Athlon 3000Gシリーズは
Pinnacle Ridgeベースの製品
ではAthlonの方は? というと、これも残念ながら性能の開示はない。そもそもAthlon 3000Gシリーズの3製品、3000番台の番号が付いていることからもわかるように、これはTSMC N7を利用したRenoirではなく、Globalfoundriesの12LPを使ったPinnacle Ridgeベースの製品である。
冒頭で示したAthlon 3000Gシリーズの画像はスペックが省略されているので、フルに示したのが下表である。Athlon Goldが4コア4スレッド、Athlon Silverが2コア4スレッドの構成で、CPUの動作周波数に差はあるが、GPUに関しては一律3CUで1100MHz駆動。対応メモリーはDDR4-2933止まりとなっている。
| Athlon 3000Gシリーズのスペック | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| モデルナンバー | Athlon Gold 3150G | Athlon Gold 3150GE | Athlon Silver 3050GE | |||
| コア/スレッド数 | 4/4 | 2/4 | ||||
| L2キャッシュ | 合計2MB | 合計1MB | ||||
| L3キャッシュ | 4MB | |||||
| ベースクロック | 3.5GHz | 3.3GHz | 3.4GHz | |||
| ブーストクロック | 3.9GHz | 3.8GHz | ||||
| 対応メモリー | DDR4-2933 | |||||
| GPU構成 | Vega 3(3CU) | |||||
| GPU動作周波数 | 1100MHz | |||||
| TDP | 45W(cTDP)/65W | 35W | ||||
実のところこのAthlon Silver 3150Gは、GPU性能こそ大幅に下げられているが、CPU性能はRyzen 3 3200Gと大差ない(ベース/ブーストが3.6GHz/4GHzから3.5GHz/3.9GHzにわずかに下げられた)程度で、「ゲームはせず、普通にOfficeがそこそこ動けば良い」というユーザーにはかなり魅力的に思える。
もちろん最終的には価格との相談であるが、Ryzen 3 3200Gの実売価格が1万3000円ほどなので、Athlon Silver 3150Gが1万切りで出てくるようならかなりお買い得感が高いといえる。
コンシューマー向けと同時に発表された
Ryzen PROシリーズ
さて、このRyzen 4000G/Athlon 3000Gシリーズに併せて発表されたのが、Ryzen PRO 4000G/Athlon Pro 3000Gシリーズである。
スペックを比較するとわかるが、モデルナンバーそのものは微妙に違う(Ryzen Pro 4000Gシリーズは数字が50、Athlon Pro Silverは75ほど上乗せされている。なぜかAthlon Pro Goldは同一)ものの、動作周波数やコア構成などは完全に同一となっている。
このProシリーズはAMD Proとして知られる機能(Security、Manageability、Business Ready)を搭載する代わりに倍率変更がロックされている。今回異例だったのは、先も書いたがこのProシリーズがコンシューマー向けと同時にリリースされたことだ。
これまでは1四半期遅れで投入されており、RenoirベースのMobile AMD Ryzen Pro 4000Gシリーズにしても2ヵ月遅れでの投入だったことを考えると、これは異例としか言いようがない。AMDはこの理由を明確にしていないので、その事情を推察してみたい。
実のところデスクトップ版Renoirに関しては、できるならばAMDとしてはビジネス向けを先行したいくらいだったのだろうと思われる。理由は、今もってビジネスPCの市場でインテルに大きな遅れをとっているからだ。
最近はビジネス向けにもノートを使う例がかなり増えてきており、ここはRyzen Pro 4000Gシリーズで対抗できるわけだが、まだ依然としてデスクトップ向けではインテルのシェアが高い。
理由は主にコストの問題でGPU統合が必須であり、ところがAMDは従来では4コアのRyzen Pro 3400Gがハイエンド製品で、6~10コアをラインナップする(しかもGPU統合の)インテルのCore iシリーズに大きく見劣りしていたからだ。
その一方、コンシューマー向けに関してはGPU性能が求められる(どのみちビデオカードを使うことが多い)こともあって、ここへのテコ入れが真剣に求められていた。
その一方コンシューマー向けは、特に自作などのリテールではすでにインテルを圧倒するシェアを確保しており、ここでがんばって新製品を投入しなくても別に困らない。どのみち今年第3四半期~第4四半期にはZen3ベースの製品が投入される予定であり、今新製品を投入するべき理由に乏しい。
それでもインテルのComet Lake投入に対応してXTシリーズプロセッサーを投入したりしているが、これは小手先の変更で済む話で、あまり大きな違いではない。
インテルはこのあとRocket Lakeを投入、来年にはAlder Lakeを投入する予定であるが、これはZen 3で対抗できるとAMDは考えているようだ。したがって、デスクトップ版Renoirはコンシューマー向けに急いで投入すべき理由はない。そのあたりが、Ryzen Pro 4000Gが同時に発表された理由であろう。
これを裏付けるのが、8月8日の朝11時に発売されるプロセッサーのラインナップである。先の記事では以下のようになっていた。
| 8月8日に発売されるラインナップ | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 型番 | 税込価格(税抜価格) | |||||
| Ryzen 7 4750G | 4万3978円(3万9980円) | |||||
| Ryzen 5 4650G | 2万9678円(2万6980円) | |||||
| Ryzen 3 4350G | 2万1978円(1万9980円) | |||||
型番からもわかるようにこれはRyzen 7 Pro 4750G/Ryzen 5 Pro 4650G/Ryzen 3 Pro 4350Gの間違い(これはAMDからの情報が間違っていたもので、その後訂正されている)であり、要するにPro版のしかもバルク品である。
つまり、コンシューマー向けのパッケージよりも先にOEM向けのProのバルク版が優先供給されており、ところがOEM筋としてもそんなに急に製品を供給できないから、結果としてそれがリテールマーケットに流れてきたのだろう。
ものがPro版なので倍率ロックもかかっているし、CPUクーラーが別途必要になるため、お買い得感はやや薄い。なので待てるユーザーは、そう遠くない時期に始まる通常のリテールパッケージを待った方が良いと思う。
2020年7月28日追記
「リテールパッケージを待った方が良い」と書いたが、直近の情報ではそもそもリテール販売がないという話が出ている。「そう遠くない時期に始まる」と書いたのはあくまで筆者の予想であるが、BTO販売のみでパッケージ版が出ないという、あまりうれしくないことになっているようだ。
となると、倍率アンロックのコンシューマー向けは、BTO向けのものがバルクで流れてくるのを待つしかない ことになる。ちょっとこれは考え直してほしいところである。

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