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コロナで加速するフードロス、根本原因は食品業界の「暗黙のルール」

2020年10月15日 06時00分更新

文● 吉田由紀子(ダイヤモンド・オンライン

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日本の食品廃棄量は年間643万トン。国民1人あたり、1日約132g(茶碗約1杯分)を食べずに捨てている

コロナによる五輪延期で
食品生産者に大打撃

 新型コロナウイルス感染症の影響で、オリンピック・パラリンピックが延期になってしまった。政府の自粛要請を受けて飲食店やホテルが休業し、学校給食も中止に追い込まれた。

 今年はオリンピック需要を見込んで、農林水産省が生産者に例年より食品の生産量を増やすように指示を出していた。そのために打撃を受けた生産者は多く、在庫を抱えて苦慮している状態だ。中には保存のきかない食品も多い。かといって大量の余剰品を生産者が自力で売りさばくのは難しいものがある。

 窮地に立たされた生産者を救済しようと、農林水産省が「元気いただきますプロジェクト」という支援活動を立ち上げた。生産者は余剰食品をショッピングサイトに出品し、一般消費者へ販売する。その際、送料は農水省が全額負担をする仕組みになっている。

 出品されているのは、国産和牛のほか、まぐろ、ぶり、鯛、ふぐ、蟹などの海産物や、野菜、果物、日本茶、ジビエ類といった比較的高価な食品が多い。

巣ごもり需要で食品のECが人気
登録ユーザー3倍増のサイトも

生産者支援の目的で始まった「元気いただきますプロジェクト」。出品されている食品は、送料無料で購入できる(画像はKURADASHIのECサイトより)

 このプロジェクトに参加している販売業者の一つ、ECサイト「KURADASHI」を運営する株式会社クラダシに取材を行った。社会貢献型フードシェアリングプラットフォームであるKURADASHIは、フードロス削減関連のECサイトとしては日本最大級であり、現在の登録ユーザーは10万人、取引業者は800社を数える。同社は「もったいないを価値へ」という理念を掲げており、2015年から食品ロス削減に取り組んできた。食品メーカーなどの余剰商品をサイトで一般消費者に販売することにより、再流通させて価値を見いだしている。

「インバウンド向けに生産していた高級食品の販売数が、コロナウイルスの影響で激減しています。そのため弊社のECサイトにも蟹、ほたて、車海老、黒毛和牛といった、これまでよりワンランク上の高級品が出品されるようになりました。また外出自粛のため、観光地で販売できないご当地グルメも数多く出品されています。4月に発令された緊急事態宣言をきっかけに、巣ごもりをする方が増えたこともあり、KURADASHIの月間ユーザー登録数が、コロナ以前の3倍にまで増えています」(株式会社クラダシ代表取締役社長・関藤竜也さん)

農林水産省の支援を利用すれば
送料はかからない

 このKURADASHIに8月から出品をしている鶴岡食品株式会社(千葉県いすみ市)に取材を行った。同社は千葉県いすみ市で水産加工品の製造を行っている。創業50年余の水産加工品のメーカーで、銚子港に水揚げされた新鮮な魚介類を使った「しめさば」や「煮付け」などの商品が人気を呼んでいる。

「コロナウイルスが広がり始めた2月末から出荷量が減っていきました。弊社はコンビニや生協、居酒屋に加えて、学校給食用にも販売していたため、給食中止でかなりの打撃を受けました。人口の多い横浜市や川崎市の学校にも納入していましたので、3月4月は受注がゼロになり、先行きに不安を覚えたほどです」(鶴岡食品株式会社専務・鶴岡宏介さん)

 同社のような食品メーカーは余った商品を冷凍保存するなどの対策を講じたが、コロナが長期化するにつれ倉庫が満杯になり、やむなく廃棄処分するケースも少なくなかった。

 鶴岡食品では緊急対策として自社でネット販売を始めることにした。

「味や品質には自信がありましたので、お客様にも好評でしたが、送料がかかってしまうため、二の足を踏む方もいたのです。ネットで調べたところ、送料がかからない支援サイト(元気いただきますプロジェクト)があることを知り、出品を決めました。複数あるECサイトからKURADASHIさんを選んだのは、食品廃棄ロスの削減を目指しているという理念に共感したからです」(鶴岡さん)

年間643万トンの食品を廃棄
日本でフードロスが止まらない理由

 昨年10月、食品ロス削減推進法が施行され、10月30日が食品ロス削減の日と定められた。政府がこの問題に本格的に取り組んでいこうとしていた矢先の新型コロナウイルスの感染拡大。皮肉なことに逆に廃棄食品が増大する結果となってしまった。

 日本の食品廃棄量は年間643万トンと推計されており、このうち食品関連事業者から発生するのが352万トンにも及ぶ。食料の大半を海外からの輸入品に頼っているが、その多くを捨てているのが現実である(数値は2019年消費者庁発表資料より)。

 なぜこれほど廃棄しているのか?

 理由の一つが、「3分の1ルール」という業界の暗黙の慣習にある。これは製造日から賞味期限までを3分割し、販売は製造日から3分の2の期日までを限度としている。そのため3分の2を過ぎると店頭では売れなくなってしまうのだ。そうなると、KURADASHIのようなECサイトで値段を下げて販売をせざるを得ないが、値引きをするとブランドのイメージが下がることを恐れて、廃棄してしまう業社が少なくない。政府もこのルールを問題視しており、現在は規制緩和の方向へ施策を進めている。

「食品ロス削減推進法が施行されたのを契機に、弊社にも出品依頼が増えています。食品メーカーやコンビニから食品廃棄に関するご相談も多くなりました。クラダシを始めた2015年当時は、食品廃棄に関心を持つ方は少なかったのですが、ここに来てようやく社会が変わり始めたと感じています。コロナ禍により食品メーカーだけでなく、農業、水産業、牧畜業などの生産者も苦境に立たされています。そういった方を支援できるよう、さらに事業を進めていきたいと新たな構想を考えているところです」(株式会社クラダシ代表取締役社長・関藤竜也さん)

 KURADASHIは設立時から売り上げの3%を社会貢献団体に寄付しており、その姿勢にも多くのユーザーから共感の声が上がっている。

 国連のSDGs(持続可能な開発目標)には2030年までに、世界全体で1人当たりの食料廃棄量を半減させるという目標が盛り込まれており、各国で改善策が進められている。世界的な課題となっているフードロス。いま一度、食生活について再考してみたい。

(吉田由紀子/5時から作家塾(R))

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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