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米国初のクリスパーによるがん治療、臨床試験の結果は有望

Charlotte Jee

2020年02月09日 13時47分更新

記事提供:MIT Technology Review

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AP

3人の進行がん患者が、クリスパー(CRISPR)で遺伝子編集した免疫細胞の投与を受けた結果、特に深刻な副作用は見られなかったと報告された。クリスパー技術を使った米国初の臨床試験であり、がんにクリスパーを用いた結果の論文が発表されるのは世界で初めてだ。

今回の臨床試験は、治療法を探すというよりは、単にこの技術が安全で実現可能であるかどうかを見定めるのが狙いだ。その点では、試験は成功した。3人の患者は全員60代で、全員が同じタンパク質を作る腫瘍を持ち、他の治療法では効果が無かった。試験では、患者自身のT細胞の遺伝子をクリスパーで編集し、そのタンパク質をより効率よく認識してがん細胞を殺せるようにした。昨年、編集したT細胞をそれぞれの患者に投与したところ、患者の免疫システムに無事組み込まれ、9カ月後も血中に残っていた。臨床試験の結果は、サイエンス(Science)誌に発表された。

1つ懸念されていたのは、クリスパーで編集したT細胞が体内に入った際に免疫反応を引き起こすのではないかということだった。クリスパーの処理過程で使用されたタンパク質がバクテリア由来であるためだ。だが、免疫反応は起こらなかった。もう1つの懸念は、クリスパーによる遺伝子編集がいわゆる「オフターゲット」効果を生み出すのではないかということだった。オフターゲット効果とは、意図しなかった遺伝子が細胞の中で削除されて、がん化するという問題だ。試験ではいくらか変化が見られたものの、特に深刻なものではなかった。

患者たちは、臨床試験中は症状が安定化し、うち1人は腫瘍が小さくなった。しかし、T細胞投与の効果は長く続かなかった。1人が臨床試験後に死亡し、2人はがんが悪化して現在別の治療を受けている。

この臨床試験で使用された方法は時代遅れとなったため、試験の続行はない(遺伝子編集技術は、この研究が承認された2016年以降、目覚ましい進歩を遂げている)。しかし、試験の結果は有望であり、患者の遺伝子を編集する多くの臨床試験への道を切り開くだろう。カリフォルニア大学バークレー校のフィヨドール・ウルノフ教授は、今回の研究には参加していないが、サイエンス誌へ対して、「この分野に付きまとっていた疑問」に答えを与える研究であると語った。

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