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「外遊び」で子どものコミュニケーション力が伸びる理由

2019年12月19日 06時00分更新

文● 藤崎雅子(ダイヤモンド・オンライン

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子ども時代の「外遊び」は、子どもの運動能力を向上させるだけでなく、コミュニケーション力の向上にも一役買っている。その大切な外遊びの機会が減っている最近の子どもたち向けの運動遊びプログラムに注目したい。

児童館で導入進む
新開発の運動遊び

「jump-jam」(ジャンジャン)で楽しそうに遊ぶ子どもたち
運動が好きではない子どもも楽しめるよう設計された運動遊びプログラム「JUMP-JAM」。大人同士でも楽しめ、世代を超えたコミュニケーション促進にも役立つという

 年齢の離れた上司やメンバーに対し、コミュニケーションギャップを感じることはないだろうか。

 その要因のひとつについて、「小さい頃の“遊び”の違いがあるのではないか」と一般財団法人児童健全育成推進財団・総務部部長の阿南健太郎さんは指摘する。

 現在の50代以上は、子どもの頃、外遊びの環境に恵まれていた世代だ。昔ながらの人気アニメの場面のように、公園や路地裏に異年齢の子どもたちが集まって遊び、ガキ大将がみんなをまとめたり、ケンカもするけどすぐ仲直りしたり…こうした日々の遊びは、さまざまなコミュニケーション術を身に付ける機会でもあった。

「しかし近年、空き地の減少、遊び声の騒音や安全性への配慮からの公園利用の規制強化、子どもを狙った犯罪の増加などから、外遊びがしにくくなっています。それによって子ども同士の遊びから学ぶ機会も減っているのです。世代によって遊び方が変化したことが、コミュニケーションの違いにも表れている可能性があります」(阿南さん、以下同)

 そんななか注目されるのが、運動遊びプログラム「JUMP-JAM(ジャンジャン)」だ。全国の児童館をネットワークする児童健全育成推進財団が、世界各国で社会貢献事業を展開するナイキとパートナーシップを組んで開発。誕生から3年目で、東京都内72カ所の児童館で実施が広がったほか、商業施設等で体験イベントもたびたび開催されるなど好評を得ている。これが実はコミュニケーション力の向上にも効果があるというのだ。

運動が苦手な子も楽しめる
50種類のゲームをラインアップ

50種類のゲームについて、遊び方やレベル、身につく社会的スキルなどをまとめたガイドラインを作成。基本の遊び方だけでなく、遊ぶ場所や人数に応じた「アレンジ方法」や、ひと味違う楽しみ方を提案する「バリエーション」も示している

 児童健全育成推進財団がプログラム開発に乗り出した最大の理由は、子どもの体力・運動能力の低下による怪我や事故の増加に対する課題感だった。同財団で開発に携わった阿南さんはこう語る。

「最近の子どもたちは、以前に比べて大きな怪我や事故が増えているというデータがあり、その一因に子どもの運動機能の未発達や体力低下があると考えています。外遊びが難しくなるなか、全国に4500カ所以上ある児童館は地域の子どもたちの安全な遊び場として活用されているのですが、そこで運動をしたがらない子も少なくありません。運動の得手・不得手に関係なく、どんな子も体を動かすことで、健やかに成長していってほしい。そんな思いで取り組み始めました」

 千葉工業大学創造工学部の引原有輝教授監修のもと、運動量も計算し、50種類のゲームを考案。じゃんけんや鬼ごっこなどの遊びをベースにしたものが多く、ゲームの勝敗より、楽しさを重視した内容になっている。

 例えば「コーディネーションジャンケン」は、じゃんけんして勝ったら「勝ったー!」と言いながらバンザイ、負けたら「負けたー!」としゃがんで地面を触り、あいこだったら「あいこー!」とハイタッチをするというもの。誰でも取り組みやすい単純なゲームだが、「声を出したり、コミカルな動作をしたり、楽しく続けるうちに結構な運動量になる」と阿南さん。参加者の年齢やレベルに応じて、動作をジャンプやスキップなどに変更すれば、運動負荷を上げることも可能だ。

「運動が好きではない子にもハードルが低く、参加しやすいようです。これをきっかけに体を動かす楽しさを知って、少しでも体力向上につながることを期待しています」

社会的スキルの習得を
組み込んだプログラム設計

 JUMP-JAMプログラムの設計にあたってもう1つ重視されたことが、社会的スキルの習得だ。

 ゲームのラインアップには、陣取りゲームを応用したものや、ドッジボールや野球といったスポーツの動きに遊び要素を加えたものなど、チームで行うものもある。これらで遊びながら、相手とのさまざまな駆け引きや、誰かが犠牲になって仲間を助けるようなチームの動きを導き出すよう設計されている。

 また、各ゲームに取り組む上では、一定のルールを遵守することより、子どもたちが自由にアレンジすることを奨励。児童館によってはJUMP-JAMのキッズリーダーを任命し、取り組むゲームの選定や参加者へのゲームの説明のほか、みんながより楽しく参加できるようにどうアレンジしたらいいかを話し合うなど、子ども主体で取り組んでいる。

「準備から振り返りまでを含む一連の活動を通じて、他者とのコミュニケーションやチームワーク、対立の解消など、さまざまなことを学んでいます」

 また、JUMP-JAMを実施する児童館のスタッフが大切にしていることに「6つのC」というのがある。CONFIDENCE:子どもたちの自信を養う、CONTRIBUTION:子どもたちが貢献できる機会をつくる、CELEBRATION:子どもたちを意図的に褒める、CHOICE:子どもたちに選択肢を与える、CLEAR&CONCISE:子どもたちにわかりやすい指示を出す、CONNECTIONS:子どもたちとつながりをつくる、という6点を表すもので、スタッフはこれらを意識した声掛けや問いかけをしながら、子どもたちをファシリテートしている。

「単にゲームのやり方を示すだけでなく、ファシリテーションのあり方もセットで設計しているのが、このプログラムの大きな特徴です。スタッフの養成を含め、まずは都内の児童館においてしっかりしたモデルをつくり、将来的には全国での実施に広げていきたいと考えています」

 子ども向けに開発されたJUMP-JAMだが、企業の社員研修で体を動かしながらチームビルディングに使う例も出てきたという。「大人でも楽しめる内容で、年代、チームや職階に関係なくフラットに遊ぶことでコミュニケーションが深まると好評です。会社で親子運動会を開催したりするのも面白いかもしれませんね」と阿南さん。世代間コミュニケーションに悩む職場では、ひとつの打開策として検討してみてはいかがだろうか。

(藤崎雅子/5時から作家塾(R))


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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