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アメリカ、イギリス、中国のブロックチェーン関連規制の最新事情

2019年12月13日 09時00分更新

文● 久我 吉史

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 暗号資産(仮想通貨)やブロックチェーンに関する世界中にニュースがたくさん飛び交っているので、整理が追い付かない。そんな人向けに主要な国々で起きている規制や動向のうち抑えておきたい最新情報を整理してお届けします。

 本記事では、アメリカ、イギリス、中国の3つの国を対象に最新の情報を整理しました。

アメリカ:ブロックチェーン関連のスタートアップ投資額はトップ
だが規制整備が遅れている

 2019年上期は、Facebookが発表した「Libra」が様々な議論を呼び起こして話題となりました。アメリカ政府が否定的な意見を表明した一方で、2014年から2019年7月までのスタートアップ企業への投資割合はアメリカがトップ。投資割合が高い一方で、ブロックチェーンや暗号資産に関する規制が遅れているのが特徴的です。

スタートアップ企業の調査を行なう「CBINSIGHTS」の調査結果。2014年から2019年7月までの投資額の割合はアメリカが40%とトップ。中国は15%。イギリスは8%。投資の内訳を見てみると暗号資産取引所への投資額が目立つ。引用元:Blockchain Trends In Review/CBINSIGHTS(https://www.cbinsights.com/research/report/blockchain-trends-opportunities/?fbclid=IwAR0nk9tNR5t7ObuBjeXtbrCyvRLvFC7xEMDL_PS0v6zzR-dVi9xgE6QqAuw)

 アメリカのコンサル企業「Financial Integrity Network」が、アメリカの上院公聴会用に公開した資料でも、「暗号資産関連の企業は全て銀行秘密法の規制下に置かなければならない」という意見を表明しています。

 銀行秘密法は、アメリカ政府がアメリカ国内の金融機関に求めているマネー・ローンダリングを防止ための法律です。

 銀行秘密法の適用を免れている企業がマネー・ローンダリングを支援しているおそれがあり、規制を明確にしないと公明正大な暗号資産ビジネスができないというのが、Financial Integrity Networkの主張です。

 主張の効果があったかどうかはわかりませんが、10月24日にアメリカの金融規制機関は、イギリスが設置した国際的なフィンテック関係の規制組織に加入しました。

 このような加入により暗号資産やブロックチェーンへの理解を深めて、規制整備に繋がることが期待できます。

イギリス:Libraの規制ルールを定めたり
法人向けの税務ガイダンスを発行したりと前のめり

 EU離脱問題で話題が絶えないイギリスですが、イギリスの中央銀行である「イングランド銀行」は、10月9日にLibraの監督方針を発表しました。Libraを禁止するのではなく、既存の金融システムを壊さないようにLibraネットワークの監視をしていく方針を示しています。

 一方でG20(財務大臣・中央銀行総裁会議)は10月18日に「ステーブルコイン」の導入には厳格な規制が必要であると合意しました。イギリスもG20の中に入っています。

 マネー・ローンダリングや消費者保護、投資家保護などで大きなリスクがあるというのがその理由のようです。

 ステーブルコインとは、円や米ドルなどの政府が発行する法定通貨を裏付けにした暗号資産のことです。Libraも法定通貨を裏付けにして発行が行なわれるので、ステーブルコインのひとつです。

 具体的にどのようリスクがあるか。規制を行なうかをG20で議論していくと議長国である日本の黒田総裁が表明しており、現状では全面禁止とするまでには至っていません。

Libraに関する監督方針の内容は「Financial Policy Summary and Record of the Financial Policy Committee Meeting on 2 October 2019(https://www.bankofengland.co.uk/-/media/boe/files/financial-policy-summary-and-record/2019/october-2019.pdf)」で確認できる。決済システム上リブラは重要なものになるだろうという記述もあり、全面的な否定をしていないことがわかる

 またイギリスの税務当局は、暗号資産取引に関する法人向けのガイダンスを公表しました。イギリスでは暗号資産を通貨ではなく商品(コモディティ)として定義している一方、給与の支払いに暗号資産を使うことを認めています。ガイダンスがあると税務会計が明確になるので、企業が暗号資産取引をしたときや、ブロックチェーンのトークンを発行しやすくなるメリットがあります。

法人向けの税務ガイダンスは、Cryptoassets:tax for businesses(https://www.gov.uk/government/publications/tax-on-cryptoassets/cryptoassets-tax-for-businesses)で確認できる

中国:「暗号法」成立により
ブロックチェーン技術の競争力で抜きんでようとしている

 中国では10月26日に「暗号法」という法律が成立しました。2020年1月から施行されます。「暗号」技術はブロックチェーン技術を実現するために必要不可欠なものであり、ブロックチェーンは暗号のうちの1つという整理になっています。習近平国家主席も「ブロックチェーン技術に力を入れていく」と述べています。

 法整備を行うことで、技術利用の基準が定まるので企業が技術を利用しやすくなります。事実、ブロックチェーン関連の特許数も2019年上半期の申請数も中国が世界一です。国を挙げてのブロックチェーン利用が目立ちはじめています。

 また直近では都市間のデータ共有を行なう「スマートシティ向けのID管理システム」をブロックチェーンで実装したりなど様々な取り組みが行われています。

参考:スマートシティ向けのID管理システム(GLOBAL TIMES

「暗号法」では、「核心暗号」「普通暗号」「商用暗号」の3つに分類しそれぞれセキュリティ要件やルールなどを定めている。用途や目的によって規制を分けることで、柔軟に規制運用を行なう配慮のようだ

2019年上半期のブロックチェーン関連の特許申請数。中国が上位を占めており、企業別では阿里巴巴(アリババ)が322件でトップ。米国の特許取得数トップのIBMはブロックチェーン関連だと第5位で、中国の強さがよくわかる。引用元:2019上半年全球区块链企业发明专利排行榜/IPRdaily(https://mp.weixin.qq.com/s/XVDLyMQFLGNQexPVYZFvhA)

金融規制が目立つアメリカ・イギリス
技術普及に燃える中国の立ち位置が鮮明に

 アメリカやイギリスは既存の金融システムへの影響や、マネー・ローンダリングに代表される金融犯罪に対する対策に注目しているのに対し、中国では技術を先に普及させようとする姿勢が特徴的。

 各国が今後どのような規制を課し、その規制がどのような効果・影響をもたらすのか引き続き注目していきたいところです。

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