●ネーミング「Apple Book」が妥当か
このモデルが投入されることで潤いそうなのが教育市場です。iPadは初等教育でテクノロジーを活用した、アウトプット重視の授業形態には非常に向いた製品です。音声やビデオを用いたレポート作りは、性能が良いカメラを備えるiPadならではの学習活動といえます。
しかし学年が上がっていくにつれ、より長い文章のレポートを書いたり、プログラミングも実際のコードを書くようになるなど、キーボードが前提になっていきます。もちろんiPadもカバーを兼ねるSmartKeyboardが存在していますし使いにくくもないですが、モノの形は重要。より本格的なタイピングに対応するデザインが与えられるべきです。
そこでARMベースながらmacOSを前提とするキーボードを備えたデバイスを登場させることで、Xcodeによるプログラミングに対応し、アップルが考えるiPadからステップアップしていく教育市場への対応にもぴったりです。
ただし、名前がMacのままだと、タッチ対応は前述の融合しないとの宣言を曲げてしまうような気がする……。そこで、かねてから指摘してきた「iBook」という便利な製品名を使うんじゃないか、と考えているのです。
これなら、macOSで動作していても「Mac」ではないので、 「Macがタッチ対応するわけじゃない」と言い張ることができますし、Apple自社開発のチップを使っているiPhone、iPadとの整合性も取れます。
しかし、ブランディングの面で、「iBook」にも疑問が残ります。iPad以来、「i」を冠するプロダクトを登場させていないのです。スマートウォッチもiWatchではなくApple Watchでしたし、Apple PencilもiPencilではなかった。
そう考えると「Apple Book」が、現在のアップルのブランド戦略からして、妥当なのかもしれません。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
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