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農学部を新設する大学が増加、今どきの学生から人気を集める理由

2020年05月26日 06時00分更新

文● 福田晃広(ダイヤモンド・オンライン

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Photo:PIXTA

少子化の影響により、大学経営も厳しくなるなか、実は農学部の新設ラッシュが続いている。なぜ農学部を開設する大学が増えているのか。農業ジャーナリストの山田優氏に詳しい話を聞いた。(清談社 福田晃広)

ここ10年で農学系学部を
開設する大学が増加

 2019年6月時点で、「農学部(群)」との名称の学部を持つ大学は全国に33校。そのうち、25校が国公立で、残りの8校が私立である。

 農学部群となっているのは、必ずしも農学部という名称ではなく、「生物資源学部」「応用生命科学部」「生命環境学部」「地域環境科学部」「国際食料情報学部」「環境園芸学部」などがあるからだ。

 学科でも、「バイオサイエンス学科」「食料生命環境学科」「農業経済学科」「園芸学科」「デザイン農学科」「地域生態システム学科」などがあり、多種多様なのだ。

 実はここ10年近く、4年制大学農学部群の新設ラッシュが続いており、国立では山梨大学(12年生命環境学部)、徳島大学(16年生物資源産業学部)、福島大学(19年食農学類)が新たに農学部群を設置した。

 私立では15年、京都府の龍谷大学が私立大学として35年ぶりの農学部を新設。20年4月には、摂南大学が大阪府初の農学部を開設するなど、特に関西方面で顕著だ。また、農学部以外にも、18年に京都府の立命館大学が「食マネジメント学部」を開設している。

 さらには、学部・学科の新設だけにとどまらず、18年には、東京農業大学以来93年ぶりの農業単科大学である、私立の新潟食料農業大学が新たに設立されている。

マイナスイメージが減り
就職に強い点が学生に人気

 なぜここにきて、大学の農学系学部・学科の新設が相次いでいるのだろうか。農業ジャーナリストの山田優氏はこう指摘する。

「一番大きいのは、若い世代の中で農学に対する偏見が薄れてきたからです。少し前までは農学といえば、『時代遅れの産業』という固定観念がつきまとっていました。しかし、実は一般に想像しやすい栽培法や加工法を研究する生産農学だけでなく、畜産学、獣医学、水産学、森林学、農業工学、農芸化学、農業経済学など、7つの基本分野に分けられ、私たちの社会が直面する課題に幅広い視点で取り組めます。そのためイメージが徐々に変化し始め、農学部人気につながっているのではないでしょうか」

 ほかにも若者を中心に、田舎への移住者や田舎での生活に憧れを持つ人が農学に興味を示す傾向もある。たとえば、14年の内閣府調査では、20代男性で農村での生活意欲が高いことが示されている。

 文部科学省の統計でも、農業系で学ぶ学生数は、03年では6万9447人だったのが、18年には7万6930人と増加傾向にある。

 しかし、農学部人気で注目すべきなのは、実は女子学生が多い点にある。文科省の調べでは、農学系で学ぶ女子学生比率は45%と半数に迫り、特に食品関係や獣医学では、女性比率はさらに高い。

 農学系学部・学科が人気の理由について、就職に強い点も大きいと、山田氏は言う。

「昔は安泰だった銀行業界や公務員なども将来が危ういといわれる時代になり、たとえば景気に左右されにくい食品業界への就職には、農学系学部卒が有利。しかも、食品産業の国内生産額は、年々規模を拡大し、今や100兆円という成長産業なのです。農学が対象とする農業や食などは絶対になくならない分野ですので、これからのキャリアを堅実に考える学生たちが、農学部を選択するのは自然な流れかもしれません」

 また、近年は幅広い分野を学び、課題に挑む教育を受けている学生が、「即戦力」として企業から評価される傾向にある。農学部だから食品業界、という構図ではなく、幅広い産業に就職できる可能性も開けてきているのだ。

 農学系学部・学科の新設ラッシュは、まだまだ続くかもしれない。

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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