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木村拓哉『グランメゾン東京』を倍楽しめる!フランス料理のトリビア解説

2019年12月23日 06時00分更新

文● 新山勝利(ダイヤモンド・オンライン

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いよいよ最終回を迎える『グランメゾン東京』。ドラマをさらにディープに楽しむために、フランス料理の奥深い世界を中心に、「ちょい足し解説」で推理してみた。(マーケティングコンサルタント 
新山勝利)

「エスコフィユ」は
実在の人物の名前である

フランス料理
フランス料理についての知識を少し持っておくだけで、『グランメゾン東京』がさらに楽しく観れる Photo:PIXTA

 木村拓哉さんが主演のTBS系ドラマ『グランメゾン東京』が、いよいよ最終回をむかえる。

 主役の木村さんが演じるのは、型破りなフランス料理のシェフ・尾花夏樹だ。

 パリに自身の店を持ち、ミシュラン・ガイドで2つ星まで獲得した尾花だったが、ある事件で挫折、店も仲間もすべて失う。奈落の底に落ちたが、今度は東京で、世界最高峰の3つ星レストラン「グランメゾン東京」を作るために奮闘する姿を描く大人の青春ストーリーだ。

 フランス料理の奥深い世界は、日本人にはなじみが薄い。最終回をさらに楽しむため、各話に登場するフランス料理や厨房の背景について、少し解説を試みたい。
 
第1話:
 ドラマ冒頭に、「最後の晩餐」の絵が映り込む場面がある。この絵画はこれから起こるイエス・キリストの受難を示唆しており、この晩餐のなかに裏切り者がいる場面が描かれている。尾花に降りかかる「ナッツ混入アレルギー事件」(首脳会談時に、フランス外務大臣のアレルギー食材であるナッツオイルを何者かが入れたことで卒倒してしまい、重篤な状態に陥る)で、パリのレストランが閉店に追い込まれる。犯人が誰なのかがストーリー展開の主軸にもなっており、このなかに裏切り者であるユダがいることを暗示している。

 その尾花が経営するパリのレストランの名前は、「エスコフィユ」だ。フランス料理に関わったことがあれば、この名前はオーギュスト・エスコフィユを指すことがわかる。

 20世紀初頭に活躍したシェフであり、「近代フランス料理の皇帝」と呼ばれている。厨房での役割分担を構築、コース料理スタイルの確立など、現代フランス料理の礎を作り出した。彼の著書『料理の手引き』はフランス料理のレシピが収録されており、現在もなお基礎を学ぶ上で必須の教科書になっている。

 第7話で尾花は、「グランメゾン東京はエスコフィユを超える」と発言したが、そのエスコフィユが店ではなく人のことだとすると、かなりのビッグマウスである。

ハンバーグやオムライスは
フランスでは食べない!

第2話:
 早見倫子(鈴木京香さん)が相沢瓶人(及川光博さん)の娘、アメリー(マノンちゃん)に、何を食べたいかと聞くシーンがある。彼女はフランス語で、「ジュ・ヴ・ドゥ・ステーク・アッシェ」(ステーク・アッシェを食べたい)と言う。それに対して出てきたのは、茶色い煮こみハンバーグ。ステーク・アッシェとは、牛肉100%のフランス版ハンバーグ(有名ハンバーガーのハンバーグ・パティだけ)であり、玉ねぎやつなぎが入る日本のハンバーグとは別物だ。

 フランスでは定番の家庭料理であり、食べる際はそのままか、ケチャップ、マスタードぐらいしかつけない。日本生活も長いアメリーのため、日本のハンバーグを用意したのであろう。その後の場面で、鍋料理を準備している映像もあり、彼女は日本食に慣れていることがわかる。第7話では、彼女は小さなオムライスを食するが、これも日本発祥の洋食であり、フランスにはない料理である。

第3話:
 早見が「先日はうちのスーシェフが」と、尾花を紹介する。第6話でも、ライバル店にいる平古祥平(玉森裕太さん)が「新しくgakuのスーシェフになりました」と、リンダ・真知子・リシャール(富永愛さん)に挨拶する。

 スーシェフとは、高級フランス料理店で二番手シェフのことだ。料理の進捗を確認し、遅いセクションを手伝うなど、厨房内をコントロールするのもスーシェフの役割だ。新しいメニューをシェフに提案することもおこなう。実際、早見と尾花が、また、丹後学(尾上菊之助さん)と平古が、新作メニュー開発のために何度も2人で作る場面が出てくる。ところで、シェフというのはトップである料理長のことであり、フランス料理店の厨房には1人しか存在しない。

「モンブラン」は
日本風とフランス風では大違い

第4話:
 デザートのモンブランを、パティシエの吉谷彩子(松井萌絵さん)が作る場面。モンブランとは、フランスとイタリアの国境にまたがるヨーロッパ・アルプスの最高峰(標高4807m)の山の名前であり、「白い山」と訳す。その由来から、表面が白い生クリームで覆われたケーキ菓子になる。

 ところが、日本でポピュラーなのは、茶色い栗のマロングラッセをペーストにしたクリームだ。メレンゲ状に搾り出した形に発展したものであり、海外のものとは違う。また、タイトルにもなった「モンブランアマファソン」のアマファソンとは、「私らしさ」だ。栗の鬼皮を焼いて香りと味を引き出し、見た目も美しく独創性にあふれまさに“私らしさ“があふれていた。

第6話:
 包丁を砥石で研いでいたのが、芹田公一(寛一郎さん)だ。実は砥石は日本特有のものであることを、知っている人は少ない。サラダやカルパッチョなど、日本のフランス料理では生鮮の食材をそのまま料理に用いることも多い。砥石で研いだ切れ味が鋭い包丁を使うことで、舌に乗せた瞬間に繊細な食味を感じることができる。また、ドラマでも指摘されていたが、研いだ後にすぐに切ると金属特有の臭さが食材についてしまう。最低2日間は、生ものの料理であれば空けておくべきだ。

第9話:
 白子が食材で使われていた。魚の精巣であり、食材としては日本でしか流通していない。海に囲まれた日本では、新鮮な魚介類が取り扱いされている証左にもなる。

 ある調理師専門学校では、同ドラマを見ることが必須課題になっている。ドラマのスタッフは事前に幾つものフランス料理店を取材しており、リアルなフランス料理店を忠実に描いていることがわかる。

 最後に、このドラマを見て一番のサプライズは、主役である木村拓哉さんの話すフランス語ではないか。ただでさえ、私たち日本人が、独特の鼻母音やアクセントを利かせるのは難しい。もっと話せなくても、現地で暮らしている方はいくらでもいる。料理の腕前も一流で確かだが、場面ごとにフランス語を話している姿がスムーズで驚いた。

 果たして、最終回で「グランメゾン東京」は、栄えある3つ星を獲得できるのだろうか。現実には、フランス料理店の女性シェフは、いまだに取ったことはない最高峰の評価である。まだ必ず、ひと波乱あるはずだ。ぜひとも、テレビの前で皆さんと同じ一ファンとして、ワンチームの活躍ぶりを見守りたい。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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