負債過多、ビジョンファンドの赤字、保有株の下落
さらに、孫社長は、「ソフトバンクに対する懸念は、負債過多、ビジョンファンドの赤字、保有株の下落という3点にあると言われるが、第1四半期の内容を見ると、純負債は1兆6000億円削減され、ビジョンファンドは反転し、累計黒字になっている。そして、最大の成績の物差しである株主価値は2兆7000億円増加している。懸念に対して、相反する結果が出ている。投資会社となった株主価値の最大化を目指すために、守りを固めながら、運用をしていく」とする。
だが、その一方でこうも語る。
「マネーゲームのために会社を作ったわけではない。創業以来のソフトバンクの理念は、情報革命で人々を幸せにすることである。創業した事業、買収して育てた事業、ビジョンファンドで筆頭株主になった様々な事業は、この理念の実現のためであり、情報革命を率先して引っ張っているリーダーたちを支援し、群として情報革命を推し進める。私は、オーケストラの指揮者のような立場になりたい。理念は一度も変えていない。これからも一切変えずに推し進めたい」。
ちなみに、決算を発表した8月11日は、孫社長の63歳の誕生日であった。それに関連して孫社長は、19歳のときに立てた人生50カ年計画で、60代で事業を後継者に引き継ぐことを示していたことについて言及。「その時点で、健康に自信がないと感じれば引退するかもしれない。だが、計画を立てた当時よりも医学が進歩し、人々の平均寿命も遙かに延びている。ゴルフに行っても、昨年夏は1カ月で3回もパープレイができた。まだ私は現役だといえる。もう少し、経営を続投するということをいまのうちに言っておき、方向修正をした」と述べた。
これまでの人生50カ年計画を修正し、明確な形で続投宣言をした孫社長。いまは後継問題を考えずに、困難を乗り越えることに集中することになる。
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