このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

Yamaha Network Innovation Forum 2019で聞いたユーザーの声

クラウドエンジニアが語るヤマハの仮想ルーター「vRX」への期待感

2019年10月25日 15時30分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

AWS以外で動かしたいクラウド・環境はどこ?

 続いてvRXをどこで動かしたいかというお題。現状はAWS版のみなので、自由回答でどの環境がよいかを聞いたところ、「Azure」「さくらインターネット」「ニフクラ」などの国産クラウドのほか、「VMware」や「Hyper-V」などの仮想化基盤のほか、「自宅」といった声もあった。これに関しては「(スライドに映った)字の大きさがまさにわれわれの優先順位。Windowsユーザーが意外と多い印象」(小島氏)、「可搬性という意味では自宅でも確かに動かしたいかも」(大谷)、「しこたまメモリを積んだマシンでOSSのルーターを動かしていたので気持ちはわかる」(大瀧氏)などのコメントがあった。次に対応するプラットフォームが気になる。

ヤマハルーターどこで動かしたい?

 3つ目のお題は仮想ルーターの冗長化について。「仮想ルーターで気になる点を聞くと、1つ目は「性能出るの?」で、意外と多いのが「冗長化できるの?」でした。クラウドって止まらない印象あるけど、みなさん冗長化はけっこう気にしているんだなと」(小島氏)ということで、議題に挙げた。「必須」と「いらないから安く」という選択肢を用意したが、当初は「必須」が多かったが、「いらないから安く」の声もどんどん増えてきた。

 ルーターの冗長化に関しては、VRRPのようなプロトコルで瞬時に切り替える方法もあるが、仮想ルーターで同じことを実現する必要があるのかはヤマハでも迷いがあるという。これに対してクラウドエンジニアの大瀧氏曰く、「クラウドが止まらないというのは、やはり誤解があるし、既存のネットワークと同じレベルの冗長化が必要なのかという点も検討が必要だと思う。AWSだとサーバーやAZの冗長化はむしろ推奨されるけど、要件として問題なければ、瞬時の切り替えにこだわらなくてもよいのでは」と指摘。また、大谷も「クラウド上で動くルーターは、システムの中の部品になっていくわけで、システム要件にあわせて、いろいろな冗長化のパターンをとれるのがメリットだと思う」と語る。

ほしいのはVM版?従量課金?スケーラビリティ?

 以降はvRXに期待することのフリー回答とアンケート。これに対しては、「VMware版ほしい」「性能面」「トラブらない」「手元のPCで動かしたい」「セキュアで柔軟なネットワーク構築」「RTXと同じように動く」「ちゃんと動く」「分散ルーター」「AS Path使いたい」など数々の意見が書き込まれた。短期間で評価版を試した大瀧氏は、「AWSのもともと持っているVPNよりもバリエーションはあるかなと。iOSやAndroidで標準サポートしているL2TP使えるのはリモートアクセスするのにいいし、コマンド投入したらいきなり設定できるのはうれしい」と感想を語る。

フリー回答でvRXに期待することを募集

 小島氏は「トラブらない」という意見をピックアップ。「障害が起こった際には、クラウドとネットワークの両方の知見が必要になるので、正直ちょっと心配しているけど、大丈夫ですかね」と聞くと、大瀧氏は、「AWSの上にvRXが載っていくので、仕組みが複雑になっていくのは正直しようがないところ。障害の切り分けは運用をやっていかないとわからない」と語る。大谷は「私は前向きにとらえていて、クラウドわかる人がネットワークを学ぶのに使ったり、ネットワークユーザーがクラウドを学んだりすれば、エンジニアはもっと高い価値を生み出せると思う」と語る。現状でも、デプロイや設定のドキュメントは用意されているが、今後はトラブルシューティングのドキュメントも充実させていきたいという。

 また、「従量課金にしてほしい」という意見も出た。「クラウドなんだから、やっぱりトラフィック量の従量課金なんじゃないって、小島さんに話した気がする」と大谷が語ると、小島氏は、「売りきりのハードウェアをライセンス販売にするのもチャレンジでしたが、従量課金はさらに先のチャレンジ。まずは1年分のライセンスをどう使ってくれるかをみたい」とコメントする。

 先ほど扱ったGUIや可視化への要望も多かった。これに対して大瀧氏は、「AWSの学習コストって決して低くない。VPCの設定もウィザードでできるが、各コンポーネントを完全に理解するのはそれなりに勉強が必要。その点、AWSのマネジメントコンソールから、今まで扱っていたヤマハのルーターを見られるというのは価値が高いと思う」とコメントした。

 逆に意外と関心が低かったのはスケーラビリティ面。vRXでサポートされるインスタンスは限られているが、t3.mediumでも1000対地までVPN接続でき、c5.xlargeを使うと6000対地くらいまでいけるという。小島氏は、「最上位機種のRTX5000が3000対地なので、けっこう拡張性高いと思う」とコメント。逆に暗号化処理をチップ化していることもあり、性能面は物理ルーターの方がまだ高いことも多いとのこと。ライセンスに関しては、「光ファイバが一般化しているスループット10Mbpsなんて使われるのかなと思ったけど、意外とニーズはある。もっと安価なライセンス帯は考えてみたい」と小島氏もコメントする。大瀧氏は、「AWSでハイスケールなルーターは意外と空白地帯なので、刺さるところには刺さると思う」と語る。

モデレーターを務めたアスキー編集部の大谷イビサ

 続いて、イベント参加者全員に対して、vRXトライアルライセンスを無償提供することが紹介された。小島氏は「ハードウェアだと試用は頼みにくかったですが、vRXはソフトウェアなので気軽に試していただけます。期間は決まっていますが、10Gbpsのスループット、100VPN接続まで使えます」とアピール。実際に試した大瀧氏は、「ドキュメントが充実しているので、AWSとvRXのアカウントがあれば、本当に手軽に動かせます。コマンドがたたけるようになったら、NATとVPNを仕込んで、隣のサブネットのEC2につなぐとかやってみてほしい」とアドバイスする。

 最後は3人で今後のvRXの進化の方向性を語る。「ヤマハのルーターのコンフィグを外からvRXに入れられる仕組みがあれば、もっと使いやすくなると思う」(大瀧氏)、「クラウドの中で、ネットワークをいかに部品として組み込んでいけるかが気になる。物理ルーターでも、仮想ルーターとも、違うヤマハルーターの価値を作ってほしい」(大谷)「外からコンフィグ入れる仕組みとして、まずはYNOへの対応から進め、個人的にはクラウドフォーメーションとかにも対応さえていきたい」(小島氏)などとコメントし、参加者を交えたセッションも無事終了した。

 会場ではヤマハやパートナーによる展示やセッションも行なわれた。ヤマハの展示では新技術SoundCapを搭載した「YVC-330」などのスピーカーフォンのほか、ルーター、スイッチ、無線LAN APなどの各種ネットワーク機器などが勢揃いし、交通広告も話題となっている「ネツエン」に関するセッションも披露された。

声以外のノイズキャンセルが可能な「YVC-330」が試せるブース

カクテルパーティ時に行なわれた「ネツエン」のセッション

 Yamaha Network Innovation Forum 2019は、仙台(11月8日)、札幌(11月13日)、名古屋(11月22日)、福岡(11月29日)でも開催される。

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ