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スマホ時代の芸能デビュー、動画・ライブ配信オーディション全盛の裏側

2020年01月16日 06時00分更新

文● 松嶋千春(ダイヤモンド・オンライン

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昭和の「スター誕生!」、平成の「ASAYAN」など、これまでテレビのオーディション番組からは数々のスターが誕生してきた。そして令和の今、オーディションのありようは大きく様変わりし、テレビからスマホの動画・ライブ配信アプリへと主戦場を移しているようだ。(清談社 松嶋千春)

“デビュー”を目指さずとも
気軽に参加できるオーディション

ライブ配信する若い女性
デビューを目指すだけでなく、「友達にマウントをとるため」「自分の顔を売るため」など、ライブ配信オーディション参加の動機は様々だ(写真はイメージです) Photo:PIXTA

 事務所が開催し1カ所の会場に参加者を集めるような昔ながらのオーディションに取って代わり、初期審査の場として、動画・ライブ配信アプリが活用されるケースが増えている。

 たとえば、中国発のアプリ「TikTok(ティックトック)」、オーディションに特化した「mysta(マイスタ)」、ライブ配信アプリ国内売り上げ1位の「SHOWROOM(ショールーム)」、同じく2位の「17 Live(イチナナライブ)」などだ。これらのなかには投げ銭機能を有するアプリも多く、オーディションのエントリー動画を視聴したファンによる応援や投げ銭のポイントに応じて、ランキング付けされるという仕組みだ。

 Webメディア評論家の落合正和氏(「ネットメディア研究所」)は、オーディションがアプリの世界に土俵を移した背景について、次のように語る。

「必ずしもみんながプロを目指しているわけではなく、自分自身のブランド作りのために応募している人も多いと思います。身近なところでは『友達にマウントをとるため』という動機もあるでしょう。すでにたくさんのファンがついていて、PR案件や投げ銭で稼げている子であれば、わざわざ事務所に所属するメリットはありませんから、自分の顔を売る意味でオーディションに参加していると考えられます」(落合氏、以下同)

 動画・ライブ配信アプリのオーディションのなかには、大々的に「デビュー」を掲げるものもあれば、単発でイベントに参加できる権利を得られる、にぎやかしのような募集も多々ある。たとえば、「雑誌に単発で載る」、「地上波のバラエティー番組に出られる」、「商品の広告塔としてSNSのアンバサダーになる」といったものだ。

リアルタイムのランキングで
臨場感がプラスされる

 プロを目指すものから、オーディションの体をとった販促企画まで、膨大な数のオーディションが登場している今はまさに、オーディションブームの真っただ中といえる。それを象徴するかのように、10月にはオーディションのマッチングアプリ「entr!(エントリ)」もリリースされた。

「10年ほど前は、発信の場といえばブログなどのテキスト文化でした。それがスマホの容量・通信速度・カメラの精度も進化し、動画を配信することへのハードルはどんどん下がってきています。これがさらに5Gになればライブ配信のタイムラグがなくなり、コンテンツとしての魅力もグッと上がります。このオーディションブームは、しばらく続くんじゃないでしょうか」

 従来のオーディションでは、審査員による評価がクローズドに行われていたが、現在は視聴者による投票が主流になっている。アプリ上でのランキングやツイッターでのリツイート数などをリアルタイムで追うことができ、「追い越せ、追い抜け」の臨場感がプラスされている。

「事務所側からすると、誰も知らない金の卵を売り出しても、当たり外れのリスクが大きい。しかし、視聴者参加型のオーディションであれば、初期の段階からどれぐらいのファンがついていて人気があるのか、ということが明確に数字でわかります。なので、最近はファン投票で上位の子から採用していくオーディションが多いですね」

 マーケティングの観点から見ると、オーディションの過程で認知度が徐々に広がり、これからブームとして駆け上がっていくタイミングが、一番おいしい時期なのだとか。「売れっ子として成熟する前こそ、応援しようというファンの熱量が大きいので、PRにはうってつけです」と落合氏は言う。

オーディション番組に
スポンサーがつくことも

 ヤフーの動画配信サービス「GYAO!」で配信され、12月11日に最終回を迎えた男性アイドルグループのオーディション番組『PRODUCE 101 JAPAN』では、シューズショップの「ABCマート」が協賛企業となった。動画の合間にコラボシューズのCMを放送し、ツイッターとインスタグラムで練習生が靴を着用している画像を公開。番組の主な視聴者である若年層の購買意欲を誘った。

「ファンの若い女性にピンポイントで響く商品をPRするという意味では、効果的でしょう。また、一般人でも数万人単位でSNSのフォロワーがいるような『インフルエンサー』と呼ばれているような人は、ブームの火付け役として企業担当者も注目しているところ。そういった人が参加するオーディションは企業もチェックしていると思います」

 前述の『PRODUCE 101 JAPAN』は、韓国発のオーディション番組『PRODUCE』シリーズの第5弾として日本に輸入された番組だ。世界的なKポップ人気と相まって注目が集まり、過去4シリーズはさまざまなVODサービスで配信されていた。

「オーディションそのものにコンテンツ力があり、配信サイトに購入してもらってビジネスとして成り立っているというのはまれな例です。商品の宣伝が主な目的のオーディションでない限り、スポンサーがつくケースは珍しく、単純にオーディションだけを目的として儲けを考えずにやっているケースが大半ではないでしょうか」

 ただし、本家・韓国の『PRODUCE』では投票操作問題が発覚し、警察の捜査が入るなど、多くの問題点もはらんでいるようだ。

吉本も、ジャニーズも
地上波の外にこぎだした

 こうしたオーディションでは、ツイッターやインスタグラムなど、SNSでのPR活動がモノをいう。あらかじめSNSでファンを獲得した上でオーディションに臨むのと、ポッと出でオーディションに臨むのとでは、視聴者の目に留まる確率は大きく違ってくるそうだ。さらに、動画・ライブ配信でのパフォーマンス力やSNSでのPR力は、デビュー後の露出の場においてダイレクトに問われるものだ。

「今は地上波以外にも、AbemaTVのようなインターネットテレビ局や、動画サイト、SNSなど露出の場が多様化しています。ユーザーは趣味嗜好によってさまざまなウェブサービスを使い分けているため、ひとつの場に頼っていては接点ができにくい。よりたくさんの人に知ってもらうには、各方面に打って出て、それぞれのサービスに合った魅せ方を心得ておく必要があります」

 かつてテレビ至上主義だったお笑い芸人たちも、時代の流れに乗って続々とYouTubeチャンネルを開設し、“YouTubeらしく”編集されたネタ動画を投稿。ネット上での扱いが厳しかったジャニーズ事務所は、若手グループに続き「嵐」までもがYouTubeチャンネルを開設。活動休止前の置き土産よろしく、5大SNSとサブスクまで解禁するなど、全方位的な活動に乗り出しているのだ。

 さまざまジャンルの芸能人が動画・ライブ配信アプリをファンとのコミュニケーションの場として活用する一方で、アプリ上のオーディションは10代が対象のものも多く、一般人の中高生がファンを抱えることにはリスクも伴う。

「のちのち有名になったときに過去の問題発言を掘り起こされてしまう『デジタルタトゥー』の問題や、ファンとの距離の取り方を間違えてストーカー被害に遭うなど、動画・ライブ配信にはリスクが付き物です。参加者と視聴者双方が、モラルと距離感を守って利用してほしいですね」

 新たな文化・経済圏となりつつあるオーディション。今後、どのように形を変えて発展していくかが楽しみだ。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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