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三陽商会、4期連続赤字垂れ流しの裏にある「本当の課題」

2019年11月01日 06時00分更新

文● ダイヤモンド編集部,相馬留美(ダイヤモンド・オンライン

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三陽商会は自社ブランド「CAST:」を百貨店に投入するが…
三陽商会は自社ブランド「CAST:」を百貨店に投入するが… Photo by Rumi Souma

三陽商会の4期連続赤字が確定した。黒字予想が一転して赤字決算になった2020年2月期第2四半期だったが、10月30日に発表した第3四半期決算で、さらに通期予想も下方修正。惨憺たる状況で岩田功社長を更迭したものの、問題の本質はそこにはないようだ。(ダイヤモンド編集部 相馬留美)

迷走ではなく「打つ手なし」
止血不能の赤字垂れ流し状態

「下期は反転攻勢をかけますから」と、三陽商会の岩田功社長が強調したのは、つい3カ月前のこと。当初1億円の黒字見通しを立てていた上期が、6億円の赤字へと転落した2020年2月期第2四半期決算会見での発言だ。

 その岩田社長が、代表権のない取締役に降格する人事が、10月30日の第3四半期決算と共に発表された。発令は20年1月1日付けだ。

 第3四半期決算の内容に目を向けると、反転攻勢どころか、今期三度目の下方修正。通期の連結最終損益は15億円の赤字という救いようのない数字だ。これまで通期で7億円の黒字見通しを掲げていたが、4期連続で赤字となることが確定した。

 赤字に対する言い分は、売上高の7割となる百貨店チャネルの売り上げ減と、天候不順などを挙げる。百貨店の売り上げに関してはどこも苦しく、競合のオンワードは大量閉店も発表しているものの、同社はECやライフスタイル事業など他の収益源を確立しつつある。

 また、天候不順に関しては、先日業績を発表したファーストリテイリングも挙げてはいた。だが、ファストリはそれでも増収増益だったことを考えると、三陽商会の企業努力の不足というほかない。

 岩田社長の降格人事の予兆はあった。今年2月、20年君臨した代表取締役の座を13年に退いていた創業者の娘婿・中瀬雅通氏が、顧問から再び代表取締役会長に返り咲いていた。

「中瀬さんはもともと引退したかったのに、岩田さんに引き戻された。改めて経営者に戻ったからには、業績を立て直すために考えた結果、岩田さんに引導を渡したのではないか」と業界関係者はみる。

 岩田氏が取ってきた戦略の大きな柱が、デジタルトランスフォーメーションである。岩田氏の直轄で行われていたこの戦略は、早晩見直しが入ることになるだろう。

 後任として20年1月1日付で代表取締役社長となる中山雅之氏は、直近は人事担当役員であった。「今は社長に据えられる人物が社内にいない。中山さんは中瀬さんにとって目の届く人材なので、次の候補が内部から出てくるまでのリリーフだろう」と業界ではもっぱらの噂だ。

後手を打ち続ける三陽が
最も選んではいけない道とは

 しかし、なぜここまで三陽商会は落ちて行ってしまったのだろうか。

 三陽商会に近いビジネスモデルの企業といえばオンワードだ。ただ、「オンワードと比較すると、三陽商会は何度も出遅れた」と、小島ファッションマーケティング代表の小島健輔氏は語る。

 たとえば、オンワードは90年代に「五大陸」「組曲」などの自社ブランドを立ち上げ、ライセンスビジネスから脱している。一方、三陽商会はライセンスビジネスにこだわり、「バーバリー」とのライセンス契約終了を見越してマッキントッシュ社とライセンス契約を結んでいるが、いまだにバーバリーの穴は埋まらない。

 オンワードはいち早くECにシフトすることによって、百貨店からの退店という思い切った手が打てた。

 しかし三陽商会では、いまだに売り上げの約7割を占める百貨店が重要なチャネルである。第2四半期決算でも百貨店の売上高は前年比96.8%とじりじりと下がっていても引けない状況にある。

 まだ売ることができる土地やキャッシュがあるうちはいいが、バーバリーを失ったころとは違い、現在の三陽商会の買い手はもういない。

 経営の立て直しのためには、デジタルトランスフォーメーションは粛々とやるべきだ。岩田氏が外部登用した慎正宗執行役員は続投し、引き続きデジタル化を急ぐが、業績へのインパクトはまだまだ小さい。

 根本的に同社が改革を考えるなら、百貨店事業の立て直しをする必要があるだろう。百貨店市場が縮小していくことに変わりはないが、百貨店にとって三陽商会はオンワードよりもプレゼンスが高いぶん、まだ勝機はある。

 現在、自社ブランドとして立ち上げた「CAST:」を地方百貨店やSC(ショッピングセンター)を中心に出店を進めているが、「品質やターゲットは間違いなく百貨店で戦えるレベル。都市部のほうが成功できるはずだ」とあるマーケターは率直に話す。

 とはいえ、CAST:は立ち上がったばかり。このままずるずると赤字が続けば、キャッシュが潤沢にあったところでいずれは尽きる。

 考えうる最悪のシナリオとは。「会社はブランドが大事だと思っているため、切羽詰まれば、国内自社工場の事業譲渡をするのではないか。三陽商会の中でも工場なら引き取り手があるだろう」とある業界コンサルタントは声を潜める。

 これは、品質こそが同社の本質的な強さだということの証左だ。国内に生産工場を持ち、高品質の製品を作ることができるのは三陽商会の最大の強みである。バーバリーはライセンスがあったから売れていただけではなく、製品のクオリティが伴ったからこそ売れたのだ。

 しかし、事業の切り売りは“禁じ手”だ。使えば三陽商会の致命傷になるだろう。新社長体制がどの事業に注力していくかの選択に、同社の命運はかかっている。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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