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東京オリンピックは「今年10~11月開催」と推測する根拠

2020年03月19日 06時00分更新

文● 小林信也(ダイヤモンド・オンライン

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Photo:Carl Court/gettyimages

ギリシャでは聖火リレーも中止
代表選手の4割超が未定の現状

 トランプ大統領の発言から、東京オリンピックの「延期」が急浮上したのも束の間。G7後の会見で安倍首相が「人類が新型コロナウイルスに打ち勝つ証として、東京オリンピック・パラリンピックを完全な形で実現するということについて、G7の支持を得た」と語ったことでまた一転、「予定通りの開催」が本命に舞い戻った。しかし、開催時期を明言しなかったため、「延期を示唆したも同然」との見方も広がった。

 現実的に、開会式が予定されている7月24日に世界的な感染状況が終息しているとは現時点では想像しにくい。いま次々とアメリカ、ヨーロッパで緊急事態宣言が出され、主要都市で外出禁止などの厳しい措置がとられている。

 この状況で「オリンピックは予定通り実施する」と言い張っているIOCや日本政府は、「世界に希望を与える」というより、その見識を疑われていないか心配だ。実際、ギリシャで強行された聖火の採火式も、ギリシャ国内の聖火リレーがすぐに中止されるなど、日本政府の思惑とは対照的な現実に直面している。

 4、5、6月の各種国際大会の中止や延期も続々と決まっている。オリンピック代表選考会の日程変更も続発し、代表選手の4割以上がまだ決まっていない。強化合宿や強化試合もほぼすべてキャンセルされている。スポーツの現状はすでに「完全」ではない。

 仮に日本が感染のピークを越え、安全を確保できたにしても、ヨーロッパ、アメリカ、さらには今後感染が心配されるアフリカなどまでが、7月にオリンピック出場のため国を離れ、日本もこれを受け入れる状況になるだろうか。各メディアの世論調査でも、あと4カ月では足りないと、多くの人が感じている。

 そこで「1年延期」「2年延期」といった案が浮上しているが、G7後の安倍首相の発言、IOC臨時理事会後のバッハ会長の発言によれば、彼らは「7月24日開幕」の姿勢を崩していない。これらを総合的に分析すれば、「延期にしても、大幅な延期は想定していない」と読み取れる。その結果、私は「今年の秋か暮れに開催」といった可能性が最も高く、望まれる方向性ではないかと感じるようになった。

秋開催は延期ではなく「日程変更」
1、2年後よりリスクが低い理由

「7月開催は無理だ」と5月24日の段階で判断せざるを得なくなったら、IOCは、その時点での世界的感染状況とその後の予測を専門家から聞き、いつなら可能かを判断するだろう。

 延期の時期は、できるだけ間が開かない方がいい、と考えているのではないか。

 元JOC参与の春日良一さんによれば、「年内なら、オリンピック憲章にない『延期』ではなく、『日程変更』という解釈になる」という。つまり、規則上の障害は小さい。

 もし1年後に延期になると、選手によってはピークを過ぎ、肉体的に競技続行が難しくなるケースも少なくないだろう。しかし、3カ月の延期ならその影響は1年よりは小さい。7月開幕の場合と、選手団の顔ぶれはほぼ同じメンバーで実施できるだろう。これが選手たちに対する最大限の敬意と誠意になると私は考える。

 2年後となれば、選手の多くは入れ替わる。完全に別のオリンピックになって、今年の出場を決めていた多くの選手には取り返せない打撃になる。

 施設などの調整においても、1年後、2年後、間が開けば開くほど犠牲や出費がかさむ。通常なら、秋への変更は時間がなくて厳しいが、いまはコロナウイルスの影響で、秋のスポーツスケジュールやホテルなどの宿泊予約も白紙に近い状況になっている。いまならリセットも、比較的しやすいのではないだろうか。

 例えば10月末、プロ野球は通常ならポスト・シーズン。クライマックス・シリーズから日本シリーズへと向かう時期だが、今年は開幕が延期され、全面的な日程の見直しを迫られている。だから、その時期でのオリンピックとの共存共栄も模索できるはずだ。

 10月、11月となれば、アメリカ、ヨーロッパの人気プロスポーツのシーズンと重なる。IOCの収入の約半分を占めるアメリカNBCの放映権料との調整は必要だが、IOCとNBCは2014年から2032年までの10大会に及ぶ長期契約。その間の1大会がイレギュラーな形になったとしても、互いに歩み寄りを図るのではないだろうか。

 もし世界的な新型コロナウイルスの感染状況が7月にピークを越え、制圧と呼べるような状況が訪れたら、10月に安倍首相が言った通り、「人類が新型コロナウイルスに勝った証として」オリンピックという祝祭を開く。そして、それを国内外が歓迎し、一体感を醸成できる可能性はある。

 来年の夏では間が空くし、さまざまな調整に苦しむだろう。

 もし10月から11月に開催すれば、奇しくも、真夏の猛暑を回避できる。本当の意味で、「その時期の東京は温暖で、スポーツをする、見る環境が整っている」ことにもなる。

 では、マラソンは札幌と東京のどちらで行うのか。そんな新たな心配事も浮上はするが、中止や強行よりは、選手からも、犠牲と協力を求められるあらゆる人たちからも、よほど多くの支持を得られるように思う。

(作家・スポーツライター 小林信也)

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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