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俺はUFOを見たんだ:

バルミューダのスピーカーは「ライブの盆栽」だ

2020年05月18日 16時00分更新

文● 四本淑三 編集●ASCII

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■記憶音を再生するスピーカー

 もうバカにしながら斜めに読んでもらって一向に構わないのだが、LEDを眺めているうちに、徐々に音のとらえ方が変わってゆく。大昔に流行ったシンクロエナジャイザーを思い出してしまったが、あれとは違って出ていないはずの音を聴いた気になるから、まあヤバいことに変わりはない。

 まず煌めくキャンドルで、すでに高域の甘さを感じなくなっている。これは単純に真空管のフィラメントからの連想だろう。高調波歪みを想像して、存在しない倍音を感じてしまうのだ。特に浅いディストーションのかかったギター、金管系なんかは最高。これならディフューザーなんかいらないよなあ。なんて納得してしまうから実に困ったことだ。

 低域不足についても同様。バスドラが鳴るたび風圧のようなエネルギーを感じる上に、それに乗じて押し寄せてくるモブ圧すら妄想してしまう。立ち上がりも減衰も速く、精密に同調するLEDのおかげで、ダイナミックレンジも広大だ。ボーカルだって歌い上げるたびに光量がじわっと持ち上がってくるから、マイクがどんどん接近してくる。まったく私の頭は大丈夫なんだろうか。

 再生中の情報を告知することで認知操作ができるなら、スペクトラム表示でもいいじゃないか。そう思ったりもしたが、80年代のカーステのようで麗しくない上に、体感する音の印象との乖離が大きい。そこで音楽体験と直感的に結びついたステージのメタファーというわけなのか。なるほど。

 写真の世界に「記憶色」という言葉があるが、このスピーカーが再現するのは、さしずめ「記憶音」だ。だから「ライブハウスなんか行ったことがないぞ」という方々にとって、これがどう作用するのかは分からない。が、きれいに録れた音源があっても、YouTubeのライブ動画の方が臨場感があって聴いた気になれる。あれと同じだ。

■「いい音」って一体なんだったのだろう?

 従来のハイファイオーディオ基準で言えば、このスピーカーの評価は5点満点の3点、コストパフォーマンスを加えると2点がいいところだ。しかしオーディオ的な完璧を目指した音と、聴いて気持ちのいい音はやっぱり違う。記憶音だろうと妄想だろうと、人間が気持ち良く感じれば、それは正義だ。ツイーターやウーファーの代わりにLEDだって大アリだ。

 たとえばフェンダーやマーシャルのアンプだって、歪率や帯域の狭さで評価しても意味ないじゃないか。この発想で楽器用があってもいいなあ、と思う。聴衆と同じ空間を共有しにくい昨今、演者だって盛り上がるに違いない。

 それでAUX INに楽器をつないでみたら、遅延があってギターは無理だった。立ち上がりが穏やかなテルミンなら雰囲気は楽しめるが、音は他から出さなければ音程が取れない。それでもリズムマシンのアプリなら遅延は関係ないし、新時代のミラーボールとドンカマのようでカッコいい。

 問題は価格だ。ライブハウスとすれば、金黒クロームの素材色から言って、ディナーなんか出ちゃう六本木のBや渋谷のDあたりの、経済的に余裕のあるお客さん向けなのかなと思う。そんな大人の皆さんの定額給付金10万円の使い途としてオススメです。

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