BTOパソコンメーカーのサイコムは以前からeスポーツ支援に力を入れており、ストリーマーチームやゲーミングチームの正式スポンサーとなっている。また、それだけでなく、「C4 LAN」などのゲームイベントへの協賛、独自の「PUBG Sycom CUP」開催、会場を借りての交流イベント主催など、数多くの活動を行なっている。
会社として行なう活動なので基本的には広告目的とはなるものの、それ以上に、eスポーツをより一般的なものとして広めたい、支援したいという気持ちの方が強いのだろう。PUBG日本公式リーグ「PUBG JAPAN SERIES」(以下、PJS)で活躍する「CrazyCatsCosmo」(以下、CCC)のスポンサーとなったときも、有名なGrade1(上位リーグ)のチームを選ぶのではなく、Grade2(下位リーグ)に昇格したばかりで知名度もあまり高くないCCCを選んだのが、その証拠ともいえる。
サイコムとCCCとの出会いの話は、昨年のインタビュー記事で詳しく紹介しているので、そちらを参考にして欲しいが、簡単にいえば、CCCの将来性を見越して一緒に成長していきたいという広告よりも支援重視、一人のファンとして支えてみたいといった気持ちの表れだ。
このインタビュー中では触れなかったのだが、マネージャーの佐藤氏が将来の希望のひとつとして語っていたのが「ゲーミングハウス」を構えること。字面だけ見ると仲間が集まってわいわい遊ぶ場所、みたいな印象があるが、実際のところはゲームに特化したシェアハウスだ。チームメンバーで一緒に生活することで、より多く練習時間を確保できるほか、お互いの理解が深まり意思疎通がしやすくなる、というメリットがある。
CCCがこのゲーミングハウスを設置し、メンバー全員が集まれるようになったのが2020年の2月。つまり、PJS Season5の直前となる。そんな出来立てほやほやのゲーミングハウスを見せてもらえるということで、埼玉県の某所を訪ねた。
これが選手達が住んでいるゲーミングハウスだ!
ゲーミングハウスに入ってすぐの感想は、「とにかく広い」というもの。5人が住んでいること、そして練習や試合で使うゲーム用の部屋があることから、それなりに広いとは思っていたが、想像以上の広さに圧倒されてしまった。
簡単な見取り図がCCCのTwichチャンネルにあったので、そちらを参考にさせてもらう。見てわかる通り、1階だけでもゲーム部屋、リビング、ダイニング、キッチン、応接室と大きく5つの部屋がある。
この1階部分は選手たちの共同スペースとなっており、普段の生活やゲーミング活動を行なっている場所だ。まだ引越して間もないこともあって、応接室はガランとしていたものの、リビングやゲーム部屋は環境が整っていた。
最も気になるのがゲーム部屋だろう。PCが設置された4つの机とゲーミングチェアが並んでおり、その見た目はまるで大会会場のような雰囲気がある。それもそのはず、kanarian選手によると、わざわざ小さめの机を用意したうえPCを机の上に置くという、オフライン大会に近い環境を作ったとのことだった。
自宅であればPCを床に置いて机の上を広く使うところだが、環境が大きく変わると普段のパフォーマンスが出せなくなる。PJSはGrade2まではオンライン大会となっているが、Grade1はオフライン大会となるだけに、このギャップを小さくするための工夫なのだろう。Grade1を体験したことがあるからこそといえる。
リビングは選手たちが食事をしたり談笑したり、筋トレ(!?)したりといった自由に使えるスペース。プロジェクターが設置されており、この大画面を使って戦略を練るといった会議をすることもあるという。
応接室はまだ準備が整っていないとのことで、荷物も少なく空いている状態だった。あるのは大きめの机とマッサージチェア程度。来客に開放したり、撮影ルームなどの別用途にも使えそうだ。
もうひとつの大きな部屋となるのがダイニングとキッチン。CCCはPUBG以外の動画も配信しており、そのコンテンツのひとつとなっているのがマネージャー佐藤氏による料理配信だ。この配信が、ゲーミングハウスのキッチンから行われている。
共同生活だが食事は当番制とかではなく、主にマネージャーの仕事のひとつ。もちろん選手たちにも手伝ってもらいながら用意している。
ありがたいのが、この料理配信を見た視聴者が支援してくれることだという。5人のご飯を用意するのにその炊飯器では小さいだろうと大きな炊飯器を送ってくれたり、大きな鍋を送ってくれたり、お米、水、カップ麺などの食料品を送ってくれたりと、その内容は様々だ。
2階は選手たちの部屋。部屋は5部屋あるものの、2部屋は物置となっていて空室状態。現在の部屋割りは、佐藤氏、kanarian選手&morimori選手、coolit選手&kamitas選手という3部屋になっている。
こんな感じのゲーミングハウスだが、物件探しは難航したという。空き家ならどこでもいいというわけにはいかず、5人が住める広さがあること、配信に伴う騒音が問題とならないこと、電車で1時間以内にオフライン会場へと行けることを必須条件として、東京都内だけでなく、近郊エリアまで範囲を広げて探し回ったそうだ。
最後まで悩んだのが北千住の物件だが、条件は悪くなかったものの広さがネックとなり断念。また一から物件探しかとなったときに、たまたま埼玉県内で見つけたのが今の場所。先に挙げた条件すべてをクリアしていたのはもちろんだが、広さといい環境といい、むしろこれ以上を探すのが難しいくらいの優良物件に巡り合えたという。
選手たちにゲーミングハウスの感想を聞いてみたのだが、「ゲーム環境が大きく向上した」「知らない街の散歩が楽しく、運動するようになった」「顔を見て話ができるので、声だけのやり取りではわからない部分もわかる」「チームメイトとの距離が近くなった」「話さなくても伝わる部分がある」「家が広くていい!」などなど、出てくるのはポジティブな意見ばかり。
本当に不満がないか、1人ずつ聞くという意地悪な方法で質問をしたのだが、「PCだけでなく、デバイス関係も充実させたい」(kamitas選手)、「慣れない環境で体調を崩しやすく、練習時間が減っている」(coolit選手)、「大学までの距離が10分から1時間になった」(morimori選手)、「ファンをもっと増やしたい」(kanarian選手)、「お風呂を出たら電気は消して欲しい」(佐藤氏)といったように、ほとんどが個人的な問題、もしくは今後の課題といったもので、大きな不満らしい不満は本当にないようだった。
もちろん、集団生活ゆえのストレスなどは少なからずあるだろうが、ケンカもなく、うまく回っているように感じた。これも、顔を見て直接話ができることにより、お互いの理解が深まった結果だろう。