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無印良品、BOTANISTが支持される理由は「ブランディングが9割」

2020年06月24日 06時00分更新

文● 乙幡満男(ダイヤモンド・オンライン

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「『無印良品』というブランド名を聞いて、思い出すキーワードは何ですか」と聞くと、ほぼ100%と言っていいほど必ず出てくるキーワードとは? Photo:Diamond

全般的に商品のグレードが高くなり、品質の「差」がわかりにくくなった現代。そんな時代に売上を伸ばすカギとなるのが「ブランディング」です。中身は他社と同じでも、「ブランディング」で商品価値の伝え方を工夫したところ、売上が何倍も伸び、販売単価も上がったという事例は実際にいくつもあります。そこで今回は、これまでイオンやマツモトキヨシなどで数々のPB(プライベートブランド)を立ち上げ、成功に導いてきたブランドコンサルタント・乙幡満男氏の著書『ブランディングが9割』(青春出版社)から、「ブランド力」のしくみや影響力について解説します。

そもそも「ブランド」とは何か?

 まず、ブランドとは何かというと、企業とお客さんとの接点を通して、お客さんに評価され、お客さんの頭の中に蓄積されていく価値のことです。ブランドは、企業側とお客さんとの接点を通じ、五感によって体験することでしか感じることができません。

 そのため企業側は、商品や売り場、オンライン上のコミュニケーション、店頭での接客など、様々なお客さんとの接点(=タッチポイント)において、ブランドの特徴やお客さんへの提供価値などを、一貫性を持って伝えていく必要があります。そうすることで、受け手のお客さんの頭の中にブランドが構築され、ブランドが育っていくのです。

 このように、お客さんの頭の中にブランドを構築し、価値を高めて確固たる評価を得ていくことを「ブランディング」と呼びます。簡単に言うと、ブランディング活動とはブランド価値を高める活動のことです。

 私はセミナーでよく「『無印良品』というブランド名を聞いて、思い出すキーワードは何ですか」と聞きます。そうすると、「無駄のない」「質素」「洗練された」「日本を代表するブランド」などが出てくるのですが、ほぼ100%と言っていいほど必ず出てくるキーワードがあります。それは「シンプル」という回答です。

 企業側もおそらく、ブランドとして「シンプル」を重要視していることでしょう。その証拠に、店舗や商品、広告など各タッチポイントでの統一したデザイン、世界観は「シンプル」に集約されています。「無印良品」と聞いて「シンプル」という言葉が出てくる理由は、無印良品が長期間にわたり、ブランドのエッセンス(ブランドとしての大切な要素)でもある「シンプルさ」を構築してきたからこそだと言えます。

 強いブランドにはそういったブランドのエッセンスがあり、それがしっかりお客さんに伝わり、頭の中に焼き付いているのです。

売上を左右する「ブランド」の影響力は侮れない

 企業側の視点で見ると、ブランドとは価値観を含んだ概念であり、無形資産でもあります。ブランドコンサルティング会社の世界最大手、インターブランド社は、ブランドを「常に変化するビジネスアセット(資産)」と定義しています。

 無形資産とはその名のとおり、形のない資産のことです。工場や設備といった、目に見える資産とは違い、特許や著作権など目に見えない資産のことを言います。資産であるからには、ブランドとは将来的に会社に利益をもたらすものだと言えます。

 ちなみに同社では毎年、「ブランド価値評価ランキング」を発表していますが、無印良品のブランド価値評価額は約16億ドル(≒約1760億円/2020年2月インターブランド社発表)となります。また、2019年のアップルのブランド価値評価額は、2342億ドル(約25.3兆円)というから驚きです(2019年10月同)。

 桁が大きすぎてわかりづらいかもしれませんが、「無印のブランドを買い取ってウチの会社で展開したい!」という場合、必要な金額は約16億ドルということです。もし仮に、明日から「無印良品」が「無印良品」ブランドを一切使えなくなるとしたらどうなってしまうでしょうか?ブランドを掲げることができないという状態をイメージしてください。

 売上がどれだけ落ちるかを想像してみると、「ブランドという資産が利益を生み出している」ことがイメージできると思います。それだけ長期間にわたってブランドを築き上げてきたということです。

 アパレルメーカーの三陽商会が「バーバリー」ブランドを使えなくなり、売上が落ちたというニュースは記憶に新しいと思います。商品のデザインや品質はそんなに変わらないにもかかわらず、ブランドを扱うことができなくなり、売上が落ちてしまったのです。それくらい「ブランド」というものには影響力があるということです。

「ブランディング」は小さい会社の方が尖れる!

 ブランディングというと、広告やデザインなどにお金がかかるというイメージからか、大手企業が行うものと思われがちです。しかし、小さい会社は小さい会社なりの良さを生かせば、ブランディングがうまくいくのです。

 まず、大手と比較すると「小さい会社の方が、ブランドに『尖り』を出しやすい」ということが、うまくいく理由の一つです。尖りを出すとは、より特徴を出すということを意味します。際立った特徴を出すとターゲット層が絞り込まれるので、ターゲット顧客のイメージがより具体化され、こだわり層など、特定層への訴求がしやすくなるのです。

 ブランドはターゲットを絞り込んだ方が、顧客像がより明確になり、ブランディングがしやすくなるのです。例えば、「BOTANIST(ボタニスト)」というヘアケアブランドがあります。これは、I-neという会社がつくったものですが、P&G、ユニリーバ、花王といった競合がひしめくヘアケアカテゴリーにおいて、小さい会社ながら尖りを出すことで成功したブランドです。

 BOTANISTは、2015年のノンシリコンシャンプーのブームが一巡した後、ボタニカル(植物由来の)をコンセプトに、従来のシャンプーよりは高価格でありながら、サロンのシャンプーと比較すると低価格に位置する1500円前後の中価格帯で勝負し、成功しました。

 リピートしてもらうために品質にもとことんこだわったことや、大手が店頭で目立つようカラフルなデザインを採用する中、あえて白と黒をベースに文字だけというシンプルなデザインで、他商品と差別化したことが成功要因といえます。

 ほかにも、SNSを駆使したコミュニーションを行うなどの工夫をしていますが、大手にはない尖りを出したことで、成功することができたわけです。

 また、小さい会社には大手と比較すると意思決定が早くできるという強みがあります。小さい会社は社長の決断ですぐ決まることが多く、大手より迅速に物事を進めることができるのです。デジタル時代に突入し、目まぐるしく変化する市場の中でお客さんに応えていくには、意思決定が早い小さい会社の方が有利と言えるでしょう。

 次回は、「ブランディング」を行っていく流れについて、具体的に解説していきます。

>>次回は7月1日(水)公開予定です。

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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