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3分で始められるVRプレゼンツール「キネトスケイプ」はプレゼンの未来を変えるかもしれない

2020年06月19日 12時00分更新

文● 高橋佑司/ASCII

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 パーソナルモビリティー型VRライド「キックウェイ」などを開発するハシラスは6月19日、ビジネスや教育分野での利用を想定したVRプレゼンテーションツール「キネトスケイプ」を発表した。

 キネトスケイプは、一体型のVRヘッドマウントディスプレー「Oculus Quest」を利用して、ホワイトボードやプロジェクターだけではできないような、VR空間を活用した臨場感のあるプレゼンを実現できるアプリケーションだ。

 ただ口頭とスライド資料で説明するだけでなく、従来のプレゼンよりも深い「体験」をプレゼン相手に提供することで、より深い理解を促すことを目的とする。今回、本ツールを実際に体験できる機会を頂けたので、本稿ではその様子をレポートしていく。

キネトスケイプを体験中の様子

 キネトスケイプは、近年登場しているVRライブアプリやVR会議アプリとは少し目的が異なり、プレゼンの資料を作成・表示させるのが主だ。役割としてはPowerPointやKeynoteに近いだろう。

 利用方法としては、ホスト(プレゼンを行なう側)も含む参加者が、Oculus Questを被ってVR空間に入る。ほかの参加者の姿は、アバターになってそれぞれの目からも見えており、手や頭の動きもアバターに反映されるので、簡単なボディーランゲージも可能だ。ちなみに、人差し指を立てると指から赤いレーザーが出るので、何かを指し示したいときなどに便利になる。

手の動きが認識されており、指さすとレーザーが出る

 ホストが特定のジェスチャーをすると、VR空間が次のシーンに切り替わっていき、ホストはそれを見せながら、プレゼン相手にプロダクトや事業の説明をしていく、という形。イメージとしては、PowerPointやKeynoteのスライドひとつひとつを、VR空間の1シーン1シーンに置き換えたような感じだ。

ホストが特定のジェスチャーをすることで、シーンを進めたり戻したりできる。わざわざPCを操作する必要がなく、VR内で操作できる

 そのように言ってしまうと、なんだかインパクトが薄れてしまうかもしれないが、実際にこのツールを利用してプレゼンを受けてみると、その表現の幅は従来の2Dのスライドで表現できるものの比ではない。

 例えば、現実では平面の画面上で見るしかない3DのオブジェクトなどをVR空間に読み込めば、まるで目の前にそのオブジェクトがあるように立体的に表示され、さまざまな角度から自由に眺められるようになる。今回、筆者が実際に体験させてもらったなかでは、VR空間に車のモデルを表示させ、外観や内部の様子を臨場感たっぷりに見回せただけでなく、車のドアやボンネットをタッチすることで開閉できるなど、インタラクティブな仕掛けも用意されていた。

3DのオブジェクトをVR空間内に設置して、実際にその場にあるようにプレゼンできる

 360度映像やVR映像を、その臨場感を保ったまま資料として表示させられるのも強みだ。こうした映像については、ヘッドマウントディスプレーを使えばVRで楽しめるものの、ヘッドマウントディスプレーは1人でしか装着できないため、リアルタイムにほかの人と内容を共有することはできない。個人的にVRコンテンツを楽しむならともかく、プレゼンの場で、複数の人と映像を共有しながら説明をしていくということは難しい。

この状態で周りにVR映像が表示され、参加者全員で共有できる

 しかしキネトスケイプでは、VR空間の周りの景色を360度のスクリーンにすることで、VRの映像を表示させ、プレゼンの参加者全員でそれを見ながら会話をするといったことも可能だ。3DのVRコンテンツでは、奥行きもしっかりと表現された迫力のある映像を全員で体験しつつ、プレゼンを進行できる。

 また、周りの景色を自由に変えられるので、例えば現実の街並みを再現した空間にしたり、森の中の景色にしたりといったこともできる。単なる気分転換に留まらず、街並みを見せながらそこで実施するサービスの説明をしたり、建築予定の建物の内装を再現して説明したりと、より臨場感のある資料としても活用できる。

周りの景色を変えつつ、仮想スクリーンを登場させることも

 もちろん、バーチャル空間内で仮想スクリーンを表示させて、スライドや画像など2Dの資料を表示させることも可能だ。その他、もしプレゼン中にホストとの接続が切れてしまった際などはオフライン動作になり、自分の意志でシーンの切り替えが可能になるため、不具合があった際もそれぞれでシーンを切り替えながらプレゼンを続行できるようになっている。

圧倒的な手軽さも売り

 キネトスケイプの特長は、前述したVRによる幅広い表現だが、これだけのプレゼンテーションを、圧倒的に手軽に体験させられるというのも大事なポイントだ。

 PCと接続せずに、単体で稼働する一体型のOculus Questを用いているので、セッティングなどの煩わしい作業が必要なく、被ったらすぐにプレゼンを始められる。現に今回、筆者がプレゼンが開始されるまでの準備にかかった時間は2、3分といったところだ。

 カメラによるハンドトラッキングを実現しているので、わざわざVRのコントローラーを持つ必要もない。本当に手軽に、VR表現を活用したプレゼンができるのだ。

 もちろん、プレゼンを行なう側には事前にVRシーンを作成しておく必要はある。また、参加者のOculus Questを接続するネットワークの維持に関してはPCを用いているので、そうした準備も必要にはなる。

 しかし、わざわざVR ReadyのハイスペックなPCを用意して、ヘッドマウントディスプレーに接続し、ベースステーションやソフトウェアをセッティングして……などというような手間を取らずに利用できるのは非常に便利だ。

普段の会議室で、簡単にVRプレゼンを始められる

 Oculus Questは持ち運びも容易なサイズなので、他社に訪問してVRプレゼンを行なうこともできるし、郵送してVRを体験してもらうことも可能。なお現在、キネトスケイプ内には音声の送受信を行なう機能は搭載していないため、リモートでのVRプレゼンは既存のウェブミーティングアプリなどとの組み合わせで行なうことを想定している。

 「キネトスケイプ内でしか音声のやり取りができない」という状況では、VRを取り外した際などにシームレスに音声通話に戻れないので、現実とVRを行き来する上では、音声のやり取りは別のアプリケーションで行なっている方が望ましいという考えのもと、あえて音声機能は実装していないようだ。

 いずれにしても、これだけ手軽にVRを活用したプレゼンができるというのは、これからの時代のプレゼンテーションの場に、大きな影響を与えるツールになるのではないだろうか。

 なお同社では、パートナー企業と連携し、キネトスケイプをプレゼンテーションでの活用にとどまらず、さまざまなコンテンツを作成するための多目的ツールとして展開予定だという。さまざまなコンテンツ開発に用いられている「Unity」のようなツールを目指しているとのことだ。

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