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次世代通信規格5Gがブロックチェーンに与える恩恵と、5G自体への好影響

2019年12月20日 09時00分更新

文● 久我 吉史

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 次世代通信規格「5G」はブロックチェーンにどのような恩恵をもたらしてくれるのでしょうか。実は5Gとブロックチェーンには相互補完できる関係があります。

 そのためブロックチェーンもまた5Gに恩恵をもたらしてくれる技術なのです。以下、それぞれの技術がどのような恩恵をもたらせてくれるのか詳しく見ていきましょう。

5Gとブロックチェーンの特徴

 本題に入る前に、5Gとブロックチェーンの特徴をそれぞれ3つのキーワードでまとめてみました。以下、それぞれの特徴を確認していきます。

5Gの特徴

 5Gは現行の通信規格よりも速く大容量のデータ通信ができることは直感でわかると思います。個人ユーザーにとっては4K動画がスマホでサクサク見られるようになるなどの恩恵があります。多数同時接続はその名の通り、基地局と通信できる端末数が多くなることをいいます。

 また、低遅延も重要なキーワードです。まず低遅延とは「通信の相手先までに到達する時間が短いこと」をいいます。例えば数ミリ単位での正確さが求められる医療手術を遠隔で行なう場合、手元の操作と遠隔先の動作には1秒未満ですが遅れが生じます。5Gではこの遅れがさらに短くなっています。

4Gと5Gの3つの特徴の比較。通信速度は1Gbpsから20Gbpsと20倍になり、遅延は10msから1msと10分の1になる。(注:1msは1000分の1秒のこと)。引用元:KDDIのIoT/KDDI(https://iot.kddi.com/column/5g_business/)

ブロックチェーンの特徴

 続いてブロックチェーンの特徴です。そもそもブロックチェーンは、データをインターネット上に分散させて台帳として管理を行う技術のことです。中央管理者が不在でも分散したネットワークが構築できる接続方式となっています。また5Gと異なり、現実世界に存在するものではありません。すべてにおいて万能というわけではなく、デメリットや課題もあります。

 台帳上に全ての取引データ履歴を記録しますので、追跡可能性が高い特徴があります。記録したデータが正しいものであることを証明するため、また勝手に書き換えて改ざんされないように暗号技術を活用しています。

 ブロックチェーンに接続するユーザーが増えれば増えるほど、単位時間あたりに記録する取引データが増えていきますが、実際に記録データが入る「ブロック」は一定時間ごとに生成する決まりがあります。そのためブロックの生成時間よりも記録する取引データが増えるスピードが速いと、だんだん記録するデータが溜まっていってしまうので、拡張性に懸念が残ります。

 また記録したデータが正しいことの証明は多数決で行なうことになっていますので、51%以上の議決権を1人が持ってしまうと、正しいデータだったとしても否決できるので、ガバナンスの問題があります。全ての取引データの追跡可能性があるので、自分の取引データが全て丸見えになってしまうプライバシー問題もあります。

 これらの懸念や課題に対処するためのひとつの解決策は、接続できるユーザーを制限することです。組織内だけに限定したプライベート型や、共同事業者だけに限定したコンソーシアム型のブロックチェーンのネットワークを構築することで、悪意のある人をできるだけ排除することができます。ちなみに全ての人が接続できるブロックチェーンはパブリック型と呼ばれています。

5Gがブロックチェーンにもたらす恩恵

 冒頭で述べたように5Gとブロックチェーンには相互補完できる関係があります。その恩恵を一言でいうと「ネットワークに接続する機器がより合理的に管理できるようになる」ということです。

 たとえばセンサーデバイスやIoTデバイスの管理・データ収集が効率化できます。工場内に取り付けた温度センサーや品質管理センサー、街中を走り回るタクシーの位置情報や収益情報などを収集する機器など、さまざまな場所に散らばっているセンサーやIoTデバイスがあります。

 これらのセンサーやIoTデバイスから情報を収集するとき、データをブロックチェーンに記録できれば、管理主体不要でデータ管理ができます。またどのような動作を行なったのか履歴を追跡できますので、AIによる動作分析や行動分析が行ないやすくなるでしょう。

 さらに5Gのネットワークを利用できれば、より多くのデータをリアルタイムで収集できます。

 ブロックチェーン側での遅延という課題はありますが、リモート操作でセンサーや機器をコントロールしようとしたときに、低遅延で操作できるのも恩恵です。

ブロックチェーンが5Gにもたらす恩恵

 また5Gの側にブロックチェーンを活用すると、より高品質な5Gの通信サービスが提供できます。5Gに限らず4G、公衆Wi-Fiなどすべての通信サービスに対しても恩恵がもたらされます。その例を詳しく解説しましょう。

 ブロックチェーンにあらかじめ、接続対象となる通信機器のリストを登録しておきます。ある機器がネットワークの接続リクエストを行ってきたときに、通信の許可を行うかどうかをブロックチェーンの記録されているリストと照合を行ないます。

 従来の方法だと中央のサーバーに接続してリストと照合したり、IDとパスワードの入力間違いなどで何度も無駄な通信が発生したりと不要な通信があります。ブロックチェーンに接続可否の情報を記録することで、通信サービスを提供する機器が自立して、接続機器の認証が行えるようになる可能性があります。

 さらに、機器自信が自分の通信状況をブロックチェーンに記録すれば、機器管理に必要な情報が収集しやすくなります。5Gであれば超高速かつ低遅延なサービス品質を維持し続ける必要がありますので、無駄な通信は極力なくしたいところでしょう。

 通信可能な機器リストを通信サービス業者同士で共有できれば、利用者は面倒な契約手続きが不要でサービスが利用できるかもしれません。特に海外で利用するときに役に立つでしょう。

透明性とプライバシーのトレードオフの関係をどのように調整するか?

 ただし、5Gとブロックチェーンが一般社会に浸透した世界を考えたときに、気になるのが「プライバシー」です。

 ブロックチェーンの追跡可能性により、データの透明性が確保されていますので、そのデータを使ったIoTデバイス管理や通信サービスの提供は合理化されています。

 一方で個人が持つIoTデバイスや利用した通信サービスの内容までが確認できるようになってしまうプライバシー問題が残ります。企業だと自社内のデータが全世界に公表されてしまうリスクもあります。

 そのため記録するデータに暗号化を施して、個人を特定したり企業の秘密に抵触したりするような情報は開示しない、またブロックチェーンネットワークに参加できる人や企業制限したコンソーシアム型のブロックチェーンを構築するなどで対策を行う必要があります。

 次世代技術としての期待値が大きい一方、過信せずにどのようなリスクがあるかを考え、適切にリスクを処理する行動が必要です。

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