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災害時に威力を発揮する「ご近所SNS」とは?

2020年11月19日 06時00分更新

文● 吉田由紀子(ダイヤモンド・オンライン

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Photo:PIXTA

災害時に威力を発揮する
「ご近所SNS」とは?

 昨年10月、日本に上陸した台風19号の被害は、まだ記憶に新しい。九州から東北地方にかけての広い範囲で河川氾濫や土砂災害などが相次ぎ、死者99人(災害関連死者2人を含む)、行方不明者3人、重軽傷者371人 という甚大な被害をもたらした。

 この台風19号で威力を発揮したのが、マチマチというSNSである。その理由は「地域を限定したSNS」だからだ。マチマチは自分の居住地域に絞った情報を共有することができ、その範囲は半径1km~10km圏内(人口密度によって異なる)になっている。都市部では、○丁目単位にまで限定されているため、リアルタイムで近所の情報を知ることができる。

ご近所の情報が共有できるSNS「マチマチ」。日本の全市町村の73%のエリアをカバーしている

「災害発生時に最も大切なのは近隣の住民間で情報を共有することです。狭い範囲の情報は、テレビや自治体の災害情報では、なかなか知ることができません。また、フェイスブックやツイッターなどのSNSでも地域の情報を知ることは難しいです。しかし、エリアを絞ったマチマチは、身近な情報を迅速に入手できるとあって各地で活用され、おかげで被害を免れる方がたくさんいらっしゃいました」と話してくれたのは、株式会社マチマチ・代表取締役の六人部生馬さん。

 台風19号の発生時には、マチマチ上でさまざまな情報が飛び交った。例えば、東京の多摩川では、投稿された写真で川の水位が上がったことを知った80代の男性が、すぐに避難をして助かった。この男性は、それまで水害に遭ったことがなかったため、情報を知らなければ自宅にとどまった状態だった。また避難所にいる人が「寒いので防寒具を持参したほうが良い」とか、育児中の母親が「避難所に子どもは連れていけるのか」という質問を投稿し、次々とコメントが返ってきたことで、家族が一緒に避難できたケースも多かった。

「防災士の資格を持つ方や消防団の方も専門家の見地から情報を発信していました。こういった地域住民が助け合う『共助』は災害時にはなくてはならないものです。マチマチの中にも防災情報の掲示板を立ち上げ、誰もがアクセスできるようにしています。4年前に始まったサービスですが、設立当初から災害時の利用を強く意識していました」(六人部生馬さん、以下同)

20年9月に東京消防庁と協定締結
デジタルの防災インフラに

 このマチマチが、今年9月に東京消防庁との協定を締結した。コロナ時代に対応したデジタルによる防災インフラを構築していくのが狙いだ。

「東京消防庁さんは、住民に防災や防犯意識を持ってもらうために、これまで広報誌やSNSなどで情報を発信していました。ところが、従来の方法では伝わりにくかったとそうです。そこで弊社のサービスを提案しましたところ、協定を結ぶ運びとなりました。防災に特化したSNSやアプリは他にもありますが、平時はなかなか使われないという弱点があります。その点、マチマチは普段からさまざまな情報が飛び交っていますので、伝達手段という点では、非常に有効だと思います」

 現在、東京消防庁はマチマチを活用して防災訓練やイベントの案内、防災情報などを発信している。

台風や水害、感染症などの発生時に近隣の状況を共有できるため、大いに役立っている

「実際に使ってみると、災害時にはかなり有効だとの評価をいただいています。かつての阪神・淡路大震災でも住民の連携が強い地域は被害が少なかったという例もあり、地域の連携と防災は密接な関係があります」

 また、新型コロナウイルス感染拡大時にも、このマチマチは活躍をした。感染に関する情報をはじめ、近隣の学校や幼稚園、医院、店舗の最新の状況などが次々と投稿されたのである。

「子どもさんは学校が休校になり、親御さんも在宅ワークになる。家族全員が自宅で過ごすようになったため、逆にストレスを感じる方もいました。マチマチ内には多数のコミュニティーがありますので、そこに参加しておしゃべりで気分転換をしたり、新たにコミュ二ティーを作って、情報を発信するユーザーさんが多かったですね。リアルに集まれない状況でしたので、ストレス発散の場になったのでは、と思っています」

 他にも、近所の商店が困っているので応援しようという声や、マスクやオムツ、トイレットペーパーが不足していた時期には、育児中のお母さん同士で融通し合うこともあったという。

ご近所さんをつなぐオンライン掲示板として
地方への導入を促進

 現在、月間のアクティブユーザーは200万人を数え、日本の全市町村の73%のエリアをカバーしているマチマチ。東京都渋谷区、港区、千葉市、横浜市、川崎市など全国29の自治体でも公的な情報発信に活用されている。今後は地方の中核都市で導入を促進していく考えだ。

「地方では町内会や自治会が機能していますが、都市部ではご近所との付き合いが難しい状況です。新たな町へ引っ越してきた場合、知り合いがいないために気軽に相談できる相手がいません。そんな状況をカバーするのがマチマチだと考えています。ご近所の情報を交換したり、困り事を相談したり、オンライン掲示板の役割を果たしていると自負しています」

 ちなみに、従来は居住地でしか利用登録ができなかったが、ユーザーの要望を受け、現在は「勤務地」「実家」のエリアでも登録できるようになっている。

 デジタル時代の地域の連携を担うマチマチ。災害時はもちろんだが、普段からの適度なご近所付き合いが、身を助けることを証明しているのかもしれない。

(吉田由紀子/5時から作家塾(R))

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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