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コロナによる公共事業の工事中止、国が認めてもわずか「2%」の理由

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土木工事が多い公共工事は、人口が密集している都市部よりも周囲が開けた郊外や地方での仕事が中心 Photo:PIXTA

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、国は公共工事について3月15日までの約2週間、一時中止や工期延期を認めた。受注者からの措置申し出件数は、施工現場を抱える“工事畑”、設計や測量の“業務畑”の間で鮮明な差が生じた。(ダイヤモンド編集部 松野友美)

 3月上旬、建設コンサルタント大手であるパシフィックコンサルタンツの代表電話番号に電話をかけると、「従業員のオフィスへの出社を原則禁止し、3月15日まで在宅勤務としております」と自動アナウンスが流れ、用件を電子メールで連絡するよう促す案内が続いた。

 片や、「感染者が出たわけでもないのに、工事を止める理由がどこにあるのか」とゼネコン幹部。ゼネコン・建設業者は現場の感染対策を講じつつも、総じて通常モード。期末の追い込みが続いている。

 新型コロナウイルスへの対応について、建設業界の判断は、建設コンサルタントらの“業務畑”とゼネコン、中小建設業者らの“工事畑”で鮮明に差が生じた。

 赤羽一嘉国土交通大臣は2月28日、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、国の公共工事を3月15日までの約2週間、一時中止することを認める方針を明らかにした。

 国が直轄する公共工事を一時中止したり、工期を延長したりすることを認めるもので、異例の措置だ。そのためにかかる建設機械のリース料や人件費などの増加分は発注者である国が適切に負担するという。

 対象となるのは道路や河川といったもの。「工事」が約9000件、工事前段階の調査や設計、測量といった「業務」が約1万2000件に及ぶ。

 といっても、判断は受注者に委ね、申し出があった場合に一時中止や工期延長の措置が取られ、一律に全ての工事や業務が止まるわけではない。

 では、実際にはどれだけの申し出があったのか。

 国土交通省では一時中止等を求めるか否か、受注者の意向確認を進めてきた。3月9日時点で一時中止等の申し出たのは、工事で約200件、業務では約1200件。

 つまり、工事は全体のわずか2%しか申し出がなかった。対して業務は10%が一時中止等に踏み切った。ずいぶんな差である。

建設コンサルは
全従業員の出社禁止も

 一部の工事現場で感染者も出ているが、「土木工事は密閉空間ではないところが多いから大丈夫」(ゼネコン関係者)と、全国の工事現場はその大半が中止になることはなかった。

 3月は発注者側の年度末の予算消化のタイミングであり、一年で最も仕事が集中する時期だ。

 受注したゼネコンにすれば、工事を中断してしまうと、確保していた下請けの職人たちが他の工事に流れていってしまう。すると、工事を再開しようにも人手が確保できなくなる恐れがある。

 職人としても、できるだけ休みたくないのが大勢の本音だ。

 日当制の給与体系が残る建設業界では、予定した仕事がなくなるとすぐに収入減に直結する。中小建設業者も年度内を予定していた完工時期がずれて3月に売り上げが計上できなくなるのは、経営への打撃となる。

 国は、自治体にも国の措置を参考にするよう通知したが、財政の苦しい自治体が増加分を負担してくれるかどうかは怪しい。工事畑は、大局的な感染への対応よりも、目の前の仕事が進まないことへの危機感が先に立っているのだ。

 各業界で一斉に広がっている「テレワーク」なぞ、工事の現場に立って初めて金が生まれる職人にとっては、別の世界の話だ。予定していた現場が一時中止となったところで、自宅待機では食っていけない。中断の話が上がらない民間工事なり、別現場を引き受けるだけだ。

 対して、工事前の調査や設計、測量などを受注する業務畑の建設コンサルタント業界は、大手を中心に一時中止や工期延長を申し出ることにちゅうちょがなかった。今回の措置を活用しながら、大手は3月15日まで軒並みテレワークを実施。全従業員を対象に出社を原則禁止にするところもあった。

 彼ら業務畑は、期末の3月は現場作業などを終えて会議や報告書作成の取りまとめなどの案件が多く、それらは関係者によるウェブ会議や在宅勤務でのデスク業務でこなせるものが多い。

 工事現場ほど下請けの奪い合いが起きる環境下ではなく、売り上げが立つ時期がずれることを受け入れられれば、延長措置を判断しやすかったのである。

 工事畑と業務畑のどちらも現場作業を中心としたブルーカラーの仕事、デスクワークを中心としたホワイトカラーの仕事を併せ持つが、3月期末のタイミングで工事畑はブルーカラーの論理で、業務畑はホワイトカラーの論理で一時中止等の判断が下されたと受け止められる。

 この差は建設業界に限らない日本の労働構造を映したものともいえるだろう。

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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