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野村HDのトップ人事電撃発表、「大リストラへの布石」観測も

2019年12月05日 06時00分更新

文● ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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野村ホールディングスCEO奥田健太郎氏
野村ホールディングス次期グループCEOの奥田健太郎氏(左)は、永井浩二氏の構造改革を引き継ぎ、野村を立て直すことができるか Photo:毎日新聞社/アフロ

野村ホールディングスは2日、永井浩二グループCEO(最高経営責任者)が退任し、来年4月1日付で奥田健太郎Co-COO(共同最高執行責任者)が後任に就くトップ人事を電撃発表した。(ダイヤモンド編集部 重石岳史、布施太郎)

ビジネスモデルそのものの大変革が必要

「奥田氏も単独路線を堅持する考えなのだろうか」──。トップ交代のニュースが市場を駆け巡った12月2日午後、あるメガバンク役員はこう語った。胸中にあるのは「ライバルの大手銀行と野村が手を組む可能性があるのではないか」という疑心暗鬼だ。

 2019年3月期に1004億円の大幅赤字に沈んだ野村は今期、国内外の両面で大規模な構造改革に踏み切った。22年3月期までに1400億円のコストを削減する荒療治に取り組み、すでに6割強は完了したもようだ。

 保有資産の売却やコスト削減が功を奏した形で、業績は回復への道を歩んでいるようにも見える。20年3月期上半期は1944億円と米国会計基準で過去最高の上半期黒字額を達成した。

 だが今の野村が直面するのは、小手先ではいかんともし難い、証券業というビジネスモデルそのものの大変革である。

 個人投資家向けの株式や債券の販売営業などを行う国内リテール事業は、インターネット証券の攻勢にさらされ手数料は減収の一途。今や個人投資家の約9割がネット経由で株式売買を行う時代だ。

 機関投資家に株式や債券を取り次ぐ市場業務も手数料の低下に苦しむ。

 企業の資金調達やM&A(企業の合併・買収)仲介などの投資銀行業務は、米ゴールドマン・サックスや米JPモルガンなどの海外の競合との競争に立ち向かわなければならない。

 永井CEO自身も「経営を取り巻く環境が大きな構造変化に直面している。先進国の非伝統的な金融政策の正常化は当面見込めない。デジタル技術の革新は、客の行動様式の変化だけではなく、金融の枠組みそのものを変えようとしている」との認識を示す。

 グローバル展開する海外の有力投資銀行は08年の金融危機後、相次いで銀行持ち株会社へ転換。伝統的な投資銀行業務だけでなく、消費者金融や富裕層ビジネス、大企業のグループ内決済業務を一手に引き受けるグローバル・キャッシュ・マネジメント業にも進出している。「野村も単独で生き残るためには、安定的な収益基盤を確立させる必要がある」と、冒頭のメガバンク役員は解説する。

 では、来年4月以降に野村を率いることになる奥田氏が、生き残りのために取り組まなければならない課題とは何か。

非営業出身のトップ就任でリストラ観測も

 まずは野村の屋台骨である国内リテールの立て直しだ。永井CEOの在任期間中、リテール部門の税引き前利益は14年3月期の1920億円をピークに下降基調をたどり、19年3月期は495億円。足元の20年3月期上半期は134億円にとどまる。

 こうした苦境への対応策として、野村は富裕層やマスアフルエント層(準富裕層)など顧客の属性やニーズに対応する形でより専門性の高い担当者を再配置し、店舗の統廃合などを進めている。

 将来の成長への布石として、いわゆる資産形成層の取り込みも急務だ。そのため出遅れていたデジタル対応で、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)大手のLINEと組み、若年層へのアプローチを始めた。山陰合同銀行と提携したように、地方の金融機関との連携拡大も待ったなしで進めなければならない。

 奥田氏自身も「提携相手は既存の金融業者に限らない。LINEとの協業のように、これからも柔軟に考えていきたい」との方向性を示す。

 ただし、これだけで野村が今の苦境を乗り越えられるかは未知数だ。 すでに米国では今秋、手数料を無料化するネット証券が出始めている。

 その波がやがて日本に到来するのは時間の問題だ。少子高齢化で市場が縮小する上に競争も激化し、証券業は利益を見込めないレッドオーシャンと化す。「いずれは大幅な人員削減に踏み切らざるを得ない。海外が長く、国内営業へのしがらみがない奥田氏のCEO就任は、大規模リストラへの布石ではないか」(野村の中堅社員)。社内ではそんな観測も流れる。

 国内リテールの立て直しが急務なのは、それが野村の力の源泉であるからに他ならない。

 法人向けのホールセール部門の経験が豊富な奥田氏のCEO就任は、明らかに海外や投資銀行ビジネス強化の方向性を示す人事だ。とはいえ、引き受けた株式や債券などの金融商品を売りさばける国内の強固な顧客基盤なくしてホールセール部門の強化はあり得ない。

 野村の海外部門はしばしば赤字や大幅減益に陥り、安定的な収益源とはなお言い難い。

 今後は、発行済み株式や債券などを売買する流通市場(セカンダリーマーケット)から、より価格変動リスクが小さい発行市場(プライマリーマーケット)やM&Aなどのアドバイザリー業務を強化する方針だが、前述のように、この世界でも競合がひしめき、競争環境は厳しい。

 現状では業績のブレが大きいホールセール事業をいかに安定軌道に乗せるかが、奥田氏の真価が問われるところだろう。

 12年にインサイダー問題で前任者が引責辞任し、急きょCEOに就いた永井氏は当時、「根底から会社をつくり替える」と宣言した。

 それから7年余りが過ぎ、永井CEOの後継に指名された奥田氏は、当時を振り返りこう言葉を継ぐ。「今はそのときよりも、もっと危機感が強い」。野村の前途はそれほどまでに依然多難だ。

 冒頭のメガバンク役員の再編観測に対し、金融庁のある幹部は「野村ほどプライドの高い金融機関は他にない。容易には銀行などとの再編はないだろう」との見方を示す。

 だが、野村再建を託された奥田氏がかじ取りを誤れば、“プライドの高い”野村といえども単独路線を維持できる保証はない。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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