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Web会議からオンラインイベント・サードプレイスに軸足を移すブイキューブ

2020年11月19日 10時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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 2020年11月18日、ブイキューブは中期経営計画に基づく事業戦略発表会を開催。長らく手がけてきたWeb会議ビジネスで安定基盤を構築した上で、コロナ禍において急成長するオンラインイベントとサードプレイスに注力し、「ブイキューブ=Web会議サービス」からの脱皮を図るという。

ブイキューブ 代表取締役社長 間下 直晃氏

リモートコミュニケーションを文化として根付かせる

 事業戦略説明会に登壇したブイキューブ代表取締役社長の間下 直晃氏は、コロナ禍によるさまざまな社会と企業の変化によって、同社のミッションである「Evenな社会の実現」に近づいたと指摘。Beforeコロナでは当たり前だった対面のコミュニケーションは、非対面が主流になり、限定的だったテレワークも多くの企業でもはや当たり前の選択肢になった。そして、そこで使われるWeb会議のようなツールも「あれば便利」という存在から、なければ困る「必須な社会インフラ」になったという。

 コミュニケーションのリモート化も加速している。緊急事態宣言時には社内会議やテレワークといった環境整備からスタートし、事業活動の再開時は単なるテレワークから商談、採用面談、研修やイベントなどに利用シーンが拡大した。リモート化の対象も社内から社外に広がり、教育、医療、金融、フィットネス、エンタメなど顧客へのサービス提供もリモートで行なわれるようになった。そして現在では移動時間の短縮や商圏・顧客接点の拡大、データの利活用などリモート化の有効性を幅広く認識されるようになったという。

 そして、Afterコロナにおいてはコミュニケーションはリアルとオンラインのハイブリッドが求められるようになり、5Gの通信環境はこの動向を後押しすることになる。出社するか、テレワークするか、直接会うか、リモートかはあくまでユーザーの選択肢として提供される。機会や情報格差が是正されることで、ブイキューブが目指すEvenな社会の実現が実現されるという。

Afterコロナの世界

 こうした中、同社が描く中期経営計画は「Beyondテレワーク」をモットーに、さまざまなシーンでのリモートコミュニケーションを日本に文化として根付かせることを目指す。これを実現するため、既存の事業を「エンタープライズDX」と呼ばれるWeb会議サービスや業界・用途特化型のソリューション、オンラインイベントを支援する「イベントDX」、そしてテレワーク専門ワークプレイス「テレキューブ」を手がける「サードプレイスDX」の3つに構成し、顧客のDXを支援するという。

ブイキューブの3つの事業領域

コモディティ化するWeb会議サービス サービスとSDKで成長へ

 エンタープライズDXとして同社が従来から主力製品にしてきたWeb会議サービスに関しても、企業向けのサービスは市場拡大が一巡し、飽和期に突入している。ZoomやMicrosoft Teams、Ciscoなどグローバルプレイヤーのユーザー伸張や機能強化も著しい。これに対して間下氏は、「Web会議サービスは無料のものの増えており、コモディティ化しつつある。ブイキューブ自身も自社製品はメンテナンスフェーズに移行し、Zoomの販売も始めている」と語る。

 その上で、価値提供のモデルとして、SaaSというテクノロジーのみならず、DX支援を行なうプロフェッショナルサービスを組み合わせる。たとえば、オンライン株主総会のためには自社プロダクトの「V-CUBEセミナー」だけではなく、株主ごとの本人確認・認証、オンラインでの質疑応答、議決権行使などを支援するプロフェッショナルサービスとして提供するという。「SaaSだけではイベントの運用までできないが、弊社のプロフェッショナルサービスを変革だけではなく、DXの定着まで支援できる。グローバル大手はここまでできない」と間下氏は語る。

SaaS+サービスの組み合わせ

 また、ビデオや音声の送受信機能をサービス内に組み込める「V-Cube Video SDK」は順調に成長しており、教育、医療、EC、採用、不動産など対面が当たり前だったサービスのリモート化を実現し、特にライブ配信やSNS系の利用も急増した。長期的にはビジネス系の需要に応えることで、安定した成長を目指す。さらに、「V-CUBEボード」や「V-CUBEボード」を用いた緊急対策ソリューション、スマートグラスと「V-CUBEコラボレーション」を組み合わせたフィールドワークソリューションなど、SaaSとハードウェアの組み合わせた用途別ソリューションも実績を積んできている。

イベント事業が急成長を牽引 オンラインイベントの課題を解消するEventIn

 安定収益を見込むWeb会議サービスを中心としたエンタープライズDX事業分野に対して、成長を見込むのがイベントDX事業だ。「V-CUBEセミナー」と「EventIn」といったサービスと、配信設備やスタジオ、人材のサポートを組み合わせることで、ユーザーのオンラインイベントの実施・運営を支援する。

 株主総会、採用説明会、社内研修、企業セミナーなど多人数を参加するイベントのリモート開催はコロナ禍以降、急成長しており、昨年2500回だったイベント回数は今年5000回を見込む。間下氏は、「当初はコロナ禍で仕方なく始めたものの、安価なコストで、集客も増え、なにより行動データがとれるというメリットが認知されてきている。今は需要に追いつかず、すでにお断りしている状況」とアピール。ネックとなっているキャパシティを増強すべく、スタッフの追加を急ピッチで進めているという。

 そしてイベントDX事業での新サービスが「EventIn」になる。EventInは一方向になりがちなオンラインイベントを双方向で交流可能にするイベントプラットフォームで、講演や登壇者の個別質問、商談はもちろん、ブース出展、通りがかりの出会いまでをオンラインで実現する。また、参加者の属性や行動データを一元管理したり、イベントごとの世界観を実現するためのカスタマイズも可能だという。

オンラインイベントの課題を解消するEventIn

 もう1つの成長事業は個室会議スペース「テレキューブ」を中心とするサードプレイスDX事業。駅施設やオフィスビルなど公共スペース向けのインフラとして設置するビジネスとしてスタートしたテレキューブのビジネスだが、現在は企業向けのニーズが急増。遮音性の高さを活かし、電話やテレビ会議、英会話、機密性の高い顧客向けのスペースとして利用されている。これに応じて、導入の敷居が低いサブスクリプションモデルもスタートしている。

 コロナ禍においては緊急事態宣言時は利用が減少したものの、解除以降は利用率が大幅に増加。設置に関しても、大阪や愛知、茨城など東京以外への設置が増えたほか、空港や市役所、スーパーなど駅やオフィスビル以外の設置も拡大している。2020年は2000台だった設置台数は、2021年には倍以上の4500台となる予想。今後はテレワークのみならず、遠隔医療、ヨガ教室、VRスペース、eスポーツ、カラオケなど高い付加価値を実現するスペースとして事業を発展させるほか、サードプレイスの予約管理サービス「テレキューブコネクト」にも注力していくという。

高付加価値なサードプレイスを実現

 経営目標としては、2020年の79億円(見込み)だった売上高を、2021年は115億円に伸ばし、2022年は153億円を目指す。「Evenな社会の実現~すべての人が平等に機会を得られる社会の実現~」の実現へと歩みを進めるという。

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