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瀬戸大也の不倫で競泳界激震!プロ競技化に暗雲、スポンサー離れも加速か

2020年09月29日 06時00分更新

文● 小林信也(ダイヤモンド・オンライン

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リオ五輪・銅メダリストの瀬戸大也選手 Photo:Clive Rose/gettyimages

東京五輪の大切な主役をひとり失った日本スポーツ界

 競泳の瀬戸大也選手の「不倫」が週刊新潮で報じられ、スポーツ界に大きな衝撃と落胆を与えている。

 言うまでもなく、瀬戸は来年に延期された東京五輪2020の金メダル候補。バドミントンの桃田賢斗選手らと並んで、「最も金メダルに近い」と期待されている選手だ。リオ五輪こそ銅メダルにとどまったが、世界選手権ではすでに4個の金メダルを獲得している。これは北島康介選手をもしのぎ、日本選手としては史上最多だ。

 国際的な実績も申し分ない。昨年の世界選手権優勝で東京五輪代表の第1号となり、競泳日本代表の主将にも決まっていた。2018年のアジア大会で池江璃花子選手が6つの金メダルと大会MVPに輝き、日本選手団を盛り上げたのと同様、東京五輪では瀬戸の活躍が競泳陣だけでなく、全競技の選手たちに自信と勢いを与える存在と期待を担っていた。

400m個人メドレーは、競泳の先陣を切って行われる

 瀬戸が最も得意とし、リオ五輪では銅メダルを取った競泳男子400m個人メドレーは、開会式の翌日、大会第2日の最初に予選が行われる。そして3日目、競泳で真っ先に決勝が行われる。つまり、競泳の金メダル第1号、日本選手団全体としても最初の金メダルを瀬戸が胸に輝かせる期待が寄せられていた。瀬戸の金で日本チームに弾みがつく、応援する日本中が活気づく。そんなもくろみもあったが、今回で雲がかかった。

 もちろん、この出来事を乗り越えて瀬戸が金メダルを手にする可能性はある。しかし、いろんな意味で障害が多くなるだろうし、もし優勝できても、この騒動が起こる前と今とでは優勝の歓喜の純度というか、世間の反応にも複雑な感情が混じることになった。

今後の瀬戸大也に立ちはだかる苦難とは?

 日本水泳連盟が、瀬戸の代表内定をどう取り扱うか。今回の不祥事で、内定が取り消される可能性はある。また、今後の報道内容や自身の判断で、自ら内定を辞退する可能性も報じられている。そうなれば、もう一度、代表争いから始めなければならない。瀬戸の実力であれば難しくはないが、コロナ禍で日程が曖昧な最終選考会に向けて、一度調子の波を高める必要がある。本来なら、東京五輪本番にピークを合わせる強化日程に集中できたところにストレスがかかることになる。

 そのためには、すぐにでも実戦の場に立ち、コロナ禍で失われた半年間のブランクを取り戻したいところ。だが、出場が予定されていた10月17、18日の日本短水路選手権、10月16日から11月22日までハンガリー・ブダペストで始まる国際リーグへの出場を回避する可能性が指摘されている。そうなれば、選手としての強化、調整に大きな遅れと狂いが生じるだろう。

 さらに、所属するスポンサーの撤退も懸念される。所属スポンサーはANA(全日空)。3年契約で約1億円の報酬ではないかとみられている。3年なら来年3月で更新を迎えるのだが、報道のとおり不倫相手がANAのCAであればなお、ANAの受けたイメージ損失は大きい。このまま契約を続行すれば、ANAの見識が疑われかねないから、打ち切られるか更新しない可能性は高い。

 そうなれば瀬戸は来夏の東京五輪に向けて、大切な経済基盤を失う。すでにインターネットに掲載されているANAの所属選手から瀬戸の名は削除された。夫婦でCMに出演していた味の素も当該CMの放送を取りやめた。こちらの契約も解除される可能性がある。違約金などの請求がされれば、瀬戸にかかる負担はさらに大きくなる。

 大幅な収入減の中、頼みの綱は「強化選手」に指定されているJOC(日本オリンピック委員会)からの強化費だが、これは税金が財源だから、今回の騒動で打ち切られるか自粛を余儀なくされる可能性も高い。そうなれば、強化どころか家族を支える生活基盤そのものが失われてしまう。

水泳選手はプロなのか、CMタレントなのか?

 不倫発覚で瀬戸の見識や責任感が問われている。大切な家族がいるのになぜ?東京五輪を前になぜ?問えばきりがないが、スポーツライターとして他が指摘しない観点からひとつ、瀬戸の認識の誤りを問いたい。

 瀬戸は、多額の協賛金が何に対して支払われていたと理解していたのだろう?通常、プロのアスリートは、「強いから」「金メダルを取ったから」協賛企業が自分を選び、大きな報酬を支払ってくれたとまずは考えるだろう。だが実際は、強いとか金メダルは前提にすぎない。その結果として高まった知名度や好感度、企業が求めるイメージにこそ多額の報酬を支払っているというべきではないか。

 残念ながら、現段階で競泳選手は、プロのアスリートとはいえない。あくまで、CMタレントとして報酬を得ている割合が高いのだ。この点は、競技によって違う。プロ野球選手やJリーガーは公式戦での活躍や期待に対して年俸が支払われる。プロゴルファーはツアーの賞金が第一義だ。競泳にはそれが現状ほとんどない。

 つまり、瀬戸の報酬の大半は、競技力や実績以上に、その爽やかなイメージと好感度に対して支払われていた。瀬戸は不倫発覚によって、その根幹を失ってしまった。その認識の誤りを自覚しただろうか。もしそれがわかっていたなら、自分の商品価値を失わせるような行為自体を戒めただろうが、それをとがめる意識も周囲のよき参謀の存在もなかった。

真のプロ競技として動き始めている競泳界に水を差す出来事

 競泳を真のプロ競技にしようと、水泳界は少しずつ動きだしている。

 コロナ禍で中止になってしまったが、4月に予定されていた今年の競泳日本選手権では初めて賞金の導入が決まっていた。世界記録で300万円、日本記録で100万円。各種目の優勝者には30万円、2位10万円、3位5万円。大きな額とはいえないが、競泳界がプロ化に踏み出した証明といえるだろう。

 自ら「プロ選手」を名乗って現役生活を続けた北島康介は、その現実を誰よりも痛感したひとりだ。それだけに、10月にハンガリーで開催される国際リーグには情熱を持って臨むだろう。北島はGMとして日本チームを組織し、参加する。瀬戸もその一員だった。国際リーグは賞金総額6億6000万円を超えるプロ大会。この成否は、競泳選手がプロかCMタレントかという疑問にはっきりした未来を与えてくれる大会になる期待が寄せられている。その未来にも、瀬戸は水を差してしまった。

スポーツ界全体が信用を失う可能性

 さらに言えば、協賛企業を失う現象は瀬戸だけでなく、スポーツ界全体に及ぶかもしれない。

 商業主義とともに発展を続けるスポーツ界にとって、高額協賛金を支払ってくれるスポンサー企業は生命線といえる存在だ。

 コロナ禍で多くの企業が減収に直面する中、真っ先に削られる対象がスポーツなどの文化支援だともいわれる。そんな中、延期された東京五輪のスポンサー契約の更新に組織委員会は腐心していると報じられている。

 組織委員会が懸命に契約更新交渉を重ねる中で起こった不倫騒動は、スポーツのイメージにも影を落としかねない。何しろ、あまり大きな声で言うべきでないが、スポーツ選手の不倫や不祥事は今回に限ったことではない。頻発していると言っていいだろう。

 競泳に限ってみても、残念な実態がある。ここ30年の間にオリンピックや世界選手権の金メダリストは9人しかいない。その中には、ほかにも不倫が報じられた女子金メダリストがいる。残念ながらドーピング違反に問われ、出場停止処分を受けた選手もいる。栄光と感動の一方で、世間やファンを落胆させる率もまた高いのだ。こうしたリスクを直視すれば、今後も大企業がアスリートにイメージ戦略の旗頭を任せるだろうか?

 爽やかの代表とも目された瀬戸大也の失態は、スポーツの未来にも影響を与えかねない深刻な出来事ではないだろうか。

(敬称略)
(作家・スポーツライター 小林信也)

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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