で不安でしょうがなかったです。しかし、会社の人がものすごく親切で、仕事も丁寧に教えてくれて本当に助かりました。期間が許す限り、いつまでもこの会社で働きたいです」

 技能実習生は正規雇用社員とは違うが、同社では仕事への取り組みに対する評価は社員と一緒。職位に関係なく公正に評価されるのだ。

 同社の徹底的に人材育成にこだわった「現場革命」は、業界を一変させてしまう可能性を十分にはらんでいる。

(ジャイアント佐藤/5時から作家塾(R))

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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