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風変わりなユーズドデニムにお客殺到、尾道発の地場産業「復活」物語

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尾道の様々な職業の人にデニムをはいてもらい、ユーズドとして販売。そんなユニークなショップが全国のデニム好きの注目を集めている。プロジェクトの背景には、伝統の地場産業を多くの人に知ってもらい、日本のデニムの良さを発信したいという思いがある。

風変わりなデニムショップに
全国からお客が来る

尾道デニムプロジェクトは、尾道で働く様々な職業の人がボランティアとして参加。1年間はいて、味わいあるユーズドデニムにしていく

 広島県尾道市は、瀬戸内海に面した歴史ある町。文化庁の日本遺産にも登録され、観光地として人気を集めている。

 商店街にある一軒の店舗。中に入るとはき古したジーンズが並んでおり、他には何も見当たらない。風変わりなショップだ。ところが、この店には全国から次々とお客さんがやってくる。

 実はここ、「尾道デニムプロジェクト」というユニークな試みの拠点なのである。いったいどんなプロジェクトなのだろうか。

「デニム(ジーンズ)を尾道のいろいろな職業の人に1年間はいてもらい、それをショップで販売しているのです」(尾道デニムプロジェクトを運営する株式会社ディスカバーリンクせとうち・綿吉杏さん、以下同)

 具体的には、尾道で働く人たちに1人2本のデニムを無償で提供。1本目を仕事の際にはいてもらい、1週間たったらスタッフが引き取って専門の工場で洗濯をする。その際、もう1本を渡して、また1週間はいてもらう。これを1年間、毎週繰り返していく。そうすると、味わいのあるユーズドデニムになるというわけだ。

「参加してくださる方は、尾道で働かれているボランティアさんです。職業は様々で、住職、農家、漁師、繊維業、大工、左官、学生、保育士など多彩です。仕事着としてはいてもらうので、使い込むうちに風合いが違ってきて面白いんです。例えば、鉄工所で働く方はしゃがんで作業するため、デニムにしわができて色の濃淡がはっきり出ます。作業に使う鉄粉が付いており、それもまた個性になるんです。ほどよい色落ち感もあるので人気が高いんですよ」

 2013年に始まったこのプロジェクト、現在は約100名が参加中である。20代から70代まで幅広い層が参加しており、ショップで売れても販売代金は受け取らない。全員が無償のボランティアとして、日々デニムをはき続けている。

「スタートした当初は100名ぐらい集まってもらえれば、と考えていましたが、この企画に賛同してくれる人がどんどん増えてきまして、最終的には1年で270人、540本のデニムを販売することができました」

 これまでに制作したデニムは1000本近いという。

はいた人のストーリーが
お客をひきつける

スタッフの綿吉杏さん。参加者がはいたデニムを回収する際、個々のストーリーをていねいに聞き取ってお客さんに伝えている

 なぜ、こんなユニークな活動を始めたのだろうか。そこには尾道の歴史が大きく関わっている。

 尾道のある備後地方(広島県東部)は、あまり知られていないが国内でも有数のデニム製造が盛んな地域である。古くから良質の綿を栽培しており、それを使った備後絣(かすり)が伝統産業として地域を潤してきた。しかし、時代とともに絣の需要が減少する中、それまでに培われた染色技術などを生かし、世界的に有名なブランドにも生地を提供するようになっていく。そして、ハイクオリティなデニムの産地となったのである。

「日本のデニムの良さを知ってもらいたい。地域の伝統産業を新たな形で発信していきたいと願い、このプロジェクトを始めました。デニムは他の服と違って、使い込んだ味わいが価値になっていきます。スタッフは、デニムを回収してまわる際、はいた方から様々なエピソードをお聞きします。どんな作業なのか、どれくらいの頻度ではいているのか…、そして接客の際にはいた方のストーリーを細かくお客様にお伝えしていきます。ですから興味を持ってくださる方が多いのです」

 価格は、2万6800円から4万8000円まで(税抜)。色落ち感、ダメージ、風合いなどを確認し、7段階に分類して値付けをしていく。タグには、はいた人の職業が明記されており、一目で分かるようになっている。

 ちなみに、デニムのルーツは作業着。アメリカの炭坑労働者がはいたのが始まりとされている。尾道デニムもこの歴史を受け継ぎ、「労働の証」として全国に名を広めている。

 尾道デニムプロジェクトは、人気が高まってきたにもかかわらず、他の町には出店していない。ネット販売も行ってない。それは「ぜひとも尾道を訪れてほしい」、そんな願いからである。

 一方、尾道の市民にも変化が表れている。

「製造者、はいたボランティアさん、購入したお客さんが集まるイベントを定期的に開催しています。それまで接点のなかった人たちが、デニムによってつながり、交流の輪が生まれているんです。自分が購入したデニムをはいていた方と対面して、感激する方もいらっしゃいます。そういう場面に立ち会えるのは、私たちスタッフにとっても嬉しい瞬間です」

市外や県外の人も
参加が可能に

 このプロジェクトが全国に知れ渡るようになり、市外や県外からも参加したいという声が集まるようになった。そこで新たな展開として、尾道市民以外でも参加できる制度が新設された。新品のデニムと一緒にプロジェクト参加権を購入すれば、デニムを送ってもらえるので、それを作業時にはいていく。店舗に送り返して、委託販売ができるようになっている。興味のある方は、エントリーしてみてはいかがだろうか。

 店舗展開はしていないが、時折、ポップアップを開催している。2月22日から24日に大阪・八尾市で、4月1日から7日には大丸東京店で、尾道デニムやオリジナルデニムなどを販売する予定だ。(詳細はHPにて)

 デニムという伝統産業に新しい価値をつけることで再生につなげた尾道デニムプロジェクト。新たな手法の町おこしである。今後の展開に注目していきたい。

(吉田由紀子/5時から作家塾(R))

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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