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ハイパースケーラークラウドをインフラに稼働する新しいデータプラットフォーム

SAP幹部に聞く、「SAP HANA Cloud Services」のメリットとは

2019年10月24日 07時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 SAPがインメモリプラットフォームの「SAP HANA」を発表して9年。今年5月には、HANAを中心に据えたクラウドデータプラットフォーム「SAP HANA Cloud Services」も発表した。

 このHANA Cloud Servicesによる“コンピュートとストレージの分離”が「さまざまなメリットをもたらす」と説明するのは、SAPでPlatform and Technologies事業本部のプレジデントを務めるイルファーン・カーン氏だ。今回はデータプラットフォーム戦略を中心に話を聞いた。

SAP Platform and Technologies事業本部 プレジデントのイルファーン・カーン(Irfan Khan)氏。「すでにSAPの売上の半分はクラウドから。顧客企業はクラウドファーストになっている」

――SAPは今年5月に「SAP HANA Cloud Services」を発表しました。あらためて、SAP HANAのこれまでの進化を説明してください。

カーン氏:SAPではおよそ10年前にHANAを発表した。その際のコンセプトは単純で、“トランザクション処理とアナリティクス処理の分離”というものだった。企業においてはデータの約30%が複製されているが、その理由は(トランザクション処理の)システムが保持しているデータをアナリティクス処理するために、別環境にコピーする作業を繰り返しているからだ。システム規模が大きくなるほどこの問題の影響も大きくなり、また複雑化していた。

 当時のデータベース(RDBMS)市場はオラクル、マイクロソフト、IBMの3社による寡占状態であり、新たなデータベース製品として競合することを目的にHANAの技術を開発したわけではない。

 ひとつのデータに対してトランザクション処理とアナリティクス処理の両方を行えるHANAの導入によって、顧客企業ではデータのコピー問題が軽減された。TCO(総所有コスト)の削減だけでなく、新たに発生したトランザクションデータをすぐに分析できる能力を使って、ビジネスプロセスの効率化も図ることができる。「経営層が重要な情報をすぐに得られる」というのが、HANAの導入を訴える大きなメッセージだった。

 ただしアーキテクチャの点では、HANAはコンピュートとストレージが分離されていなかった。それにより環境がシンプル化されたわけだが、ここ数年でデータ管理市場が進化したために、コンピュートとストレージの土台を分離する必要がでてきた。そこで、SAP HANA Cloud Servicesではコンピュートとストレージを分離した。

 SAP HANA Cloud Servicesという1つの“アンブレラ(傘)”の下には、分離されたコンピュートとストレージの基盤があり、そこにデータ管理の「SAP DataWarehouse Cloud」のようなさまざまなサービス群が実装されている。このサービス群は今後も増やしていく。

SAPPHIRE NOW 2019で発表された「SAP HANA Cloud Services」

――SAP HANA Cloud Servicesの顧客メリットは何でしょうか? また、クラウド事業者との関係は?

カーン氏:企業はこれまで、最初の段階でハードウェアやメモリ容量などのキャパシティプランニングを行う必要があった。一方でSAP HANA Cloud Servicesの場合は、基本的にハードウェアの制約を受けずに各種サービスをプロビジョニングできる。Amazon Web Services(AWS)やMicrosoftといったパブリッククラウド事業者のインフラサービスを利用して、クラウドネイティブなデータレイクとしてストレージを拡張できる。

 この特徴によって、HANA Cloud Servicesのユーザー企業は、ビジネス成長とデータの増大に合わせてシステムを柔軟に拡張できる。インフラの心配をする必要もなく、コンピュートとストレージを個別に拡張していくことができる。もちろん、HANAの特徴である高速なデータ処理というメリットも享受できる。

 AWSやMicrosoft、Googleなどの“ハイパースケーラー”クラウドは、HANAスタックを動かすためのインフラであり、企業は自社が利用しているクラウドベンダーを選べば良い。「OSはWindowsかLinuxか」と選んでいたのと同じことで、どのクラウドを選択しても(HANA Cloud Servicesが提供する)機能は同じだ。

――今後、どのようなサービスを追加する予定ですか?

カーン氏:現在発表済みのサービスはSAP DataWarehouse Cloud、SAP Analytics Cloud、SAP HANA Data Lakeだ。これから出てくるサービスを予測するのは難しいが、たとえば金融商品の取引所など、短時間に莫大な処理が集中する環境向けの“Extreme OLTP”といったサービスを考えている。これにより、ワークロードのバーストを支援できるだろう。

――SAP Analytics Cloudと人事クラウド「SAP SuccessFactors」との統合を発表しました。同じように、他のアプリケーションも統合を進めていくのでしょうか?

カーン氏:「SAP Concur」「SAP Ariba」など、SAPが提供するすべてのSaaSにはアナリティクスの要素があるので、SAP Analytics Cloudの統合を進めていく。詳しくは今後発表する予定だ。

 その第一弾がSuccessFactorsになったのは、(ConcurやFieldglassと比べて)買収のタイミングが早く、HANAがそのランタイムになっているからだ。また、SuccessFactorsは「会話型AI」などリッチなインタラクションがユーザーに求められる分野でもある。SAP Analytics Cloudを土台として統合することで、リッチなエンゲージメントが実現する。

――最後に、今後の計画について教えてください。

カーン氏:SAPは“Business Technology Platform”として、顧客のデジタル改革を支援するソリューションを揃える。高いレベルの統合を構築する必要があり、インテリジェンス、データベースなど個々の技術の柱をまたぐアイデンティティ管理、ワークフォース管理、データガバナンスなどを構築する必要がある。

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