このページの本文へ

スタバやアップルのような「強いブランディング」が自社でもできる理由

2020年07月01日 06時00分更新

文● 乙幡満男(ダイヤモンド・オンライン

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷
ブランディングは、ルールや流れさえ理解してしまえば、難しいものではない Photo:Diamond

全般的に商品のグレードが高くなり、品質の「差」がわかりにくくなった現代。そんな時代に売上を伸ばすカギとなるのが「ブランディング」です。中身は他社と同じでも、「ブランディング」で商品価値の伝え方を工夫したところ、売上が何倍も伸び、販売単価も上がったという事例は実際にいくつもあります。そこで前回に続き、これまでイオンやマツモトキヨシなど数々のPB(プライベートブランド)を立ち上げ、成功に導いてきたブランドコンサルタント・乙幡満男氏の著書『プランディングが9割』(青春出版社)から、ブランディングを進めるための基本的な考え方を紹介します。

ブランディング活動の基本は「現実」から「理想」へ

 時々、「海外で成功している企業はブランドが強いと言うけど、アップルやスターバックスのようなことをできるはずがない」とか、「ブランディングなんてコスト的にも、人材の面でも、自分たちには難しい。関係ないよ」といった言葉を耳にすることがあります。

 そんな風に思われた方も安心してください。ブランディングは、ルールや流れさえ理解してしまえば、難しいものではありません。コストを抑えることもできます。ブランディングにおいて大事なのは、シンプルに、極力、基本に忠実に行うことです。

 状況により思い通りにいかないことも出てきますが、可能な限りブランディングのルールや流れ通りに行うことを心がけてください。成功する確率がぐんと上がります。戦う市場を決め、目的を定め、ターゲットとするお客さんに、様々なタッチポイント(顧客との接点)を通じて、最高の価値を届けていきましょう。

 まずは、ブランドの現状分析です。現在自分のいる位置がどこなのかという「現実」と、どこに行きたいのかという「理想(目指す姿)」を、「自社」「顧客」「競合」の3つの視点で、できるだけ正確に把握していきます。

 多くのブランドは、「理想」と「現実」にギャップがあります。スターバックスやディズニーのような大手でさえ、ちょっとしたギャップが生まれればそれを埋めるよう懸命になります。ここで大事なのは、課題は何か、どうすればそれを克服してブランドの価値を高めることができるのかを分析し、どうすべきかを考え、実行していくことです。

 もし課題があるとしたら、それを改善していく必要があります。高い理想を求め、理想と現実のギャップを埋め、課題を解決し、価値を高めていくことがブランディング活動です。

ブランディングとマーケティングはどう違う?

 ブランドづくりとマーケティングの違いがわからないという相談を受けることがよくあります。マーケティングとは簡単に言うと、どこのどの分野を狙うか市場を細分化し、誰に売るかターゲットを設定し、競合との違いを明らかにするためポジショニングを決めた上で、「売れる仕組み」をつくることを言います。

 そのときにポイントとなるのが、いわゆる4P(Product〈製品・商品〉、Price〈価格〉、Place〈流通〉、Promotion〈宣伝〉)の組み合わせ、「どんな商品をいくらに設定するか」「どこで販売するか」を決め、「どのような宣伝をして売っていくか」ということです。

 例えば、スターバックスが缶コーヒーを出すとしたら、スターバックスの味をスターバックスの店舗がないところでも、スターバックスブランドの提供価値である「第3の場所(サードプレイス)」が擬似的にでも味わえるよう、バリスタが監修した缶コーヒー(Product)を、ショートサイズと同じ300円(Price)程度で、自動販売機(Place)限定で、広告はLINEの配信限定(Promotion)にする、というような戦略をとります。このように、4P戦略では、「誰に対して(WHO)何を(WHAT)どのように売るか(HOW)」を考えることがとても重要です。

SNS時代で変化していく「売れる仕組み」

 ただ、顧客との関係が近い現代、SNS時代においては、企業発信的な考え方の4P戦略から、下記のような4つのE(Experience〈体験〉、Exchange〈交換〉、Everywhere〈あらゆる場所〉、Evangelism〈伝道・伝播〉)の4E戦略にシフトしています。

・Product〈製品・商品〉→Experience〈体験〉
「モノ」から「コト」の時代になり、経験や体験がより重要
・Price〈価格〉→Exchange〈交換〉
 一方的な値付けではなく「商品と貨幣との交換」という行為そのもの
・Place〈流通〉→Everywhere〈あらゆる場所〉
 リアル店舗だけでなく、ネットなどいつでもスマホさえあれば購入できる場所
・Promotion〈宣伝〉→Evangelism〈伝道・伝播〉
 一方的に広告で伝えるのではなく、口コミやメディアなどで顧客にどう伝わるか

 また、日本を代表するブランド論の第一人者、一橋大学大学院経営管理研究科の阿久津聡教授は、マーケティング戦略におけるブランドの位置づけについて、「顧客の心の中にブランドを構築し、資産としてのブランドの価値を上げ、それを活用して収益を上げていくことがマーケティング戦略の核」と述べています。

 言い換えれば、「マーケティング戦略の中心にブランドを置くこと」が重要であり、ブランディング活動とは、マーケティング活動、すなわち4P(または4E)を通じて、または一貫したタッチポイントを通して、お客さんの頭の中にブランドをつくるということです。

 つまり、4P(または4E)はブランドをお客さんに伝える手段であると言えます。スターバックスというブランドで缶コーヒーを出す例で言えば、コーヒーの中身はもちろん、缶のデザインや触り心地もスタバらしさがなくてはなりません。価格も極端な話、80円くらいで売られていれば、スタバのブランドを崩してしまうでょう。お客さんが「スタバならこのくらいの金額を払ってもいい」というような、スタバらしい価格があるはずです。

 宣伝も、LINE配信であれば、くつろぎが感じられるようなコミュニケーションがよいでしょう。こんな風にして、それぞれのマーケティング活動の中心にブランドを置くことがとても重要です。

 また、マーケティングが比較的、短期的な収益に視点を置くのに対して、ブランディングは中長期的な収益に視点を置くという違いもあります。ビジネスを成長させる事業が成功しなければ意味がありません。ですので、ブランディングを行うに際しては、しっかりとしたマーケティング戦略が立てられていることも大切です。

ブランドにとって理想のターゲット層の見つけ方とは

 では、ブランドのターゲットは誰にするのか。私が以前、あるブランドを担当していたときにこの質問をしたところ、その会社のスーパーの担当者から、「お店に来てくれる人すべて」という答えが返ってきました。

 確かに「多くの人」に売りたいから、ターゲットを「多くの人」にしたいという気持ちもわかります。しかし「多くの人」といえば、年齢が10 代の人も60代の人も含まれるかもしれませんし、派手なデザインが好きな人も質素なデザインが好きな人も含まれるでしょう。非常に幅広い人が対象となっています。

 ブランドの理想のお客さん像を考えるときは、「届けたいブランドの良さをわかってくれる人は、いったいどんな人なのか」を明確にすることが重要です。

 ターゲットというと、「10代の男性」とか「M1層」のように、人口統計学的属性だけで示されることがあります(M1層=ターゲットとなる顧客を性別・年齢層で分類したもの。M1のMはMale=男性の意。女性はFemaleのFで示す。1は年齢層を示し、20~34歳のこと。2は35~49歳と続く)。

 もちろんそれも重要ですが、「10代の男性」というだけでは、その人の好みやライフスタイルが見えてきません。家で黙々とゲームをするのが好きな人もいれば、仲間と外で遊ぶのが好きな人もいるでしょう。

 以前と違い、現代社会では、ライフスタイルや価値観がより多様化してきていることから、ターゲットとなる顧客をより深く検討する必要があります。具体的には、性別や年齢など人口統計的(デモグラフィック)な側面と、ライフスタイルや価値観といった心理的(サイコグラフィック)な側面を捉えることが大事です。

 ブランドはお客さんの頭の中でつくられていくものなので、好き嫌い、楽しさ、おしゃれ、憧れなど、ライフスタイルや価値観などの心理的側面を検討することがポイントになってきます。ターゲットを表面的にだけでなく、心の奥を読み取った上で設定することで、お客さんに選ばれ、「大好き!」と言ってもらえるような魅力的なブランドになります。そのためには、ターゲットを意識した価値観や世界観をつくることが必要です。

「すべての人」「多くの人」と答えていた先ほどのスーパーの方に、その後「『多くの人』と言う中でも、特にどんなお客さんのことが気になるのか」を聞いたところ、「新鮮な魚や旬の野菜を扱っているから、美味しい手料理をつくって家族に喜んでもらいたいと思っている主婦かな」と話していました。こう考えていくと、「多くの人」と比べてだいぶ具体的になったのがわかります。

 新型コロナ禍で経済的にも厳しい状況が続いている中、ブランドによる「価値」を築くことで、どのような事態が起きても揺るがない強い企業になれるはずです。ぜひ、この機会に自社のブランド力を高めてみてはいかがでしょうか。

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

カテゴリートップへ

最新記事
最新記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ