チコちゃんといっしょに課外授業
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「ボーッと生きてんじゃねーよ」と言われて37年、今では3歳児くんの保護者をしています盛田諒ですこんにちは。先日もボーッと仕事をしていたところ、NHK「チコちゃんに叱られる!」ライブ配信「チコちゃんといっしょに課外授業」にお誘いされたので、Macごしに受講してまいりました。
「チコちゃんといっしょに課外授業」は、全国の美術館や博物館でクイズをまじえた授業をする、子ども向けのライブ配信。8月29日(土)の配信は「恐竜王を目指せ!わくわくライブ」。国内最大級の恐竜博物館である福井県立恐竜博物館を舞台に、YouTuberのクイズノック(QuizKnock)がナビゲーターとなり、チコちゃんが出題するクイズに答えながら、研究員たちから恐竜についての最新知識を教わっていくという内容でした。
ライブ配信の特性を生かし、チャットを使ってクイズノックに感想を伝えたり、クイズノックを通じて研究員に「質問」することもできました。時間にすれば70分程度でしたが、最新の知識をぎゅうぎゅうにつめこんだ濃い番組で、ボーッとしていると理解が追いつかないこともありました。チケット料金1100円というのは当初ちょっと高いなと感じましたが、チコちゃん好き、恐竜好き、クイズノックも好きの子なら、文句なしにお腹いっぱいの大満足コースだったんじゃないでしょうか。
●恐竜クイズと化石発掘体験を同時中継
「やっほーい、どうも〜チコでーす、永遠の5歳でーす」
チコちゃんの声から始まった番組は、スタジオにいるとおぼしきチコちゃんと恐竜博物館をつないだ形で進行していきます。
「恐竜の名前の『サウルス』と『ドン』って何?」
と、チコちゃんはのっけから「チコっと質問!」とクイズを出題。クイズノックのふくらPさん、須貝駿貴さんにカメラが移され、ふたりはチコちゃんに「つまんねーやつだな」と言われそうな正答を導きました。
正解は、「ドン」も「サウルス」も学名で、サウルスはトカゲ、ドンは「歯」。ドンは正確には「オドン」で、イグアノドンなら「イグアナの歯」という意味なのだということでした。ちなみにドンで有名なプテラノドンは「歯のない翼」、翼があっても歯はないという意味です。チャットにも「須貝さんふくらさんがんばれー」「行ったことあるから思い出しながら見てます!」などのコメントが集まり、のっけから盛り上がります。
一方、博物館から約30分の距離にある野外恐竜博物館では、やはりクイズノックの山本祥彰さんが化石発掘体験に挑戦。実際に発掘現場から持ってきた石をハンマーとノミで砕きながら化石を探しました。「1989年から30年以上発掘してきて、これまで4200個以上の化石が見つかっている。誰にでも発見のチャンスがある」と言われて、はりきる山本さん。「やまもとさんがんばれ〜」とやはりチャットで気軽な声援が寄せられていました。
さらに番組内では、恐竜を現代によみがえらせるというエンターテインメントショー「DINO-A-LIVE」とのコラボ映像も逐一紹介。鳥のように求愛行動をする恐竜の姿などを、最新の研究をもとにリアルに見せていました。若干つめこみすぎじゃないかというくらい恐竜づくしの内容が続きます。
●ボーッと生きてんじゃねーよ! 恐竜クイズに挑戦
基本的には、クイズノックの2人が迫力ある化石の展示を見ながら次々とクイズに答えていくのが番組の中心。「恐竜のいた時代にはまだ『草』がなかったので、最近は『草食恐竜』ではなく『植物食恐竜』と呼ばれている」など最新知識が次々紹介され、ボーッと生きてるこちらとしては思わず「へえ〜」と言ってしまう話がいくつも出てきました。いくつかご紹介します。
「恐竜の化石がえびぞりをしたような形で発掘されるのはなんで?」
これは2つの説があり、1つは死ぬとき脳に酸素がいかないなどの理由により、断末魔的にえびぞりをするという説。もう1つは、遺体が乾燥するとき、首に通った靭帯が収縮してえびぞりをするという説。実は100年前から原因が探られてきた歴史的問題なのだということ。地味ですが、今後化石を見るとき「えびぞりしているか」に注目してしまいそうです。
「化石は体の一部なのにどうして全身の姿がわかるの?」
これは既に見つかっているほかの化石と比較して、似ているものから全体像を予測するため。たとえば関節部分が未発達ということから年齢推定もしているそうです。クイズノックがほぼ完璧に正答を導いていて震えました。
「恐竜と車、どっちが速いの?」
これは「恐竜による」という答え。ティラノサウルスなら時速23kmで、時速20kmのヒトと同等ですが、ガリミムスなら時速58kmで自動車並み。なぜ速度がわかるかといえば、土砂についた恐竜の足跡を元に、歩幅と腰の高さなどから歩行速度を導く計算式があるんだそうです。なるほど!
「恐竜の鳴き声は化石からわかるの?」
視聴者からの質問で、答えは今後の研究次第。恐竜の鳴き声はここ数年で論文がいくつも出るほど盛んに研究されているということ。現在は基本的には喉の骨をもとにして推測しているそうです。皮膚の色や模様については、まだ想像がほとんどですが、皮膚の模様やパターンは、周囲の土砂につけた印象が化石として見つかる「印象化石」というものから推測されることがあるそうです。さらにカナダで発見された保存のいい化石には、細胞の小器官に色素胞が含まれていたため、その構造から色をある程度推測できたということ。完全にイラストレーターさんの好みだと思ってました。
「ティラ丿サウルスの短い前脚は何に使っていたの?」
クイズノックは「使っていなかったから短くなった」、「しっぽのようにバランスを安定させるために使われていた」という答えでしたが、不正解。現在の主要な説は2つあり、1つは上体を起こすために使われていたというもの。もう1つは獲物に傷をつけるために役立っていたというものでした。結果的にはハズレでしたが、クイズノックの答えにも説得力があり、思考力ってのは仮説を立てる力なんだなあとおそれいった次第です。
「恐竜の肉はどんな味?」
答えは鳥肉。恐竜は進化を考えるとワニや鳥に近く、ワニの肉は鳥肉に似ているといわれるので、恐竜も恐らく鳥肉に近いのではないか、という話。いったんワニを食べて鳥を食べればこんなものかと想像できるんじゃないかという話になりました。ワニ肉はネットで買えるので「恐竜のステーキ」に挑戦してみるのも楽しそうですね。味がいいかはわかりませんが。
「なぜ福井でたくさん恐竜の化石が見つかるの?」
最後は福井県立恐竜博物館らしいこの質問。答えは「30年以上発掘調査をしているから」。継続は力でした。逆に言えば、「中生代の地層がある」「陸でたまった地層がある」「地層が見えている」という3つの条件がそろっていれば、全国どこでも化石が見つかる可能性はあるということ。映画「ドラえもん のび太の恐竜」は、本でそのことを知ったのび太が近所の地層からフタバスズキリュウの卵の化石を発掘するというお話でしたが、実際フタバスズキリュウの化石は1968年当時、高校生だった鈴木直さんが発見したもの。まだ自分の手で未知の化石を発掘するチャンスはあると思うと、仕事なんかほっぽりだして発掘に行きたくなります。
●課外授業で好きなものに出会えるかも
発掘といえば、化石の発掘体験をしていた山本さん。番組の終わりに博物館内に駆けつけ、時間内に発掘した見事な二枚貝の化石と、亀の甲羅とおぼしき化石を見せていました。山本さんは「汗めちゃくちゃかきましたよ」と楽しそうに言っていて、チャットに「おつかれさまでした〜!」というコメントがたくさん書き込まれていました。視聴者からは「明日公園掘ってこようかな」などの感想も寄せられて、大盛り上がりの中、番組は幕を閉じていきました。
番組が終わり、最も印象的だったのは司会を務めたクイズノックのお二人の頭がズバ抜けてよかったこと。やっぱりボーッと生きてない人たちは違いますね。それからチャットの中には番組で読まれなかった質問が相当集まっていて、中には相当鋭い質問も入っていました。できれば疑問をそのままにせず福井県立恐竜博物館に持っていって研究員さんに聞くなどして解決してほしい、それこそ本当の課外授業になるんじゃないかと思います。
ちなみに番組の翌日、家族で映画「ドラえもんのび太の新恐竜」を見に行ったところ、協力にあたった福井県立恐竜博物館らしき施設が登場。番組に出てきた化石の前でスネ夫がビデオを回し、ジャイアンが番組よろしく二枚貝を発掘していて思わずニヤついてしまいました。映画に出てきた進化の解釈にはかなり疑問符がつきましたが、映画をきっかけに恐竜が好きになる子がいたらいいなあと素直に思います。今回の課外授業は恐竜でしたが、今後も続くライブ配信をきっかけに、好きなもの、もっと知りたいと思えることに出会えたらいいですね。そうしたらボーッと生きることもなくなるかも。これ、ひょっとしたら子どもより私が見たほうがいいのか。