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ゼネコンの競合2社、鹿島と竹中が異例の技術共同開発をする理由

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握手する鹿島の伊藤仁常務執行役員(左)と竹中工務店の村上陸太執行役員(右) Photo by Tomomi Matsuno

ゼネコン業界で売上高2位の鹿島と5位の竹中工務店が技術開発で連携する。ロボット施工やIoT(モノのインターネット)化など、建設業が他業界に後れをとるデジタル戦略において、これまで個社ごとに研究していた開発の無駄を省き、開発のスピードをアップさせる狙いがある。(ダイヤモンド編集部 松野友美)

競争相手と組む異例
鹿島と竹中工務店の技術戦略

「寝耳に水だ…」。ゼネコン社員たちが口をそろえた。1月30日に大手ゼネコンの鹿島と竹中工務店が発表したロボット施工やIoT(モノのインターネット)化に関係する技術開発で連携すると聞いてのことだ。建設工事の受注を目指して互いに熾烈な競争を繰り広げている大手同士が、個別の実験ではなく包括的な研究で手を組むのは異例である。

 建設業界は、職人の高齢化と若手の離職、入職者の減少による人手不足に長いこと悩まされてきた。同時に、ICT技術の進歩により他の産業界が一斉にデジタル化に舵を切る中、後塵を拝している状況でもある。デジタル化がなかなか進まないのは、ビルやトンネル、橋など扱う商品のすべてが「一品生産」であるゆえ、平準な業務効率化が難しいからだ。

 鹿島と竹中が手を組むのは、資材の運搬や鉄骨の溶接作業、工事現場の清掃、クレーンの遠隔操作など、どの工事現場でも見かけるような作業を助けるロボットの開発だ。人がやるには危険が伴ったり、作業環境が厳しい動作のほか、反復作業が多いため効率化が期待できる作業、人手不足の解消に繋がる作業が対象になる。受注に際して、決め手となるような“虎の子の技術”ではない。

 それでも実用化のハードルは高い。例えば資材運搬ロボットの場合、指定した場所にロボットが向かい、指示通りに動くようになる開発の“フェーズ1”は達成した。しかし、まだ指示を入力するよりも手で運んだほうが早く、垂直搬送などが次の課題になる。現場の様子が日々変わる中で、最適な動きができるようになるのはこれからだ。

開発が重複する無駄は自覚していた
それでも協業できない大手の事情

 従来、こうした開発でさえ、各社ごとに研究してきた。ただ、竹中工務店の村上陸太執行役員は、「業界のイベントなどで技術者たちが会すると、皆同じような実験をして、同じようなところでつまずいていると分かっていた。重複が無駄なことだと気づいていても、なかなか協業には結びつかないでいた」と振り返る。技術にシリーズ名をつけて、積極的に外販していこうとするところも多く、業界のスタンダードとなるロボットは生まれにくかった。

 ロボットの使い手はゼネコンの協力会社に勤める専門工事の職人たちだ。ゼネコンごとに協力会社のネットワークを持つものの、その結びつきには緩急がある。関係が密接なところでも、他のゼネコンの工事に参加することはよくある。そうなると、どのゼネコンの現場でも使えるロボットでなければ、使いたいとは思えない。各社共通の技術にしたほうがデジタル化や効率化の輪が広がりやすいのだ。

 そんな中で、鹿島と竹中は、2018年4月から自動搬送台車を共同で研究する機会があり、互いに組みやすさを感じていたという。19年12月には互いに人材を出し合ってチームを発足させ、今月には基本合意を結んだ。

 まずは、24年3月までの5年間について共同研究を契約している。24年3月は、働き方改革の一環で残業規制が建設業に適用されるタイミングになるため、開発は急務でもある。中断の申し出がなければ、39年3月まで契約を延長する。両社とも「同業他社が加わるのはウェルカム」と両手を広げてみせた。

 将来、この連携に加わるのであろう面々は、大林組、清水建設、大成建設ら大手3社と、準大手、中堅ゼネコンのほか、スタートアップ企業やロボット開発に欠かせないセンサー部品メーカーなど他業界にも及ぶ。鹿島の伊藤仁常務執行役員は、「シリコンバレーで技術を探したり、国内でもすでに研究で提携している会社はある。それでもまだ掴めていない企業もあるだろう。可能な限り探していきたい」と意欲を語る。

 研究は個別テーマ毎に分科会を設け、技術者のチームを複数作る。つまり、技術開発の人材を割ける組織的な余裕がある企業でないと実際に参加するのは難しそうだ。ベンチャーなど、少人数であっても特定の技術に特化している会社を除き、研究開発に余力がない小規模な建設業者の中には、望んでも参加できないところもあるだろう。

 広く浸透するロボットにするには、大量生産によるコストダウンが欠かせない。結局、研究開発ができない会社はロボットを買ったり、借りたりする顧客になるしかない。大手を頂点とするピラミッド型の業界格差はどこまでもついて回る。

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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