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久保、堂安がいても勝てない…U-22代表が東京五輪を前に抱える課題

2019年11月20日 06時00分更新

文● 藤江直人(ダイヤモンド・オンライン

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久保建英
11月17日のコロンビア戦で、パスを阻まれる久保建英 Photo:JIJI

来夏に迫った東京オリンピックで金メダル獲得を目標に掲げるサッカーU-22日本代表が、国内お披露目の試合で一敗地にまみれた。U-22コロンビア代表と対峙した、17日のキリンチャレンジカップ2019(エディオンスタジアム広島)で0-2の完敗。フル代表を主戦場としていたダブルエース、21歳の堂安律(PSVアイントホーフェン)と18歳の久保建英(RCDマジョルカ)を、ワールドカップ予選を回避させてまで呼び寄せながら攻守両面で精彩を欠いた舞台裏を探った。(ノンフィクションライター 藤江直人)

10月にはブラジル代表に勝利も
国内お披露目試合でまさかの完敗

 時間の経過とともに期待が萎んでいく。来夏に迫った東京オリンピックへ「現時点におけるベストメンバー」と森保一監督が謳い、試合前日には「本気で金メダルを目指して戦う姿をお見せしたい」と意気込んでいた一戦から伝わってきたのは、例えようのないもどかしさだった。

 U-22(22歳以下)コロンビア代表とエディオンスタジアム広島で対峙した、17日のキリンチャレンジカップ2019。発表されたばかりの新ユニフォームを身にまとったU-22日本代表の先発メンバーには、フル代表を主戦場としてきた堂安律(PSVアイントホーフェン)、そして18歳の久保建英(RCDマジョルカ)の両MFが先発として初めて揃い踏みしていた。

 オリンピックには年齢制限が設けられていて、東京大会は1997年1月1日以降に生まれた世代が対象になる。昨年はU-21、今年はU-22、そしてオリンピックイヤーにはU-23と年齢が上がっていくチームに、1998年6月に生まれた21歳の堂安が参戦するのは初めてだった。

 オリンピック代表に続き、2022年のカタールワールドカップ出場を目指すフル代表の指揮官も兼任した森保監督の下で後者に抜擢されてきた。その間も戦いぶりを注視してきた同世代の仲間たちと、満を持してともに戦ったコロンビア戦で募らせたのは違和感だった。

「何か消極的に見えた試合だった。球際で負け過ぎているし、誰かがやってくれるだろう、誰かが守ってくれるだろう、という感じに見えた。チーム全体としてボールを受けるのを怖がっているシーンも多かった。いろいろなポジションの選手が『もっとパスをくれ』と言ってもよかったんじゃないか」

 チームが立ち上げられた2017年の年末以来、東京オリンピック世代はすべて海外で公式戦や国際親善試合を戦ってきた。今年10月にはサッカー王国ブラジルに乗り込み、東京オリンピックでも金メダル獲得を狙うU-22ブラジル代表から逆転勝ちをもぎ取ってファンを驚かせた。

「自分はその場にはいなかったですけど、フル代表を含めて世界でもトップクラスの国であるブラジルに勝ったことで、自信をつけていると思う」

 合流初日に久保が楽しみにしていたように、本気を出したブラジルに勝ったメンバーに堂安と久保が加わったチームには、否が応でも期待と注目が集まった。しかし、日本国内でのお披露目試合となるコロンビア戦を前にして、若い選手たちは経験したことのないプレッシャーを感じていた。

 コロンビア戦には約2万6000人のファンやサポーターが駆けつけた。ホームの大声援をアドバンテージではなく、負けたくない、失敗したくない、と後ろ向きの気持ちに変えてしまった。今シーズンのオランダリーグで全13試合に先発フル出場を続けるなど、心身両面で充実した時間を過ごし、急成長を遂げているDF板倉滉(FCフローニンゲン)が言う。

「実際に東京オリンピックの初戦を考えたら、プレッシャーはこんなものじゃない。その舞台でまた受け身になってしまうのは許されないし、だからこそ反省しなければいけない。勢いを持って、強気な戦いを演じられるのもこのチームのよさだと思っているので」

 前半こそスコアレスでしのいだが、守備網が決壊するように後半2分と14分に連続失点。一矢を報いることすらかなわず喫した完敗の原因を板倉はメンタル面に求め、フル出場した久保も「意識ひとつで変わるのかな、と思っています」と努めて前を向いた。

 もっとも、シュート数でもコロンビアの12本に対して8本と後塵を拝した理由を、メンタル面だけに帰結させることもできない。前半を戦いながら、堂安はチーム全体の重心が下がっている、要は攻撃時の人数が足りなかった点にも違和感を覚え続けていたと打ち明ける。

「見ている方々が思ったように、僕たち自身も重たさを感じていた。例えば僕にボールが入った時に、パスを送る選択肢は(上田)綺世や(久保)建英しかなかった。正直に言うと、上手くいきそうな雰囲気が自分自身の中になかった」

練習時間が限られる代表チームで
「可変システム」がうまく機能しない

 U-22代表は[3-4-2-1]システムで戦ってきた。久保と堂安はシャドーと呼ばれる「2」に左右対の形で配置されたが、一方でフル代表は[4-2-3-1]システムを基本とし、左利きの2人は「3」の右を争ってきた。同じ監督の下でシステムが異なる矛盾を誰よりも感じていたのが、フル代表から戦いの場をシフトさせた久保と堂安の2人となる。

 森保監督はJ1を3度制したサンフレッチェ広島監督時代に、前者の[3-4-2-1]を採用した。マイボールになった時にボランチの一人が最終ラインへ下がり、同時に「4」の左右の配置されていたウイングバックが前線の高い位置に張り出して[4-1-5]へと形をスイッチさせる。

 一世を風靡した「可変システム」を思い描きながら、堂安はコロンビア戦へ臨んだ。しかし、密なコミュニケーションが必要とされる「可変システム」は、毎日練習できるクラブチームだからこそ具現化させることができる。活動日数や時間が限定される代表チームには導入しづらい戦術だった。

「僕の中ではマイボールになった時に、ボランチの一人が最終ラインに下がって4バックになって、ポゼッションを高めていくイメージでしたけど、そういうシーンがほとんどなかった。オレがFWの位置に入って2トップ気味になり、タケがトップ下に入った方がいいかもしれないと試合中に話していましたし、実際にさまざまなトライもしましたけど、上手くいかなかったですね」

 ピッチ上で試行錯誤を繰り返していたと堂安は明かす。コロンビアがかけてくるプレッシャーを前にして、左の菅大輝(北海道コンサドーレ札幌)、右の菅原由勢(AZアルクマール)のウイングバックが高い位置を取りづらくなる状況も生まれていた。ゆえにマイボールになっても久保と堂安、そして1トップの上田綺世(鹿島アントラーズ)の3人が孤立してしまった。

「守備の時は5バック気味でもいいんですけど、攻撃の時にも5バック気味になっちゃうのはもったいないよね、という意見がハーフタイムにけっこう出ていました。もちろんウイングバックのせいにはせずに、彼らを押し上げるにはどうすればいいのかを考えなきゃいけない、と」

 侃々諤々の議論が選手間であったと久保も打ち明ける。兼任監督のメリットが存分に生かされてきたとは言い難く、いつしか溜まったツケを支払わされたと位置づけてもいい完敗。2点のリードを許した直後から[4-2-3-1]に代えた森保監督は、システムの違いは問題ないと言い切る。

「4バックや3バックという言葉で、我々のやっていることがすべて伝わるとは思っていない。4バックであろうが3バックであろうが、攻撃のコンセプト、守備のコンセプト、局面ごとの戦い方は伝わるようにしてきた」

欧州組招集のハードルと
森保監督のフル代表兼任が課題に

 それでもワールドカップ予選を回避させてまで招集した堂安が、そして久保が覚えた違和感を解消させるための時間を、オリンピック本番までにどれくらい確保できるのかも未知数だ。今回のコロンビア戦は、各国のリーグ戦が中断する国際Aマッチウィークでの開催だったこともあり、各クラブと交渉を重ねた結果、久保や堂安を含めた8人のヨーロッパ組を招集できた。

 今後は12月28日にU-22ジャマイカ代表とのキリンチャレンジカップ2019(トランスコスモススタジアム長崎)、年が明けてU-23代表になってからはAFC・U-23アジア選手権(タイ)に臨むスケジュールが組まれている。しかし、いずれも国際Aマッチウィーク外の開催となるため、特にヨーロッパ組を招集するためのハードルは一気にはね上がる。久保自身もこんな言葉を紡ぐ。

「自分のチームのスケジュールも分からないですし、今回も日本サッカー協会とクラブが話し合った上での招集だったと思うので。ちょっと自分ではどうしようもできないですね」

 何よりも森保監督自身が、東京オリンピック世代に関われない状況が続いてきた。2つの代表チームの活動がほぼ重複してきた中でフル代表を優先させた結果として、兼任になって以降でオリンピック世代を指揮できたのは、昨年8月にインドネシアで開催されたアジア競技大会の一度だけだった。

 コロンビア戦でも11日から広島市内で行われてきた合宿の指揮を、全幅の信頼を寄せる横内昭展コーチに託している。森保監督自身は敵地ビシュケクでキルギス代表とのワールドカップ予選を終えた直後に慌ただしく帰国し、コロンビア戦前日にU-22代表へ合流している。

「金メダル獲得という目標が私だけのものなのか、それともチーム全体で共有しているものなのか」

 コロンビア戦後のロッカールームで選手たちにこう問いかけ、後者で一致を見たと明かした森保監督は、ジャマイカ戦とAFC・U-23アジア選手権の指揮こそ執れる。しかしながら、来年3月以降の国際Aマッチウィークは再びワールドカップ予選を優先せざるを得なくなる。

 兼任監督のメリットを具現化できず、後方支援すべき日本サッカー協会も有効な手だてを見出すことができないまま、コロンビアに喫した完敗を介して矛盾と問題だけが露呈した。56年ぶりに自国で開催されるスポーツ界最大の祭典へ向けて、時間だけが無情にも刻一刻と減っていく。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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