先週、アップルはWWDC(世界開発者会議)をオンラインで開催した。
ここ数年、「アップルがスマートグラスを出すのではないか」という噂が絶えないが、残念ながら今回のWWDCで製品が披露されることはなかった。しかし、基調講演を見ていると、「アップルは将来、スマートグラスを作るために様々な技術を仕込んでいるのではないか」という気にさせられた。
では、具体的にどんな技術が、アップル製スマートグラスのベースとなるのか。WWDCでの発表を振り返ってみたい。
■ARコンテンツのための「空間オーディオ」
まず、注目はワイヤレスイヤホンのAirPods Proだ。基調講演でAirPods Proのアップデートが発表されるとは予想外の展開であった。
AirPods Proはアップデートにより「空間オーディオ」に対応する。
これにより、5.1chや7.1chサラウンド、Dolby Atmosなどのコンテンツを視聴する際、立体的な音響を楽しめる。
ただ、AirPods Proのアップデートで興味深いのは、内蔵した加速度センサーにより、頭の動きを把握し、音の出所をずらさないように出せるようになることだ。
単にiPhoneやiPad、テレビで映画やドラマを見る際、立体音響として聴こえれば、何も、加速度センサーを使って頭の動きまで感知する必要はないだろう。常に画面に対して、正面から見て、左右の音を聞いているのだから、頭はさほど動かない。
しかし、これがARコンテンツだったら、話は変わってくる。iPadなどでARコンテンツを視聴しつつ、AirPods Proで音を聴く場合、iPadを持ちながら、部屋を自在に移動することも想定される。その際、頭の方向は360度、動いてしまう。そこで役立つのが加速度センサーによる検知だ。これにより、ユーザーがどこを向こうと、きっちりと決められた方向から音が出るようになる。
まずはiPadでARのゲームを楽しむ際に利用されるだろうし、将来的にはスマートグラスをかけつつ、AirPods Proを装着することで、立体感がありつつ、動き回っても決められた方向から音が聞こえるようになるはずだ。
AirPods Proでは強力なノイズキャンセル機能が搭載されている。ノイズキャンセルをかけつつ、空間オーディオを適用させれば、まさにARの世界への没入感は半端ないはずだ。
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