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性病だけじゃない!「体の恥ずかしい部分」に異変が起きる6つの怖い病気

2020年11月27日 06時00分更新

文● 木原洋美(ダイヤモンド・オンライン

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写真はイメージです Photo:PIXTA

性病は「プライベートゾーン」と呼ばれる「他人に見せるのが恥ずかしい部分」に症状が出ることも多いため、ついつい診断や治療も躊躇しがちだ。折しも、11月25日から12月1日の「世界エイズデー」までの1週間は「性の健康週間」。性病だけでなく、プライベートゾーンに異変が起きる心配な病気について、プライベートケアクリニック東京院長の尾上泰彦医師に取材した。(医療ジャーナリスト 木原洋美)

性感染症の現場では
PCRは10年以上前からお馴染み

「性感染症なんて自分には関係ない」と思い込んでいる人は少なくないだろう。だが、半世紀にわたって性感染症にかかわり、100万人近い患者を診てきた『プライベートケアクリニック東京』の尾上泰彦院長は注意を呼び掛ける。

 世界ではこの30年余りの間に多数の新興感染症が見つかっており、簡単には治療できない性感染症も増えている。そうした感染症の中には、(1)無症状であるものも多く、(2)自覚しない、(3)症状が軽く気が付かない、(4)自覚症状があっても正しい治療に結びつかない等の理由で、いつの間にか他の人に感染を広げてしまうことがあるという。また妊娠中の女性が感染すれば、(5)胎児や新生児への感染も懸念され、一度感染するとなかなか駆除されないまま体のなかに潜み続け、(6)免疫が低下すると症状が出てきたり、(7)エイズのように時間がたってから発症するケースも珍しくない。

プライベートケアクリニック東京の尾上泰彦(おのえ・やすひこ)院長

 いずれも性感染症の特徴だが、読者の中には「現在流行中の新型コロナウイルス感染症に似ている」思った人もいるだろう。

 そう、性感染症も新型コロナウイルス感染症も「感染症」であることに変わりはなく、共通点も多い。コロナ禍で有名になったPCR検査も、性感染症の現場では10年以上前から行われていることなのだ。それゆえ性感染症は誰にでも感染する可能性があり、「自分だけは無関係」と安心していたら大間違いなのである。

 尾上院長は著書『性感染症 プライベートゾーンの怖い医学』(角川新書)で「性感染症を知り、その予防法を学ぶことは新型コロナウイルスを含め、今後人類に襲いかかるであろう、新たな感染症から身を守る術を学ぶことでもあるのです」と述べている。

 折しも11月25日から12月1日までの1週間は「性の健康週間」だ。『性感染症 プライベートゾーンの怖い医学』より、プライベートゾーンに異変が起きる心配な疾患や、医師すらも見逃しがちな性感染症をピックアップして紹介する。性感染症について学ぶきっかけにしてもらえれば幸いだ。

プライベートゾーンに
異変が起きる心配な疾患

「プライベートゾーン」とは、アメリカで生まれた言葉で、「水着を着たときに隠れる場所」から転じて、「みだりに他人に見せたり、触らせたりすることがはばかられる、性に関係のある、自分の身体の大切な場所」を意味する。たとえ相手が医師であっても恥ずかしく、診てもらうことを躊躇する人も多いが、次のような異変があらわれた場合には、迷わず受診するべきだ。

(1)勃起が止まらない!

「先生、昨日の夜から勃ちっぱなしで痛いんです」と訴えて受診した30代男性は、自らの浮気が原因で恋人と別れて以来、ED(勃起障害)で悩むようになり、ED治療薬を持ち歩いていた。ようやくできた彼女とED治療薬の力を借りて性交したところ、薬の効果が切れる時間になってもいっこうに勃起が収まらない。

 診察の結果、ペニスの静脈が詰まって血液の流出が減るタイプの「陰茎持続勃起症(いんけいじぞくぼっきしょう)」が分かった。ED治療薬の影響が疑われた。

 ペニスの血流が停滞すると、ペニスが低酸素状態になり、その状態が1日以上続くと、海綿体の組織が線維化して、その後に壊死してしまう。最悪、勃起不全が一生続くことにもなりかねない。このような症状が現れたら、早急な手術が必要だ。

 幸い、男性は大学病院泌尿器科で緊急手術を受け、勃起障害を免れた。

(2)身に覚えはないけど股間がかゆい

「半年ほど前から股間がかゆくなり、かきむしっていたらどんどんかゆみが増して…。でも性感染症ではないと思います。妻とは10年以上もセックスレスで、浮気もしていないし、風俗店にも行ったことがない」と言って受診した50代男性の股間は、茶色と赤色が混ざり合って皮膚がゴワゴワになっていた。

 身に覚えがないのに股間がかゆくなる病気には、インキンタムシと「皮膚搔痒症(ひふそうようしょう)」があるが、この男性は後者だった。

 皮膚掻痒症は内臓疾患の前触れとして起きることがあり、代表的な病気は「糖尿病」。男性は数年前から会社の健診で血糖値が高いことを指摘されており、糖尿病の進行によってかゆみが出たものと思われる。

(3)3ミリほどの赤いブツブツ

「性病をうつしたでしょ」。彼女に激怒され、診察室に駆け込んできた30代男性の股間やお尻には、猛烈にかゆい3ミリほどの赤いブツブツが。聞けば、彼女の胸、首筋、わきの下など、皮膚の柔らかいところに同様のブツブツが沢山できているという。

 検査の結果は「疥癬(かいせん)」。ヒゼンダニ(疥癬虫)による皮膚感染症で、衣類や寝具などでも感染するが、主に男女の密接なスキンシップで感染する。かゆみが酷く、特に夜間に症状が激しくなるのが特徴。湿疹と似ているが、ステロイドは効かない。感染から発症までの潜伏期間は約1カ月。

 男性はバーで知り合った女性と一夜限りの関係を持ち、感染したのだった。

 治療は1日1回内服するだけの「イベルメクチン」。治るまでは、衣類や寝具はドライクリーニングに出し、当然ながら誰とも濃厚接触してはいけない。

医師すらも見逃す
怖い性感染症

 性感染症の中には、専門医でなければ気づけない病気もある。次のような症状が出て、治療を受けてもなかなか治らない場合には、性感染症を疑ってみよう。

(4)イボ痔が治らず出血や痛みもない

 40代男性は受診する1カ月前、排便後にトイレットペーパーで拭いた際、肛門周辺の違和感に気づいた。イボのような異物。

 かつて「イボ痔」になったことがあるため、最初は再発したのだと思った。イボ痔につきものの出血や痛み、かゆみ等の症状が一切ないのが気になったが「そのうち治るだろう」と放置。しばらくして、肛門の周りを触ってギョッとした。異物は消えないばかりかむしろ増えていたからだ。

 慌てて近所の消化器内科を受診したところ「肛門周辺が荒れていますね」と言われ、外用薬を処方されたが、まったく効果を感じない。心配になって尾上医師のクリニックを受診した。

 肛門の周りにイボがびっしりとついており、診断は「尖圭コンジローマ」。 HPV(ヒトパピローマウイルス)に感染して発症する良性の腫瘍だった。一般的にはペニスに発症するが、まれに肛門にできることもある。治療は外用薬や液体窒素(凍結)療法、レーザー治療で行うが、再発しやすいため完治させるには根気がいる。

(5)治らない喉の痛み

 2週間以上、風邪を引いた時のような喉の痛みがつづき、発症前に性体験があった場合には、性感染症を疑ったほうがいいかもしれない。考えられる病気は「咽頭クラミジア」。クラミジアといえば性器の病気というイメージが強いが、「怖いのは性器への感染がなくても、咽頭に感染している例が多いこと」と尾上院長は警鐘を鳴らしている。

 症状があまり出ないため、気づかない人が多く、気づかないままに症状が悪化したり他の人 にうつしてしまったりということが起きている。また悪化した際にも、喉の腫れや痛みといった症状は風邪と勘違いされやすい。近年増加傾向にある性感染症だ。

 ちなみにクラミジアの感染経路は性器以外にも、咽頭、目、肛門と多岐にわたるため、尾上院長は、「自由診療の施設の受診」を勧めている。保険診療ではひと月内の受診で1部位の検査しか認められていないが、自由診療なら1度に複数個所の検査ができるので、見逃しリスクが減るからだ。

(6)ペニスに激痛を伴う潰瘍が…

「大事なところにできものができたんです! 痛くて痛くてたまりません」、東南アジア旅行から帰国した男性が、尿意を我慢しているような慎重な足取りでやってきた。診察する と、ペニスには小豆大の深い潰瘍。触ると軟らかく、中心に黄白色のゼリー状の膿の塊があった。

 診断名は「軟性下疳(なんせいげかん)」 。現在の日本では極めてまれな性感染症だが、 東南アジアやアフリカ南部などの熱帯地方では多く発生している病気で、「輸入性感染症」のひとつだ。感染後2日~1週間で発症し、激しい痛みが起こり、刃物でえぐったような潰瘍ができる。

 日本では終戦直後に流行したが、現在では病名は知っていても、実際に診療した経験がある医師はほとんどいない「幻の性病」。海外旅行に出かけた際には要注意だ。

 10年前なら異常気象と呼ばれていた「異常」も、昨今はすっかり日常になっている。「それと同じように、これからは新たな感染症が次々とあらわれる可能性が非常に高くなっています」と尾上院長。性感染症にも、薬の効かない「スーパー淋病」が登場しているという。

 人類が生き残っていくためには、個々人がセックスや性感染症について興味本位でなく正しく学ばなくてはならない時代が到来しているようだ。

◎尾上泰彦(おのえ・やすひこ)
プライベートケアクリニック東京 院長。1969年 日本大学医学部卒業。1978年 日本大学医学部専任講師。1981年 宮本町中央診療所開設(院長)、2015年に閉院。2017年にプライベートケアクリニック東京(院長)を開院、現在に至る。著書『アトラスでみる外陰部疾患 プライベートパーツの診かた』(学研メディカル)、『性感染症 プライベートゾーンの怖い医学』(角川新書)など。

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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