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仕事時間は短く生産性は高い、「北欧流の休息」が幸福をつくる

2019年11月23日 06時00分更新

文● 藤野ゆり(ダイヤモンド・オンライン

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2019年版の世界幸福度ランキングが発表され、日本は58位と昨年よりもさらに順位を下げた。一方、例年通り上位を占めたのが1位フィンランド、2位デンマーク、3位ノルウェー、7位スウェーデンといった北欧諸国。北欧の幸福の秘密は一体どこにあるのか?(清談社 藤野ゆり)

仕事中2回のティーブレーク
15時には終業!の北欧諸国

コーヒーブレイクのイメージ写真
人口は日本の10分の1にもかかわらず、GDPは世界第23位。スウェーデン人は積極的に休みながらも、生産性を落とさない Phoo:PIXTA

 WHOが実施する世界幸福度ランキングで、スウェーデンやデンマーク、フィンランドなど北欧諸国が常に上位をキープしているのは有名な話。最新の「世界幸福度ランキング2019」では、2年連続でフィンランドがトップだった。

 一方、日本は2015年の46位から下降線をたどり、昨年は54位、19年版では58位と、どんどん順位が下がっている。何をもって幸福とするかの定義は曖昧だが、そもそも北欧諸国は日本と比べ税金も高く、決して暮らしやすいとはいえないはずだ。

「北欧諸国は消費税が高く、スウェーデンとノルウェーは25%、フィンランドは24%です。外食や旅行などのぜいたくはなかなかできず、ブランド品は買わない人がほとんどですし、自家用車を持つのも難しい。しかし社会保障制度が整備されている北欧は、子どもの教育費や医療費が無料。老後の心配はほとんどないといってもいいかもしれません」

そう話すのは、北欧流ワークライフデザイナーとして活動する芳子ビューエル氏だ。ぜいたくや余裕のある暮らしができるわけではないが、未来には大きな不安を持たなくていい国。しかし、幸福度の高い北欧の幸せの秘密はそれだけではないはず。芳子ビューエルさんは、彼らの休息の仕方と文化にヒントがあるのではないかと話す。

「スウェーデンで生まれた『フィーカ』という休息の文化。これが、北欧人のメンタリティーのカギを握っているかもしれません」

 聞き慣れない言葉だが「フィーカ」とは一体どのような状況をさすのか。

「フィーカとはスウェーデン語でコーヒーブレークの意味を持つ動詞です。フィーカは伝統文化であり、単なるブレークタイムではなく働き方や生き方など北欧人の考え方の根底につながっています」

 一般的に彼らは仕事中、午前と午後の2回フィーカを楽しむうえに、仕事は15時ごろに終えて余暇を楽しむ人が多いのだという。さらにサマーバケーションは2週間から1ヵ月取得するなど、北欧人はオンとオフをきっちり分けている。

「ストックホルムでは夏の間に『フィーカバス』というものが走ります。バスの中にはテーブルと、コーヒーなどのドリンク、ちょっとしたスイーツが用意されています。移動しながらフィーカを楽しむためのバスというわけです。フィーカが生活に溶け込んでいるのです。しかもフィーカの方が断然ランチやディナーより安上がりです」

休暇中はスマホもPCもオフ
仕事とプライベートは分けよう

 こまめに休みをとっているにもかかわらず、スウェーデンの1人当たりのGDPはこの30年、右肩上がりの上昇カーブを描いているとビューエル氏は言う。人口は日本の10分の1にもかかわらず、世界第23位という地位を築いているのだ。積極的に休みながらも、生産性は落とさない。一体その秘訣はどこにあるのか。

「フィーカの目的は、リフレッシュとコミュニケーション。職場では社員が一緒にフィーカすることもあれば、個別で休むこともあります。職場でのフィーカの場合、おのおのがマグカップに飲み物を注ぎ『たわいもない』おしゃべりに身を投じて休みます。このたわいもないおしゃべりというのが、フィーカにおいては大事なのではないかと思っています」

 こうした北欧の「コミュニケーションありきの休養」が作業効率を上げ、かつストレスを軽減させているのではないかと、ビューエルさんは仮説を立てる。

 しかし、おしゃべり好きとされるスウェーデン人と日本では国民性も大きく異なる。会社の休憩時間ぐらい、1人で静かに過ごしたいと考える人が大多数なのではないだろうか。休み下手といわれる日本人にとっての上手な「フィーカ」とは、どのような方法だろう。

「逆に日本人はコミュニケーションをうまくシャットアウトできると、より心が休まると思います。たとえば休暇中はスマホを見ない時間を設け、仕事関連の電話やメールは完全にオフにしてみる。北欧の人たちは基本的にしっかりお休みを取るので、休暇中は基本的にどんなことがあっても仕事の電話には出ませんし、メールは自動返信。休暇とは完全に『オフ』を楽しみ、プライベートと切り離しているんです」

 日本では休暇中にもかかわらず会社のメールをチェックし、時にはPCを開いてバケーション先でもお構いなしに作業をする人が少なくないはずだ。ワークライフバランスを意識するようになったとはいえ、それでもやはり休日も仕事のことが気になり休んだ気になれない…とこぼす人は少なくない。北欧人が仕事とプライベートを潔く分けられるのは一体なぜなのか?

「それは日本文化の中にある『空気を読む』とか『常識』という、ある種暗黙の了解的風習やそれにまつわるプレッシャーがないからだと思うんです。多くの情報やトレンドが海外からリアルタイムで流れ込んでくる状況にあっても、なかなかそれを手放しで受け入れられないつらさが日本社会にはあります。北欧では若者の間でもパーティーの前に全員のスマホを没収して、どんなに携帯が鳴っても出ない、というルールを設けている人々がいます。今一緒にいる人とのリアルな時間を楽しむためです。休暇だってそうできたら一番いいですよね。スマホの登場によって私たちは24時間会社とつながれるようになってしまった。そのことが、義理堅い日本人の息苦しさにさらに拍車をかけているのかもしれません」

 私たちの「フィーカ」はスマホを手放し、目の前の人間関係や景色を、画面ではなく肉眼を通して楽しめるようになったときに始まるのかもしれない。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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