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エルピーダ坂本元社長に聞く、中国紫光集団の副総裁オファーを受けた理由 坂本幸雄氏独占インタビュー

2019年11月20日 06時00分更新

文● ダイヤモンド編集部,杉本りうこ(ダイヤモンド・オンライン

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インタビューは、法人登記中の日本法人拠点で行われた。最大100人の設計者を迎えるための広いオフィスは、まだがらんとした状態だ Photo by Chiyomi Tadokoro

中国半導体大手の紫光集団が11月15日、日本最後のDRAM半導体メーカー・エルピーダメモリ(2013年に米マイクロン・テクノロジーが買収)の元社長・坂本幸雄氏(72歳)を高級副総裁に起用すると発表した。執行役員に相当する立場で、紫光のDRAM国産化を支援するのが使命。ただ米国は、中国によるハイテク分野の技術獲得を警戒しており、昨年はDRAM国産化を進める別の中国企業に輸出制限を行っている。こういった中、紫光は米国を経由せず技術とノウハウを獲得できる経路として、日本の人材を起用した。デリケートな国際情勢が続く中、あえて中国のオファーを受けた意図を、坂本氏に聞いた。
(聞き手/ダイヤモンド編集部 杉本りうこ)

5年以内にDRAMを
中国で量産化する

――就任の経緯を教えてください。

 今春に一度、「一緒にDRAMをやろう」と紫光から誘われた。その時は体力的な不安があり、決断できなかった。だが9月に改めてオファーをもらった際には、あと2~3年ぐらいなら働ける自信が生まれていたので、快諾した。やはりDRAMをやるということは、自分にとって魅力のあることだからだ。

――紫光では、坂本さんはどういった任務を担う予定ですか。

 紫光は5年以内にDRAMを量産化するのが目標。その準備をするのが僕の役割だ。具体的には紫光の日本法人社長として、ここ(神奈川県川崎のオフィス)に設立する「設計センター」を任される。紫光にもDRAMの設計センターがあるにはあるが、独キマンダ(2009年に経営破綻)の資産がベースとなっており、非常に古い技術しかなかった。

 日本の設計センターには、設計者を70~100人程度集め、中国の製造プロセス拠点と密に連携しながら、だいたい2~3年かけて量産に向けた体制を整えていく。

――人材はどうやって採用しますか。

 ヘッドハントもするし、求人広告も出す。エルピーダで一緒に働いた設計者については、誰が優秀かはもちろん分かっている。ただ彼らがごそっとマイクロンを辞めるような事態は避けたい。

 僕が想定しているのは、ルネサスエレクトロニクスのような国内半導体メーカーや、台湾のメーカーで現状に不満を抱えながら働いている人材だ。本来は優秀で意欲もあるのに、会社の戦略で細分化した業務しか与えられず、自由度のない働き方に甘んじている人は相当数いる。いいDRAMを作るためには設計者は、限られた部分だけではなく、製品全体を考えなければならない。そのために企業は、彼らに自由度を与えなければならない。紫光では待遇もさることながら、彼らが面白いと思って働いてもらえる環境を提供できるだろう。

――米国は中国の技術獲得を強く警戒しています。昨年10月には米商務省が、中国のDRAM国産化メーカー・福建省晋華集成電路(JHICC)に対して、米国からの輸出を禁止しています。こういった経緯を踏まえると、坂本さんの日本での活動にも困難さがつきまとう可能性が大いにあります。

 難しさや批判があることは、ある程度は覚悟して引き受けた。日本の公的なお金をもらうわけではないので、日本政府は苦々しく思ったとしても、表立って何か対処してくることはないだろう。

 それよりも僕が思うのは、「経済は経済」ということ。米国が政治的な観点から中国に経済制裁を加えるのは、正しいことだとは思わない。政治と経済は分離すべき。自由な競争が正しいのだ。

――米国が主張しているのはまさにそこです。中国企業こそ政府の支援とそれによる潤沢な資金を得て、フェアではない競争を仕掛けているというのが米国の主張です。

 政府による支援の仕方、お金の出し方にもいろいろある。お金に一定の「意図」を付けてやるのは良くないかもしれないが、意図のないお金であれば問題はない。僕は中国政府のお金に、何らかの意図があるとは考えていない。

さかもと・ゆきお 1947年群馬県生まれ。70年日本体育大学卒、日本テキサス・インスツルメンツ入社。神戸製鋼所などを経て2002年にエルピーダメモリ(現マイクロンメモリジャパン)社長。経営破綻に伴い、13年に退任。

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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