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糖尿病や心筋梗塞とも関係…歯周病の恐ろしい「事実」とは

2019年11月04日 06時00分更新

文● 真島加代(ダイヤモンド・オンライン

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いつまでも自分の歯で食事をしたい…誰しもそう考えるもの。しかし、歯の周辺組織が炎症を起こして、最悪の場合、歯を失ってしまう“歯周病”を発症すると、大切な歯を守るどころではない。特に中高年以降は、歯周病の有病率が格段にアップするという。歯周病を防ぎ、大切な歯を守る方法とは。(清談社 真島加代)

心筋梗塞や糖尿病も…
歯周病と関わりが深い疾患

歯周病のイメージ
一度発症したら自然治癒することはなく、歯周病菌が血管に入り込めば心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすこともある。歯周病は恐ろしい病なのだ Photo:PIXTA

 歯周病は、歯と歯茎の間にある空洞・歯周ポケットの中で細菌が増殖して炎症を引き起こす疾患だ。

「歯周病の原因となるのは歯垢(プラーク)と呼ばれる細菌の塊です。歯垢の中にはむし歯菌や歯周病菌など1億以上の細菌がうようよしています。歯周ポケットの中は歯ブラシも届かないので、細菌が増殖していきます」

 そう話すのは、東京銀座シンタニ歯科口腔外科クリニック院長の新谷悟氏。実は、40~50代の中高年が“歯を失う原因”の約50%が、歯周病によるものだという。

「歯周ポケットにたまった歯垢は毒素を出して、歯肉や歯根膜、歯を支える骨(歯槽骨)などの歯周組織を刺激します。その後1週間ほどで硬くなり、歯石という物質に変化。歯の表面についた歯石に、また新たな歯垢が付着して細菌が増え、歯周病を悪化させるのです」

 歯垢による炎症は、歯肉の腫れや出血を引き起こす。その後も放置を続けると、歯の土台となる歯槽骨をも溶かしてしまうため、歯を支えることができなくなり、抜歯せざるを得ない状況に追い込まれるという。

「歯の土手が溶けてしまうと、インプラントを入れることも難しくなります。骨を作る手術などが必要になるのです。入れ歯を装着するにしても、入れ歯を安定させる土手が痩せてしまうため、入れ歯が外れやすかったり咀嚼が難しくなったりと、とても使いにくくなってしまいます」

 歯周病は、ただ歯がなくなるだけでなく、その後の生活の質を下げかねない重篤な病なのだ。また、歯周病はさまざまな疾患と関わりが深いことが指摘されている。

「歯の清掃を怠ると食べ物が歯に付着し、歯垢をためる原因になります。糖尿病の方は高血糖状態が続くことにより、免疫防御反応が低下し、感染症にかかりやすくなっているので歯肉炎や歯周炎を発症しているケースが多く、歯周病は糖尿病の合併症のひとつといわれていますね。そのほか、歯周病菌が血管に入り込むと、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすこともあるので、命に関わる病でもあります」

自然に治癒しない歯周病
早期の治療がカギ

 歯周病は、一度発症すると自然に治癒することがない進行性の疾患。進行度によって治療法も変わるが「とにかく早めに治療をはじめてほしい」と新谷氏は話す。

しんたに・さとる(東京銀座シンタニ歯科口腔外科クリニック院長) 1961年、香川県生まれ。祖母を舌がんで亡くした経験から口腔外科医を志し、岡山大学歯学部へ進学。その後、口腔外科治療や口腔がんの研究に携わり、2006年から昭和大学歯学部顎口腔疾患制御外科学講座主任教授、2010年には昭和大学口腔がんセンターセンター長に就任し、2014年に東京銀座シンタニ歯科口腔外科クリニックを開設。

「軽度の歯周炎は歯茎が少し赤くなり、腫れた状態。歯周ポケットは3~4mmほどの深さになります。歯周病の初期なので、歯周ポケットの中や歯の表面に付着した歯垢をスケーラーという器具で取り除く『スケーリング』という治療を施します。自宅では、医師や歯科衛生士の指導に基づいた正しいブラッシングをしてください」

 中度歯周炎は、歯茎が化膿して強い口臭を発するようになり、歯周ポケットの深さは4~5mmほど。ブラッシング中に歯茎から膿が出ることもある。歯周ポケットが5mm以上深くなっている場合は、局所麻酔をして歯茎を切開し、歯肉に隠れていたプラークや歯石を取り除くフラップ手術を行うこともあるという。

「重度の歯周炎になると、歯がグラついて歯茎がさらに腫れあがります。歯と歯のすき間が広がって歯茎が下がり、歯が長く見えるのも特徴ですね。歯周組織の再生を図る再生療法を施すこともありますが、ここまで進行している歯は抜歯する可能性が高いです」

 歯周病は、目に見える変化のほかにもさまざまな自覚症状が見られるという。歯周病の代表的な症状は以下だ。

□歯がむずがゆい感じがする
□歯と歯肉の接しているところが赤く腫れている
□歯を磨いたときに出血が見られる
□歯肉から膿が出る
□口臭が気になる
□唾液がネバネバする
□朝起きたときに口の中に不快感がある
□食べ物がかみづらくなる

 上記のうち、6つ以上当てはまった場合は歯周病がかなり進行している可能性があるという。すぐに治療をはじめよう。

自宅のケアと
定期的なクリーニングは

 歯周病は個人の食事内容や嗜好品によってリスクが変わる、生活習慣病でもある。特に喫煙者は注意が必要だという。

「たばこに含まれる化学物質は血流を悪くするので歯茎の腫れや出血を抑えます。たとえ歯周病が進行していても、自覚症状が表れにくく発見が遅れてしまうのです。また、治療中も喫煙していると血行の悪さが治療の妨げとなり、治りにくくなることもわかっていますね」

 甘い物を好む食生活や歯ぎしり、唾液が少ないドライマウスも歯周病の原因になるそう。歯周病を防ぐには、生活習慣の見直しもポイントになるようだ。また、日々のオーラルケアについて「ブラッシングだけで歯周病を防ぐのは困難」と、新谷氏は強く訴える。

「歯垢がたまりやすいのは歯と歯の間や、歯と歯肉の境目です。特に歯間には、ブラシが届かないので『フロス』を使って歯垢を取り除く必要があります。毎食後にフロスを通すのが理想ですが、最低でも1日に1回はフロスを通しましょう。フロスに血がついたら、ニオイをかいでみてください。“ドブのようなニオイ”がした人は、歯周病が進行している可能性が高いです。フロスを使うことで歯周病の進行具合もわかるんです」

 フロスが終わった後に水流で歯間を掃除する「ウォーターピック」を使うと、より効率的に歯垢ケアができる。その後、歯ブラシで歯の表面や歯と歯茎の境目をブラッシングして、仕上げにマウスウォッシュをするまでが日常のオーラルケアだという。

「工程が多いと感じるかもしれませんが、口の中は想像以上に繊細です。本当に自分の歯を大切に思うなら、歯科クリニックで定期検診やクリーニングを受けることをおすすめします。そもそも、歯周ポケットにたまった歯垢や歯石はセルフケアでは除去できません。口の中が清潔な人は、3カ月に1回、歯周病が進行している人はより頻繁に歯のクリーニングをすると歯周病の予防につながりますよ」

 また、歯周病リスクを下げるために正しいセルフケア方法を医師に相談してほしい、と新谷氏。老後も自分の歯を保つためにも、中高年のうちに、予防歯科をスタートさせるべきなのだ。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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