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エンドツーエンドの5Gオープンラボ、顧客やパートナーによる“ユースケース共創の場”

5GによるDXを加速せよ! シスコが「5Gショーケース」を開設

2020年11月18日 07時00分更新

文● 五味明子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 シスコシステムズは2020年11月12日、高速通信方式「5G」の価値創出を顧客企業やパートナーとともに推進していくための施設として、東京・六本木の同社オフィス内に「5Gショーケース」を開設、運用を開始した。

 シスコシステムズ 副社長 情報通信産業事業統括 の中川いち朗氏は、「本ショーケースは長年に渡って、通信事業者やエコパートナーを支援してきたシスコだからこそ立ち上げられた施設。エンドツーエンドの5Gオープンラボとして、あらゆる業界の方に利用していただき、5Gによる日本のデジタルトランスフォーメーション(DX)に貢献していきたい」と語り、5GによるDXを加速する“共創”の場として機能させていくことを強調する。

シスコ 5Gショーケースの開設趣意。顧客エンタープライズとサービスプロバイダー、エコパートナーが5Gソリューションを“共創”するオープンな場として提供される

記者発表会に出席した、シスコシステムズ 副社長 情報通信産業事業統括 の中川いち朗氏、同社 業務執行役員 情報通信産業事業統括 システムズエンジニアリング本部長の吉田宏樹氏

サードパーティ製品も組み込んだオープンな相互接続検証が可能なPOC環境

 5Gショーケースは東京ミッドタウンのシスコオフィス内にある「CPOCラボ」に設置された。通信事業者の商用インフラおよびユーザ企業のインフラをそれぞれモデリングしたネットワークを接続し、レプリカのようなエンドツーエンドの相互接続環境をシスコ製品で構築、ここにサードパーティの製品/ソリューションも組み込んだオープンな検証(POC)環境を提供する。

 顧客やパートナー企業は、このPOC環境での相互接続検証を通して5G導入までの課題を抽出し、具体的なユースケースを共創していく。また、同オフィスにあるシスコイノベーションセンター内では、5Gリファレンスアーキテクチャの上で実現可能なネットワークソリューションのデモンストレーションが展示される。

CPOCラボに設置された5Gネットワークの接続検証環境

5Gリファレンスアーキテクチャのデモンストレーションを実施するシスコイノベーションセンター

5Gショーケースの実証環境の一部。通信事業者ネットワークと企業ネットワークのレプリカをシスコ製品で構築し、相互接続検証を行いながら、導入に向けての技術的課題を洗い出していく

 5Gショーケースの具体的な活用事例として、同社 業務執行役員 情報通信産業事業統括 システムズエンジニアリング本部長の吉田宏樹氏は、国内での注目度が高まっている「ローカル5G」サービスのリファレンスモデル作成を挙げている。

 自社専用のプライベートな5Gネットワーク環境を構築できるローカル5Gは、企業のDXを加速させる役割が期待されており、すでに富士通やNECなどがローカル5G導入サービスの提供を開始している。しかし、多くの企業にとってローカル5G接続はまだ“机上の存在”に過ぎず、たとえば接続環境下でロボットを低遅延で稼働させるためには基地局をどう分散配置するべきか、基地局間のセキュリティはどう担保すべきか、システムインテグレーションにはどのくらいの費用がかかるのかといった要件を検証していくことは難しい。

 シスコの5Gショーケースでは、そうした具体的な5Gの実装イメージを既存のリファレンスモデルをベースに深堀りし、実際の5G導入に向けた技術的な課題を洗い出し、解決までをサポートしていく。「通信事業者のITインフラをこれほど忠実に再現できているレプリカ環境は、日本にはほとんど存在しない。5Gは技術者にとってイノベーションの宝庫であり、これまでは解決できなかった課題をひとつひとつ、この5Gショーケースで解決していき、日本発の5Gユースケースを数多く作っていきたい」(吉田氏)。

5Gショーケースの具体的な活用事例として考えられるのが日本でも注目度の高いローカル5Gのユースケース。ショーケースではリファレンスモデルをもとに具体的な実装イメージを固め、技術的課題を洗い出していくアプローチを提唱している

5Gショーケースのコンセプトに賛同したパートナー企業。各社のノウハウや知見をもちより、日本の5G情報発信のコアとなることをめざす

 発表会にはユーザ企業のゲストとしてNTT東日本 担当部長 ビジネスイノベーション本部 テクニカルソリューション部 ソリューションアーキテクトグループの門野貴明氏が登壇し、新潟県におけるローカル5G実証実験など、シスコとともに手掛けてきた5G案件を紹介した。

NTT東日本 担当部長 ビジネスイノベーション本部 テクニカルソリューション部 ソリューションアーキテクトグループの門野貴明氏

NTT東日本やシスコが参加する新潟県のローカル5G実証実験。若年層の県外流出や地域経済の低迷といった社会課題の解決を、5Gによるテレワーク推進などを通してめざすアプローチ。2021年1月に実験開始予定

 今回の5Gショーケース設立を受け、門野氏は「5Gを国内で普及させるためにはビジネスと技術、2つの課題が横たわっている」とコメントした。

 「ビジネス面の課題としてはまず『5Gの低価格化』が挙げられるが、これは業界全体で取り組むべき問題であり、シスコにもぜひ一緒に進めてもらいたい。技術的課題としては『ローカル5Gで使用する周波数帯の使い分け』、とくにミリ波の特徴をうまく活かす必要がある。また、5Gに対応する端末が増えることやローカル5Gのライセンス申請の簡素化、Wi-Fiなど他の通信システムや運用ツールとの連携も必要。これらの課題をともに解決していくパートナーとしてシスコには大きく期待しており、日本における5Gの可能性を一緒に広げていきたい」(門野氏)

エンタープライズ5Gの国内普及を急加速させる効果に期待

 「日本の5Gビジネスは(シスコの)グローバルにとっても注目度が高く、非常に可能性のあるマーケットとして位置づけられている。これほど本格的なエンドツーエンドの5Gショーケースはグローバルでも初であり、シスコの5Gビジネスの先陣を切っていく存在になる」。中川氏は5Gショーケースの存在意義に関する質問にこう答えた。

 コンシューマ向けの5Gビジネスでは韓国や米国に遅れた日本ではあるが、エンタープライズユース、なかでもローカル5Gの実証実験において世界から注目されるケースもいくつか誕生しており、総務省や地方自治体の積極的なプロジェクト参加も続いている。

 そうしたトレンドにあって、NTTなど通信事業者向けに数多くのネットワーク機器を提供してきた実績をもち、ネットワークスライシングやOpen RANなど5Gの要素技術においても業界をリードするシスコが、最新のテクノロジポートフォリオによる5Gネットワーク実証環境をユーザ企業やパートナーに提供することで、エンタープライズ5Gの国内普及を急速に促進する効果が十分に期待できる。

 「日本の通信事業者は『ITインフラのあるべき姿』をずっと考えてきており、シスコもそれを支援してきた。その成果はかなり上がってきており、5Gの可能性を最大化するところまできている。本ショーケースは、そうした5Gのケイパビリティをもうひと押しする存在。パワーポイント(机上の存在)ではなく実体験として、5G導入の課題を解決できる場所へと成長させたい」(吉田氏)

 コネクテッドカーやスマートファクトリ、AR/VRなど5Gに期待される分野は幅広いが、通信事業者とユーザ企業およびパートナー企業が相互に連携しながらこれらを検証できる場所は多くはなかった。日本のエンタープライズ5Gユースケースをひとつでも多く発信する拠点として、本ショーケースへの期待は高い。

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