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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第60回

香川ゲーム条例ふたつの問題

2020年02月04日 09時00分更新

文● 小島寛明

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 「ゲームは1日1時間!」と言われると、一定の年齢を超える人の多くは、あの人を思い出すのではないか。

 アスキーの読者諸氏にはあらためて説明するまでもなさそうだが、今はコナミに吸収されたゲームメーカー・ハドソンの社員だった高橋名人である。

 1983年に任天堂の初代ファミコンが発売されると、ゲームばっかりやっている小中学生が続出した。

 そこに現れたのが、シューティングゲームが超うまいとされる高橋名人だった。名人は日本のプロゲーマーの走りとも言われるレジェンドだが、一方で子どもたちに「1日1時間」と節度を説いた。

 ゲームばっかりやっている子の1人だった筆者は、「あの人が言うなら守らなければ」と、その発言に強い説得力を感じたのを覚えている。

 現在、香川県が子どもたちがゲームで遊ぶのを1日1時間を上限とする条例の制定を進めており、議論を呼んでいる。

 名人や達人の言葉であれば聞こうという気になるかもしれないが、役所や県議会の議員たちに言われた場合、どう思うだろうか。

●5年前にも「家庭のルール」求める

 調べると、香川県ではスマホとゲームに対する取り組みは以前から続いている。

 香川県教育委員会は、2015年2月、スマホやゲームを使う際の子どもたちが守る事柄を定めた冊子「さぬきっ子の約束」をつくった。冊子に示された3つの約束は次のようなものだ。

・家の人と決めたルールを守る
・自分も他の人も傷つけない
・夜9時までには使用をやめる

 条例ではなく、各家庭に対してそれぞれ「ルール」を決めるよう呼びかける内容ではあるが、5年前から午後9時ルールはすでにある。

●地元紙もゲーム依存追う

 では今回、条例化の流れが生まれたのはなぜか。きっかけのひとつは、地元紙の報道にあるようだ。

 四国新聞は、2017年から子どもたちの健康を改善するキャンペーンを展開した。ゲーム依存症についても熱心に取材し、多くの記事を掲載した。

 2019年度の新聞協会賞を受賞した、評価の高いキャンペーン報道だった。

 2015年の調査で、香川県の健康寿命は男性が全国38位、女性40位と全国的に下位にあるとの結果が出ている。健康寿命は、介護などを受けずに自立して生活できる期間のことを指す言葉だ。

 こうした流れで、「ゲームは1日1時間条例」が浮上した。

●当初、スマホもゲームも60分に制限目指す

 この条例案は、正式には「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例(仮称)」と言う。

 県が公開した素案は、ゲームやネットのやりすぎは学力や体力の低下、ひきこもり、睡眠障害などの原因になるとする。

 さらに、子どもたちがネットゲームにはまると、薬物依存と同様に抜け出すことが困難になると書いてある。

 条例案が対象とするのは、18歳未満の子どもたちだ。

 条例案によれば、ゲームは1日60分、休みの日は90分を上限とする。スマホについては義務教育修了(中学卒業)前の子たちは午後9時まで、高校生以上は午後10時までに使用をやめることを基準とする、としている。

 現在示されている素案の前には別のバージョンが存在し、その時点ではスマホの使用についてもゲームと同じ時間制限が盛り込まれていた。

 当初案に対してSNSを中心に激しい批判が起こり、県側は当初案からゲームとスマホを同様に取り扱う規定の修正に追い込まれた。

 この条例には、1時間以上、ゲームばっかりやってる子は罰金10万円といった罰則は規定されていない。

 午後9時以降、子どもたちのスマホのネット接続を遮断する、といった強い措置をとるものでもない。

 実際の条例案は、子どもたちがネットやゲームにはまり込まないよう、県や学校、事業者、保護者がそれぞれ努力義務を負うという立て付けになっている。

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