富士通研究所の独自AI技術を採用、少量の学習データでも利用開始できる「Finplex EnsemBiz」
富士通、「根拠が説明できる」AIスコアリング基盤を金融業向けに発売
2020年09月18日 07時00分更新
富士通は2020年9月16日、金融業向けのAIスコアリングプラットフォームサービス「FUJITSU Finplex EnsemBiz(フィンプレックス・アンサンビズ)」の提供開始を発表した。富士通研究所が開発した独自AI技術「Wide Learning」を組み込むことで、少ないデータでの高精度な予測と次なるアクションの提示を可能にし、「AIによる予測根拠の明示」や「AI人材不足」「学習データの不足」といった、金融業のAI活用をはばむ課題を解決するとしている。
業務活用への期待が高まるも「実運用が進んでいない」AIスコアリング
金融業界では、ローン審査(与信審査)、不正請求/詐欺行為の検知(リスク評価)、見込み客への営業マーケティング活動など、幅広い業務を自動化/効率化する目的でAIスコアリングの活用が検討されている。しかし、「その実運用はあまり進んでいない」と、富士通 金融システム事業本部デジタルビジネス事業部 マネージャーの朱 偉氏は指摘する。
「(実運用が進んでいない)その理由として、AIが導き出した結果に対する根拠を説明できないこと、データの準備/加工や結果分析をできる知識を持ったAI人材の不足、十分な学習データが準備できないことが挙げられる」(朱氏)
こうした課題を解決するために、Finplex EnsemBizは3つの特徴を備えている。
ひとつめは、「根拠の明確化による「予測結果の透明性の確保」だ。具体的には、AIの予測結果に強い影響を与えたデータの組み合わせを「予測の根拠」として提示。人間が納得できる結果を得ることができるという。朱氏は、見込み客への営業マーケティング業務を例に挙げて説明する。
「見込み客への営業マーケティングでは、顧客属性データや営業活動データ、過去のコンタクト履歴など、あらゆるデータの組み合わせのなかから、『商品を購入する/しない』に影響を与える組み合わせを抽出して提示する。これにより、見込み客への効率的な営業アプローチを可能にし、さらには想定していなかったターゲット顧客の特徴の発見/理解にもつながる」(朱氏)
2つめは、次にとるべきアクションをAIが自動で複数提案することで、「意思決定をサポート」できる点だ。具体的には、予測に用いるデータのなかにアクション項目を入れ、アクションごとの結果を分析することで、最適なアクションを提示できる。これによりビジネスや業務の意思決定を支援し、また分析の自動化によって業務運用の負荷低減にもつなげるという。
たとえば営業活動においては、成約率を高める複数のアクションプランをAIが提示し、さらに人間が業務負荷の状況や営業スタイルなどを加味することで、次に取るべき最適なアクションが選択可能になる、と説明した。
3つめは、AIに関する専門知識が不要で、どんなユーザーでも手軽に利用できるという点だ。AI活用においては通常、データのクレンジングや加工、大量のパラメータチューニングといった作業が必要になるため、専門知識を持つデータサイエンティストでなければ利用が困難だった。Finplex EnsemBizでは、こうした専門知識なしで、GUI操作により容易にデータの事前処理が行える。さらに、BIツールの「Tableau」との連携により、データ内容から予測結果までをグラフとして可視化できるという。
さらに、データのすべての組み合わせから有効なものを選別して予測するため、データ量が少量であっても、データの特徴を分析できる。これにより、大量の学習データを用意する必要がなくなり、新たな領域におけるAI適用を推進しやすくなるとしている。
Finplex EnsemBizは、パッケージによるオンプレミス導入またはSaaSという2つの提供形態を用意している。さらに、顧客ニーズに応じてコンサルティングや導入支援、実証導入なども実施する。
オンプレミス型の基本ライセンスは月額60万円から、Wide Learningエンジンは月額40万円から、Tableau連携機能は月額20万円から、SaaS提供の場合は個別見積。また、コンサルティングや導入支援などのサービスも個別見積としている。
富士通では2323年度末までに、Finplex EnsemBiz単体で10億円、関連サービスを含めて40億円の販売を見込んでいる。