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森保ジャパン「大混乱」も!?コロナでW杯アジア予選延期の影響を占う

2020年03月12日 06時00分更新

文● 藤江直人(ダイヤモンド・オンライン

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新型コロナの影響でW杯予選も延期に。森保ジャパンの行方は? Photo:Etsuo Hara/gettyimages

世界中へ拡大している新型コロナウイルスの影響を受けて、今月末に2試合が予定されていた日本代表のワールドカップ・アジア2次予選の開催延期が決まった。日本サッカー協会(JFA)は、合宿などを含めたいっさいの活動を行わない方針を表明。6月シリーズの開催も不透明な状況の中で、活動の全面的な休止という過去に例のない事態は、今後のアジア予選や2022年11月に中東カタールで開催される次回ワールドカップにどのような影響を及ぼすのだろうか。(ノンフィクションライター 藤江直人)

3月と6月のW杯予選が延期に
日本代表も活動中止へ

 日本代表のスケジュールが真っ白になる。拡大の一途をたどる新型コロナウイルスの影響を受けて、3月と6月に予定されていたワールドカップ・アジア2次予選計64試合が原則延期されることが、9日に国際サッカー連盟(FIFA)とアジアサッカー連盟(AFC)との間で合意に達したからだ。

 原則延期とされたのは、安全面の基準が満たされていると対戦国間で確認された上で、FIFAとAFCの承認を受ければ開催が可能となるからだ。日本サッカー協会(JFA)が3月および6月に対戦する4カ国のサッカー協会との調整に入った中で、3月分に関しては11日に延期が正式決定した。

 日本代表は3月26日に愛知・豊田スタジアムでミャンマー代表と、同31日に敵地ウランバートルでモンゴル代表と対戦するスケジュールが組まれていた。しかし、日本国内では開幕節を終えたJリーグだけでなく、開幕を控えていたプロ野球も4月に延期されることが決まっている。

 加えて、新型コロナウイルスの発生源となった中国との国境を1月下旬に封鎖しているモンゴルは、2月28日からは過去14日以内に日本、韓国、イタリアに滞在歴のある外国人に対しても入国禁止とビザの発給を停止する措置を開始。日本代表チームの入国は事実上、不可能な状態になっていた。

 一連の情勢を受けて、JFAの田嶋幸三会長は「日程を動かそうと思えば、というところがあるので、私たちから提案したい」と先月下旬の段階で開催延期を支持。FIFAとAFCの合意を受けて、JFAの関塚隆技術委員長もJFAを通じてこんなコメントを発表していた。

「延期が決定された場合は、3月の日本代表の活動は中止することになります」

 キャプテンのDF吉田麻也(サンプドリア)、東京五輪世代でもあるDF冨安健洋(ボローニャ)がプレーするイタリアでは、国内全土で移動制限が発動された。日本人選手が多くプレーするヨーロッパでも急激に感染が拡大している状況を考えれば、活動休止はやむを得ない判断となる。3月の2試合の延期決定を受けて、森保一監督もJFAを通じてこんなコメントを発表している。

「今は世界的に広がるこの状況が一刻も早く収束することが重要で、安心して観戦できる、選手たちが心置きなくプレーに集中できる環境が戻ってくることが一番だと思っています。試合が延期となっても我々の目指す場所、やるべきことは変わりません。今できることをしっかりと行い、その時を待ちたいと思います」

「地震」「戦争」「SARS」で
過去には中止・延期になったケースも

 過去にも日本代表戦が中止となった例はある。直近では森保ジャパンの初陣として、2018年9月7日に札幌ドームで予定されていたチリ代表とのキリンチャレンジカップ2018が直前に発生した、最大震度7が計測された北海道胆振東部地震の影響を受けて中止となっている。

 日本代表はすでに札幌入りし、ヨーロッパ組も順次合流した上で練習も消化していた。森保一監督は犠牲者の冥福を祈り、行方不明者の生存が確認され、被災者の生活が一刻も早く日常に戻ってほしいという思いを込めながら、まさかの状況に「残念です」と慎重に言葉を紡いでいる。

「もちろん試合はやりたい。選手もそのために準備してきたし、海外組も遠くから来てくれたけど、こればかりは自分たちでコントロールできる問題ではないので。自然災害には太刀打ちできないし、こういう想定外のことも受け入れながら、与えられた環境の中でベストを尽くして次につなげたい」

 2011年3月下旬に予定されていたモンテネグロ、ニュージーランド両代表との国際親善試合は、東日本大震災の発生を受けて中止となった。JFAとJリーグは会場を関西に移し、アルベルト・ザッケローニ監督に率いられる日本代表とJリーグ選抜が対戦するチャリティーマッチを開催している。

 形の上では練習試合となり、海外クラブに所属する選手たちを拘束する権利をJFAは持っていなかった。それでも長谷部誠や本田圭佑ら全員が集結。Jリーグ選抜の一員として出場して日本中を勇気づけるゴールを決めて、十八番のダンスまで披露したFW三浦知良はこんな言葉を残している。

「(ダンスに関しては)ちょっと迷いましたけど、気分が暗くなってはいけないと思って。ゴールもそうですけど、ゴールを決めた後のダンスを介して、微力ながら日本中を明るくできたらいいな、と」

 ジーコ監督に率いられていた2003年も大混乱に見舞われた。3月下旬に予定されていたアメリカ遠征は、イラク戦争の勃発を受けて出発直前で急きょ中止となった。イラクへの軍事侵攻を主導したのがアメリカだったことで、テロを含めた不測の事態を憂慮した末の決断だった。

 このときはアメリカ遠征中に対戦する予定だったウルグアイ代表が急きょ来日。3月28日に旧国立競技場で国際親善試合を開催することにこぎ着けた。しかし、5月下旬になると、中国を発生源として北半球に広まっていた重傷急性呼吸器症候群(SARS)の直撃を受ける。

 日本、韓国、香港、そして中国代表が集い、5月28日から6月3日まで横浜で開催される予定だった東アジアサッカー選手権(現EAFF E-1サッカー選手権)は急きょ12月に延期。JFAは大韓サッカー協会(KFA)と協議を重ね、5月31日に旧国立競技場で日韓戦を実施した。

 さらに続けて開催されたキリンカップで、アルゼンチン代表とともに来日するはずだったポルトガル代表が、SARSの感染拡大を理由に参加を固辞。JFAはパラグアイサッカー協会に急きょ代替出場を打診し、6月11日に埼玉スタジアムでパラグアイ代表戦を実現させている。

延期で日程的には余裕があっても
再編にはギリギリのタイミングに

 これまでのケースと決定的に異なるのは、ウイルスという見えない敵の脅威にさらされた状況下で、日本代表の活動予定そのものが白紙となることだ。北海道胆振東部地震の時はチリ戦こそ中止となったが、森保ジャパンは復旧した新千歳空港から空路大阪に入り、コスタリカ代表とのキリンチャレンジカップ2018へ予定通り臨んでいる。

 4日にタジキスタン代表戦(ノエビアスタジアム神戸)が、9日にはキルギス代表戦(パナソニックスタジアム吹田)が組まれている6月シリーズに関しては、新型コロナウイルスを取り巻く今後の状況次第となる。再び延期となった場合、日本代表にどのような影響を及ぼすのか。

 ワールドカップ予選をはじめとする公式戦を含めて、代表チームの活動は原則として国際Aマッチデー(IMD)に行われる。各国サッカー協会が海外クラブに所属する選手を拘束する権利を持ち、なおかつトップカテゴリーのリーグ戦、日本ならばJ1が一定期間中断されるからだ。

 IMDはFIFAによって定められていて、現状では毎年3月、6月、9月、10月、11月に設定されている。各代表チームは一度のIMDで最大2試合を同じ大陸内、という条件の下で戦える。2013年までは2月と8月にもIMDが設定されていたが、選手たちに負担がかかり過ぎるとして廃止された。

 つまり、3月と6月に予定されていたワールドカップ・アジア2次予選が延期された場合、それぞれ9月と10月のIMDにずれ込む形になる。同時に9月からスタートするはずだったアジア3次予選の開幕も11月のIMDにずれ込み、2021年のIMDへと展開されていく。

 アジア2次予選は40カ国を8つのグループに分けて開催されていて、各グループの1位と、2位の8カ国のうち成績上位の4カ国の計12カ国が3次予選に進出する。グループFに入っている森保ジャパンは4戦全勝の首位で、昨年9月にスタートした2次予選を折り返している。

 3次予選のフォーマットもすでに決まっていて、12カ国を2つのグループに分けて、ホーム&アウェイ方式による2回戦総当たりのリーグ戦を実施。両グループの上位2位までの計4カ国が、カタール行きの切符を獲得する。つまり、各国あたり10試合、5度のIMDで日程を消化できる計算となる。

 一方で原案が固められている3次予選のスケジュールを見ると、今年9月から来年10月まで、7度のIMDにまたがって組まれている。今年10月と来年6月、9月、10月のIMDがそれぞれ1試合の開催となり、各国が強化プランに則って国際親善試合を組めるように配慮されているからだ。

 このうち来年のIMDでアジア3次予選をすべて2試合ずつ組んでいけば、今年11月にずれ込む形で3次予選をスタートさせても、予定通り来年10月で終えられる計算になる。JFAの田嶋会長が「日程を動かそうと思えば――」と発言したのも、こうした事情を受けてのものだろう。

 カタールで開催される次回のワールドカップは酷暑の時期を避けて、通常は5月末から6月中旬だった開幕が11月21日になっている。半年ほど前に組み合わせ抽選会が行われてきた過去の歴史を考えれば、2022年3月のIMDまでに、全大陸で予選を終えている状況が望ましいことになる。

 アジア大陸の場合、3次予選の3位同士がアジア4次予選に臨み、勝者が大陸間プレーオフに臨む。南米や北中米カリブ海など、どの大陸とプレーオフを実施するのかは現時点で未定だが、ともにホーム&アウェイで行われると仮定すれば、来年11月と2022年3月の2つのIMDが必要になる。

 つまり、現状では日程的に余裕はあっても、再編するにはギリギリの状態ということになる。新型コロナウイルスの終息がさらに長引けば、3次予選の開催方式をホーム&アウェイから、中立地における集中開催に切り替えられる可能性もゼロではない。その場合は大混乱が避けられないだろう。

 肝心の森保ジャパンの軌跡を振り返れば、2019年に入ってからは低調な内容に終始する試合が多かった。強敵ばかりが待っている3次予選突破へ向けて、選手選考や強化策を含めて一度リセットし、悪い流れを好転させる時間が得られると、今はポジティブに受け止めるしかない。

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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