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株価急上昇、期待先行の底流にある「新しい経済変化」とは

2020年12月02日 06時00分更新

文● 熊野英生(ダイヤモンド・オンライン

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写真はイメージです Photo:PIXTA

NYダウ、日経平均株価が急上昇
ワクチンなどへの期待は本当になるのか

 最近、株価上昇のペースが速い。

 日経平均株価は、2020年10月後半から急上昇している。この変化は、史上初の3万ドルを突破したNYダウ工業株平均など米国の株価ともシンクロした動きである。

 特徴としては、新型コロナウイルスの感染が起きる以前の株価のレンジを完全に上抜けている点だ。

 感染が再拡大する中で実体経済がコロナ以前よりも良いとは絶対にいえないから、そこには期待が先行した過大評価かもしれないという疑念がつきまとう。

 問われるのは、株価上昇に込められた期待感が本当かどうかである。

 ひとつの焦点はワクチンの効果だ。

 米製薬大手2社がワクチンの有効性確認を11月16、18日に発表した。近いうちにワクチンの緊急使用許可の申請をするという。こうしたワクチンの接種開始の期待感が、2021年の早い時期の経済回復へとつながっている。

 しかし、多くの専門家が指摘するのは、国民の多くがワクチンを接種して集団免疫を獲得しようとしても、集団免疫率が6~7割まで高まらないと、コロナ以前のように自由な活動には戻れないという点だ。

 まだ国民の間には、副作用など未知なるリスクを警戒してワクチンを打ちたくないという人も相当数いる。また、多くの人がワクチンを打ち始めたから、もう安心だと思って、ワクチンを打っていない人までマスクを外して自由に行動すると感染率が上がってしまう。

 こうした点はワクチンへの期待先行で株価が上がっても、思い通りに経済を正常化させにくい根拠になる。

アフターコロナは以前より経済は好調か?
巣ごもり、ネット取引需要は消えない

 次に、仮にワクチンへの期待がその通りに現実化したとしよう。そうなれば実体経済はコロナ以前よりも好調になるかを考えたい。

 コロナ禍でさまざま需要が増えたり、生まれたりしたことは周知の事実だ。消費における巣ごもり需要やインターネット取引で消費や投資をする需要、さらには働き方がテレワーク中心になる人が増え、それに関連する需要もあるだろう。

 これらはコロナ感染が収束したとしても、消えない需要だと考えられる。

 すると、こうした新しい需要がGDP(国内総生産)を押し上げて、コロナで減退した観光や娯楽、外食などのサービス支出がワクチン効果で回復したときに、経済のパイをより大きく膨らませるだろうと考えられる。

 半面、雇用や所得の水準がコロナ以前よりも落ちていたとすると、家計消費が元の消費性向(=消費支出/可処分所得)に戻ったとしても、消費の水準はコロナ以前よりも低くなる。雇用に対する打撃次第ではアフターコロナの需要は変わってしまう。

 不幸中の幸いは、雇用への打撃が緊急事態宣言が出されていた2020年4~5月の頃に予想されたよりも悪くないことがわかってきたことだ。

 コロナ以前の企業は金余りといわれて、財務的な余力があった。雇用調整助成金の支給が大規模に行われて、企業の雇用調整がかなり抑えられたという政策効果もある。

 企業の供給能力が大きく毀損(きそん)していないから、コロナ禍で低下した稼働率をコロナ以前まで戻せば、再び成長し始める発射台はそれほど低くならないと考えられる。

デジタル化の新展開
広がるワーケーションや副業

 こうしたことを考えると、株価上昇に込められた期待が本当かどうかは、コロ収束後、新しい成長分野が生まれて、その分野の成長力が全体をけん引していきそうかが、重要なポイントだ。

 例えば、ネットショッピングの支出は、2020年9月は前年比が2.6%増だ(図表2)。

 同じ9月に家計調査の2人以上世帯の消費支出は、前年比▲10.2%だった。さらにネットショッピング支出のうちでは、旅行関係・チケット代を除くと、前年比21.1%と急増している。

 このことから、消費活動が、実店舗からインターネット取引に大きくシフトしていることがわかる。

 こうしたネット消費の増加は、コロナが収束してもサービスがにわかに減るとはいえない。むしろ、コロナを契機にネット取引の市場が成長するとみた方がよい。

 仮に、コロナが完全終息しなくても、経済の回復とともにネット取引市場は成長が加速していくだろう。

 テレワークの拡大も住宅やパソコンなどの新たな消費を開拓していきそうだ。コロナが収束しても、東京など大都市から通勤せず、郊外に暮らしながら労働する人は増えるだろう。熱海や軽井沢、那須、館山といった地域が候補地になるだろう。

 ワーケーションという暮らし方だ。

 また、居場所を定めずにパソコンひとつで働けることになれば、副業や兼業も広がるだろう。

 すでに大手企業では、副業、兼業を認めるケースが増えていて、その動きが連鎖反応を起こそうとしている。コロナ禍はテレワークを通じて、働き方に大きな風穴を開けた。これは民間企業におけるデジタル化の展開ともいえよう。

経済回復への全般的期待よりも
新分野や新ビジネスへの期待

 コロナ禍では、実体経済の悪化に対して株価の落ち込みが短期間で終わり、最近では感染「第3波」が到来しているのに株価水準が以前を上回ってきている。

 だがそのことは、ここまで分析してきた通り、先行きの成長期待を過大に抱いているからだとは簡単にはいえない。

 実体経済を新しく成長させるデジタル化の芽は、隠れたところで育っている。

 株価の中でも、米ナスダックの上昇ペースは大きく、日本でも東証マザーズのような新興企業銘柄の方がより上昇傾向が強い。

 それは実体経済全般への回復期待が強いというよりも、新しいテクノロジーや新ビジネスへの成長期待という方が正しいかもしれない。単に世界的な金融緩和による産物とか、米大統領が交代することへの期待だけで生じているとも考えられない。

 ただ、株価と実体経済の関係は相対的なものであり、株価上昇が進めばそれはバブル化した領域に移行することもある。

 このことは注意すべきだが、筆者が言いたいのは、見えにくいところで意外に進もうとしているデジタル化に伴う新しい経済変化を過小評価してはいけないということだ。

(第一生命経済研究所首席エコノミスト 熊野英生)

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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