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森友問題「国有地8割値下げ&直後に資産価値10倍」のトリックに新事実!

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学校法人「森友学園」が建設中だった小学校校舎 Photo:Anadolu Agency/gettyimages

学校法人「森友学園」に国有地が大幅値引きで売却された問題において、価格決定の裏付けとなったのが不動産鑑定士による不動産鑑定評価だ。大阪府不動産鑑定士協会は、この問題にかかわった鑑定評価について、第三者委員会による調査報告書を公表した。そこから明らかになったのは、不動産売買額を鑑定評価額から8割超も値引きし、買い取り直後に不動産評価を購入額の10倍にするという「魔法」のトリックだ。(ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美)

森友問題の不動産鑑定評価で
第三者委員会が調査報告書

 不動産売買額を鑑定評価額から8割超も値引きし、買い取り直後に不動産評価を購入額の10倍にするという魔法のような術がある。学校法人「森友学園」を巡る問題で、それはなされた。

 大阪府不動産鑑定士協会は5月中旬、森友問題にかかわった鑑定評価について第三者委員会の調査結果を公表した。2019年11月から開始した調査をとりまとめた報告書はそのトリックを解き明かした。

 まずは、国有地の売買額を鑑定評価額から8割超、額にして8億円値引きした方法である。

9億5600万円とした鑑定評価書の末尾に
「意見価額1億3400万円」が付記された

 近畿財務局は売却に向けた鑑定評価を依頼する際、地中に埋まったごみの撤去にかかる費用として地下埋設物撤去概算額、そして軟弱地盤であることを反映するよう仕様書に盛り込んだ。要は、地下埋設物撤去概算額などを考慮して鑑定評価額を下げるよう求めたのである。

 16年4月に近畿財務局から依頼を受けた不動産鑑定業者は、翌5月に鑑定評価書を発行した。地下埋設物の問題を除外して鑑定評価額を9億5600万円とした。依頼者が提示した地下埋設物撤去概算額には依頼者側の推測に基づくものが含まれ、調査方法が不動産鑑定評価においては不適当、つまり信用性に欠けると判断した。なにしろ約8億円という過大な額である。

 でありながら、鑑定評価書の末尾に付記意見として、意見価額1億3400万円と記した。これは地下埋設物撤去概算額を差し引いた価格である。

 不動産鑑定士業界では、依頼を受けて鑑定評価書に付記を書くこともあるが、1つの鑑定評価書に2つの価額を記すことは望ましくないとされる。鑑定評価書に記載した価格である以上、意見価額が独り歩きする場合があるからだ。

 鑑定評価書の利用者にとっては価格が最大の関心事であり、それが鑑定評価額なのか意見価額なのかといった詳細な部分には注意が払われにくい。実際、翌6月に近畿財務局は意見価額1億3400万円と同額で土地を森友学園に売却した。

 意見価額の記載がなければ、近畿財務局は売却額を1億3400万円とする根拠を得られなかった。調査報告書は、意見価額は価格決定に「『利用』されたと考えられる」としている。 一般的ではないが、依頼者の要望を反映させた意見価額をあえて付記してもらうというのが、額にして8億円の値引きを可能にしたトリックである。

 次に、買い取り直後に不動産評価を購入額の10倍にする方法である。

買い取った直後に再び鑑定依頼
都合の良い13億円評価書の全貌

 森友学園は16年6月20日に1億3400万円で所有権を獲得した土地について、買い取った直後に別の不動産鑑定業者へ鑑定評価を依頼した。同年8月、13億円の鑑定評価書が発行された。購入額の10倍となる評価であり、そこには地下埋設物があるためその除去費用がかかることや、もし小学校として利用されなければ買い戻される「買戻特約」付きの不動産であるといったことは明記されなかった。

 鑑定評価書によると、依頼目的は「資産評価の参考とするため」、依頼者以外への提出先は「大阪府、公認会計士」とされている。具体的には、森友学園が小学校の設置認可の審査を受けるために、大阪府私立学校審議会に提出するものだった。

 なぜ、再び鑑定評価を依頼する必要があったのか。

 私立小学校設置の審査基準には、「負債割合」というものがある。ここでは、校地取得費や校舎建築費などの借り入れ後において、学校法人の総資産額に対する総負債額の割合が30%以下であることを求めている。

 土地の価値がより高くなれば総資産額は増え、地下埋設物撤去費用の借り入れなどを考慮しなければ総負債額は減らせる。そうしなければ負債割合をクリアできなかったのだろうか。何にせよ、より高い評価額、かつ地下埋設物があることや撤去に8億円かかることが記載されていない鑑定評価書があれば都合は良かったはずだ。

 土地の価値を13億円と評価した新たな鑑定評価書には、「所有権以外の権利」という項目の記載がない。つまり、買戻特約に触れていない。このため、新たな鑑定評価額とかけ離れた直前の売買価格も載っていない。加えて、「地下埋設物の有無並びにその状態」について言及していない。撤去に約8億円がかかるとしていたにもかかわらずだ。

 依頼を受けた不動産鑑定士は、他の鑑定評価書では「所有権以外の権利」「地下埋設物の有無並びにその状態」のどちらの項目も記述してきた。しかし、この鑑定評価書には、いずれも記載しなかった。

 さらに加えると、この鑑定評価書を作成した鑑定士の1人は当時、国有財産近畿地方審議会の委員を務めていた。それなのに「関与不動産鑑定士及び関与不動産鑑定業者の対象不動産に関する利害関係又は対象不動産に関し利害関係を有する者との縁故若しくは特別の利害関係は、いずれもない」としていた。この審議会では、森友学園に対する対象不動産の売り払いも審議されており、利益相反を指摘されかねない立場であったはずだ。

 購入後に再度、鑑定評価を依頼するというのが、不動産評価を購入額の10倍にするトリックである。

 ただし、である。不動産売買額を鑑定評価額から8割超も値引きするトリックにも、買い取り直後に不動産評価を購入額の10倍にするトリックにも、前提条件がある。依頼者にとって都合の良い鑑定評価書を作成してもらうパワーが必要であるということだ。

 第三者委員会は、8億円値引きの調査において、当の不動産鑑定士や近畿財務局から説明を受けることができなかった。従って「意見価額を記載した鑑定評価書の作成過程において近畿財務局から何らかの依頼者プレッシャーが働いたのか、働いたとしてどの程度の依頼者プレッシャーがあったのかについては、明確にならなかった」としている。

 パワーの源泉は「忖度」、そうでなければ「偶然」に頼るしかない。悪意を持って偶然を引き起こして利用することもできるのかもしれない。不動産鑑定士は難関国家資格を持つ専門家であり、鑑定評価は慎重かつ厳格であってしかるべきもの。都合の良い偶然を期待したり誘発するのは、本来難しいはずである。また、都合の良い鑑定評価書が発行されなければ、森友問題は起こり得なかったはずである。

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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