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ヤフーとLINE統合の裏に、ソフトバンク「スーパーアプリ」の野望

2019年11月15日 17時00分更新

文● ダイヤモンド編集部,大矢博之(ダイヤモンド・オンライン

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ヤフーとLINE
ヤフーとLINEの統合が実現すれば、日本でも“スーパーアプリ”実現に近づく Photo:Diamond

ヤフーとLINEが経営統合に向けて協議を進めている。8000万人を超える顧客基盤を持ちながら赤字が続くLINEと、メッセージアプリが欲しいソフトバンクグループ。統合が実現すれば、ソフトバンクの野望である、日常のあらゆるサービスをスマートフォンのアプリ1つで解決する「スーパーアプリ」の実現に一歩近づく。(ダイヤモンド編集部 大矢博之)

あらゆるサービスをワンストップで
ペイペイが目指す「スーパーアプリ」構想

「スーパーアプリ」実現の野望とLINEの“救済”がマッチしたか――。

 ソフトバンクグループでZホールディングス(HD)傘下のヤフーとメッセージアプリ運営大手LINEが経営統合に向けて協議していることが明らかになった。

 ZHDは「協議を行っていることは事実」、LINEは「企業価値向上のための施策の一つとして検討を進めていることは事実」と14日にそれぞれコメントを発表し、経営統合の交渉について認めた。

 関係者によれば、交渉はZHD側から持ち掛け、親会社のソフトバンクと、LINEの親会社である韓国ネイバーを交えて協議を進めているという。ソフトバンクとネイバーが50%ずつ出資して新会社を設立してその傘下にZHDを置き、ヤフーとLINEを子会社にする案が検討されている。来週中にも正式発表する。

 ヤフーとLINEの統合で実現するものは何か。そのヒントとなるのが「スーパーアプリ」だ。

「スマートフォン上であらゆる暮らしを便利にする“スーパーアプリ”を目指して、進化を続けていく」

 11月5日、ソフトバンクの2020年3月期第2四半期の決算会見。宮内謙CEO(最高経営責任者)はこう宣言した。宮内CEOが期待を寄せるのは、ソフトバンクグループが全力で普及を目論むキャッシュレス決済サービス「PayPay(ペイペイ)」である。昨年10月のサービス開始から13カ月で利用者は1900万人を突破した。

 ペイペイが目指すのは、単なる決済アプリに留まらず、ショッピングはもとより、ホテルやタクシーの予約から公共料金の支払い、さらには保険や投資まで、あらゆるサービスをワンストップで手掛けることができる存在だ。この構想の一環としてショッピング分野を強化するため、ZHDはアパレルECサイト大手ZOZOの買収に踏み切った

 スーパーアプリ構想を具現化した例として宮内CEOが挙げたのは、ソフトバンクグループの中国アリババが手掛ける決済サービス「アリペイ」である。実際にアリペイは決済だけでなく、レストランやチケットの予約、資産管理や保険、小口融資などサービスの幅を広げ、利用者数は6月に全世界で12億人を突破している。

 ただ、宮内CEOはあえて言及しなかったのだろうが、中国にはアリペイと並ぶスーパーアプリがある。それがテンセントの手掛ける「ウィーチャットペイ」だ。

 アリペイがリリースされたのは04年。一方、後発組のウィーチャットペイが登場したのは13年で、既に地盤を固めていたアリペイの牙城を崩すのは困難とみられていた。ところがウィーチャットペイは怒涛の勢いで成長し、中国のキャッシュレス決済市場におけるシェアはアリペイが約50%、ウィーチャットペイは約40%と一気に追い上げた。

 ウィーチャットペイが急成長できた最大の要因は、メッセージアプリ「ウィーチャット」とひも付いていたからだ。ウィーチャットは中国版LINEのような存在だが、規模はけた違いで、月間アクティブユーザ数は10.8億人に達している。

 メッセージアプリはコミュニケーションツールとして1日に何度も使う。買い物のときだけ立ち上げる決済アプリと比べ、ユーザーとの距離は圧倒的に近い。頻繁に起動するアプリを“窓口”にすれば、周辺サービスをユーザーが目にする回数は必然的に増える。

 8200万人というLINEの顧客基盤もさることながら、スーパーアプリの実現に向けて、毎日必ず起動してくれる顧客との接点が欲しかった。これこそZHDがLINEに手を伸ばした要因だろう。

キャッシュレス決済は消耗戦
LINEペイ「300億円祭り」で営業赤字524億円

 一方、メッセージアプリで一発当てたLINEもまた、サービスの幅を広げ、スーパーアプリを目指していた。ショッピングのほかにも、金融関係では昨年10月に損保ジャパン日本興亜と組んで「LINEほけん」のサービスを開始し、今年8月には野村HDとLINE証券を始めた。また、みずほフィナンシャルグループとLINE銀行の発足準備を進めている。

 LINEニュースやゲームなど、一定のユーザーを獲得して成功している領域もあるが、多くはまだまだ発展途上だ。16年にはLINEモバイルを設立してMVNO事業に参入したが、最終的にソフトバンクに身売りする形となった。

 現状のLINEの収益を支えるのは広告やゲーム、漫画などのコンテンツであり、LINEが抱える膨大な顧客基盤の活用を目論むものの、投資先行で苦戦が続いている。

 とりわけ先行きが不透明なのが決済分野だ。キャッシュレス決済サービス「LINEペイ」は14年にサービス開始以降、着実に育ててきたのだが、ここにきて熾烈な競争に巻き込まれている。昨秋デビューしたペイペイが、支払額の一部を還元する「100億円キャンペーン」を連発して急成長したことに煽られたのか、LINEペイも今年5月に「300億円祭り」で対抗。体力勝負の消耗戦に突入した。

 LINEの19年12月期第3四半期までの9カ月間で、売上高1667億円に対して営業赤字は275億円。広告などのコア事業は249億円の営業黒字だったにもかかわらず、LINEペイを含む戦略事業が524億円の営業赤字で、LINEペイの出血が大きな痛手になっている。

 ペイペイもまた、20年3月期第2四半期までの6カ月間で売上高15.9億円に対して345億円の営業赤字を計上。とはいえ、年間の売上高が9兆円を超えるソフトバンクグループにしてみれば、ペイペイの出費の痛みはLINEほど大きくない。

 スーパーアプリを目指すソフトバンクにとって、LINEは喉から手が出るほど欲しい存在だ。8200万人の顧客基盤に対してフルサービスを提供する余力に乏しいLINEの思惑とマッチしたことが、今回の経営統合を後押ししているのだろう。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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