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パナソニックが「目標数値なき」年度計画、正念場で問われる危機感

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津賀一宏・パナソニック社長は11月22日、「Panasonic IR DAY」でトップダウンによる2021年度までの「構造的赤字事業の撲滅」を語った
津賀一宏・パナソニック社長は11月22日、「Panasonic IR DAY」でトップダウンによる2021年度までの「構造的赤字事業の撲滅」を語った Photo by Mieko Arai

11月22日、パナソニックは投資家向けの年度計画説明会「Panasonic IR DAY」を、例年から半年遅れでようやく開催した。しかし、説明を行った6カンパニー中、4カンパニーが“数値なき計画”を掲げる状態で、変革断行の覚悟に疑問符が付く内容となった。(ダイヤモンド編集部 新井美江子)

売上高・利益目標を掲げたのが
「6社中2社」の異常事態

「これではIRにならない。さすがに何かしら意図があるはずだ」(電機業界関係者)

 11月22日、パナソニックが投資家向けにカンパニーごとの年度計画を説明した「Panasonic IR DAY」を受け、電機業界に臆測が渦巻いている。

 今年のIR DAYは、今年度から始まった新中期戦略(3カ年)の詳細が語られる場であり、例年以上に重要な意味を持っていた。

 だが、通例となっていた5月から半年も開催を延期したというのに、説明を行った6つのカンパニーのうち、中期戦略の最終年度である2021年度の売上高、利益率の目標数値を明確に掲げられたのはたったの2社だった。

 その2社とは、電設資材や住設建材といった旧パナソニック電工の事業を展開するライフソリューションズ社と、中国を中心とするアジア圏に家電製品と住宅設備を組み合わせた「くらし空間の提案」などを行う中国・北東アジア社である。

 結論から言えば、目標数値を掲げないカンパニーがあったのは、「未発表の売却、買収案件を抱えており、短期間で数字が変わる可能性があるから」といった戦略的な意図があってのことではないという。

 津賀一宏・パナソニック社長は、「今回の中期戦略では、数字が作れなかった」のだと率直に打ち明ける。パナソニックは今、“目論見外れ”に苦しんでいるのだ。

 前中期戦略では、米テスラ向けの電池事業をはじめとする車載事業で大きく成長する絵姿を描いていた。だからこそ、車載以外の既存事業の中で赤字が出る事業があっても、パナソニック全体で安定的に利益が出ればそれでよしとしていた。

 ところが、だ。ふたを開けてみれば、車載事業は売上高には貢献したものの、利益がさっぱり出なかった。前中期戦略の前提となる成長ドライバーにはなり得なかったわけである。

 新中期戦略ではこの厳しい現実に向き合い、車載事業に頼らない利益の増大方法を急ピッチで考えざるを得なくなっている。「たまに黒字が出るから」といって放置していた事業の整理や、伸びしろのない事業からの撤退、ビジネスモデルの転換などの構造改革は、待ったなしの情勢だ。

 IR DAYの発表を延期した半年間でも津賀社長と各カンパニー長は、カンパニーの戦略を抜本的に練り直したというより、構造改革を含む変革への取り組みスピードなどについてすり合わせを行っていたもようだ。

「(3年先の)次の中期戦略までに、数字で成長性と収益性を語れるようにする」(津賀社長)。パナソニックはまさしく、正念場を迎えている。

プラズマ撤退時に比べて
欠如する危機感

 とはいえ、今回のIR DAYが拍子抜けする内容に終わった面は否めない。なぜなら、目標数値を出し切れなかった4カンパニーでも、てこ入れするべき事業はずいぶん前からとっくにあぶり出されていたはずだからだ。

 構造改革、構造転換が急務となっている事業の代表例は、家電製品等を扱うアプライアンス社のテレビ事業、電子部品等を扱うインダストリアルソリューションズ社の半導体事業、B to Bソリューション事業を展開するコネクティッドソリューションズ社の現場プロセス事業(現場の効率化を請け負う事業)であろう。

 パナソニックにはもともと、約束できない数字しか外に出さない方針がある。さらに過去には、「掲げた数値が独り歩きした例」(パナソニック社員)もあるという。

 しかし“目標数値なき計画”は、改革着手の遅さと、改革をやり切るための切迫感が社内でいかに欠如しているかを思わせる。

「パナソニックは、事業の取捨選択ができたらものすごく強くなれる」。かねてパナソニック幹部は異口同音に自信のほどを語っているが、「競合他社に比べて決断が遅過ぎる」(金融業界関係者)との声が絶えないのも事実だ。

 実際に、中国・韓国勢との競争激化が長らく続いていた液晶パネル事業にしても、完全撤退を発表できたのはつい先日、11月21日のことである。

 パナソニックは、プラズマテレビ事業からの撤退などによって、もはや巨額赤字にあえぐことはなくなった。だが逆に言えば、そのくらいの衝撃がないからからこそ、社内で危機感を醸成することが難しく、各カンパニーが“慢性疲労”を放置し続けている。

 確実に成長し続けるために、しがらみを断ち切った変革のための冷徹な経営判断が必要な時だ。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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