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「コロナ戦争」緊急提言!資産デフレ回避と中小企業の資本毀損対策を

2020年04月01日 06時00分更新

文● 高田 創(ダイヤモンド・オンライン

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Photo:PIXTA

見落とされがちな
コロナショック「2つの視点」

 新型コロナウイルス問題の不安の本質は、経済学者のフランク・ナイトが指摘した、確率分布を推測できない「真の不確実性」と、グローバル化に伴い世界中に一斉に広がったパンデミック感染だ。

 事態への対応で今、見落とされがちな重要な2つの点がある。

 1つは、日本経済が再び資産デフレに戻るのを回避することだ。

 このために政府や金融当局はデフレ回避の姿勢がわかるような強いメッセージを出すことだ。

 2つ目は、今回の危機が「資本」の毀損に及ぶ可能性があることを踏まえ、資本対策に向けた支援の仕組みを早急に作ることだ。

 日本銀行をはじめ各国中央銀行は量的緩和策の強化などを打ち出しているが、今の事態は量的な「マネー」拡大の次元で済む問題ではないことを認識する必要がある。

 まずは、「ナイトの不確実性」に伴う不安定な動きが続く市場対策として資産デフレへの対応強化を、そして消費などが落ち込んでいる実体経済への対応として、中小企業を対象に「資本」を補う対応をすることがポイントだ。

資産デフレ回避に強いメッセージを
「ナイトの不確実性」に対応した政府機能

「ナイトの不確実性」とは確率分布もわからないお化けが飛び出すような恐怖を指す。

 市場への対応でまず行うべきは、売りが売りを呼ぶ増幅作用で恐慌のように正常な市場機能が崩れる状況になるのを遮断することだ。

 こうした危機対応では「deep pocket」(十分な懐) を持つ政府がいったんリスクを抱え込むことが重要になる。

 例えれば、個別のディーラーのリスクをチーフディーラーがいったん引き取ってリスク判断などをやり直せば新たな動きにつながるようなことだ。

 振り返れば、2012年末の第2次安倍政権発足後の7年余りのアベノミクスの好循環は、バブル崩壊後の平成の「冬の時代」の象徴だった2つの要因、「超円高と株・不動産の資産デフレ」よる悪循環を断ち切ったことから生まれた。

 黒田日銀の異次元緩和の本質もそこにあった。政府や金融当局は「脱デフレ」を掲げた対応を行ってきたが、その本質は、消費者物価などのフローの物価指数よりも資産市場を安定させることに意義があった。

 資産デフレのもとで、企業は「持たない経営」、つまりバランスシートの資産・負債を圧縮する縮小均衡の経営を行ない、そのことがデフレを深刻化させ、また金融仲介機能の弱体化や信用収縮を招くことになった。

 また、超円高が進むなか、企業は人件費も含めたリストラを続けたから消費も伸びず経済活動は停滞した。

 アベノミクスはその悪循環に対し超金融緩和を中心とした対応で円安・株高に流れを変え、さらに輸出や設備投資増などの好循環を実現させた。

 しかし、今回のコロナショックはこれまでの成果を振り出しに戻してしまう可能性がある。

日銀はETF・REIT購入拡大を
リスクプレミアム拡大を断ち切れ

 こうした危機に対しては、政府が断固とした姿勢を示し、資産デフレに戻ることはないとのメッセージを発することが市場対策として重要になる。

 同時に、日銀も広い意味で「物価の安定」の大前提が崩れるリスクを意識して断固たる姿勢を示す必要がある。

 そうした観点からは、株式市場でのリスクプレミアム拡大を抑制するETFの買い切り増や、REIT市場でのリスクプレミアム急拡大を断ち切るREIT買い切りの一層の拡大は重要である。

 とりわけREIT市場は決算前の減損回避や現金化に伴って極端な下落にあっただけに一層の対応の必要がある。

「コロナ版ディスインターミディエーション」
中小企業の「資本毀損」対策必要

 今回、新型コロナウイルスの感染拡大で起きている現象は、さまざまな人の行き来の断絶と、人との接触や会合が広範囲にわたり抑制され経済活動が低下していることにある。

 その結果、市場メカニズムが断絶され、さまざまな仲介機能が損なわれる「コロナ版ディスインターミディエーション」が起きる恐れがある。

 消費や生産の落ち込みや所得減といった直接的な経済損失に加え、「ヒト・モノ・コト」などの交流が断絶し、仲介機能喪失による副作用、さらにそれが信用連鎖につながることが経済全体に大きな影響を及ぼす。

 例えれば、感染防止の「手術」のために、あえて体に「麻酔」をかけ生体反応を止める劇薬を処方しているに等しい。

 特に、緊急事態宣言などで経済活動の自粛が要請されればなおさらである。そうした状況を直視したうえで、「人工的」蘇生装置を同時に用意する必要がある。

 現状は、特に中小企業からの悲鳴は、飲食など対面業務を中心とした業種での売り上げ減少であり、議論されている対策も、そうした企業への緊急融資や流動性対策、さらには金利減免、納税猶予といった一連の支払い猶予措置だ。

 だが今の状況が続くことは、中小企業などの売り上げを消失させる効果を持つ。さらに一定のマージンを掛け合わせることで本来得られる利潤がマイナスになることで「資本」の毀損につながる。

 救済策として、売り上げの減少に伴う分を直接給付するやり方も選択肢として存在する。例えば、観光業であれば宿泊クーポンなどの対応で、そうした対策を工夫する余地はある。また、補助金の形でサポートを行うことも考えられる。

 海外では政府の要請で業務を休止した事業者へ休業補償金の支払いも行われている。

 ただし、すべての産業に個別に売り上げ支援を行うのは容易ではない。

 金融庁は金融円滑化法の実質復活を表明し、日銀や政府系金融機関も資金繰り支援策の実施や政策融資を拡大している。

 そうした対応は今後も必要だが、筆者が提言するのは、金融機能を活用した資本支援にあり、コロナショックで一時的に資本不足になる企業に対して金融機関が資本性資金をあまねく企業に供給することだ。

 従来、多くの金融機関は「疑似資本」(融資ではあるが資本性を帯びた融資)を供給してきたが、そうした性格を強めるとともに、さらに資本性資金供給を進めるべきだ。

金融機関経由で資本供給できる体制を
政府ファンドで出資や保証

 ただ金融機関もこうした環境で資本性資金を供給することは大きなリスクを伴う。そこで政府が大きな規模でのファンド(例えば10兆円以上)を設定し、そこに政府保証を付けることで、コロナショック対応の資本性資金の供給を政府が支援するスキームが考えられていい。

 その財源は出資国債のように必要になった段階で財政支出を行うこともある。ファンドを活用し、政府系金融機関を通じた出資枠設定や、その枠内で各金融機関が政府系金融機関を通じ代理貸しや代理出資を行うやり方もある。

 全国の金融機関の金融仲介機能を活用した資本注入が最も効率的なものになると考えられ、こうしたときほど、金融機関の「目利き力」も問われる。

 こうして全国の金融機関が企業を資本面からサポートする体制を作り上げることだ。

重要なグローバルな協調体制
2020年度を「コロナ戦争」と位置付け

 コロナ問題の特性がグローバル化の影の部分がもたらすパンデミック(感染)とすれば、その対応もグローバルで行われる必要があり、各国が協調して対応しているのを見せることが重要だ。

 グローバルな協力体制は第一歩が踏み出されたが、まだ、道のりは長い。象徴的には財政の対応だ。

 米国が2兆ドル対策をすでに決めたが、米国の対応は、今後、主要国が世界のGDPの1割以上の規模の対策を打ち出していく起点となる。

 まず、世界規模で市場の混乱を封じ込め、資産デフレに陥ることを防ぎ、そして、政府が「ラストマン」としてリスクを抱えるべく「資本」を拠出することだ。

 それは、事実上の一時国有化に近い姿でもあり、国家が企業を支える意思表示にもつながる。

 また今回の対策は「経済的な打撃」に対するものでもある。従って、個人に向けた現金支給などの対策も選択肢に入る。また、売り上げ減を補う補助金の支給も重要だ。特に、急に失業した人へ支援策は急ぐ必要がある。

 ただし、こうした対策がすぐに消費拡大につながると考えるのも早計だ。人々に外出自粛を求めるなど、経済活動に「麻酔」をかけるような状況では、活発な消費拡大は容易でない。

 消費税率引き下げも一定の消費インセンティブになり得るが、そもそも「家に居る」ことが求められる環境では十分な効果が生じにくい。それだけに、まずは企業にとって持続性のある経済環境を維持することであり、そのために資本対策は重要になる。

 金融政策での「マネー」の拡大で流動性の確保はされても、「コロナ版ディスインターミディエーション」では、クレジットの断絶や資本の毀損が本質問題としてある。

 単に、「マネー」の供給にとどまらず、経済・信用機能を維持させる対応が必要になる。

 今回、東京五輪を1年延期しただけに、2020年度全体を見渡して国が全面的にサポートする姿勢を示すことが、企業や個人が先行きに期待を持てることにつながる。

 2020年度を「コロナ戦争」と位置付けた上でのトータルな支援体制をとることが求められる。

(岡三証券グローバルリサーチセンター理事長 高田 創)

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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