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高校野球の投球数と金属バット制限は進むか?「週500球」提言の賛否

2019年09月29日 06時00分更新

文● 戸田一法(ダイヤモンド・オンライン

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高校野球の投球制限は進むか…
高校野球の投球制限は進むか… Photo:PIXTA

日本高校野球連盟(以下、日本高野連)が設置した「投手の障害予防に関する有識者会議」第3回会合で、有識者会議は日本高野連理事会に、春夏の甲子園と地方大会に「週500球」の「投球数制限」導入を提言する方針を固めた。この夏は大船渡高校(岩手)の佐々木朗希投手の起用法を巡り、さまざまな意見も飛び交った。高校球児を守るための球数制限は動き出すのか。(事件ジャーナリスト 戸田一法)

3連投禁止、金属バット制限も

 第3回会合は20日、大阪市で開かれた。夏の甲子園以降は初めての開催で、さまざまな具体策が提示された。

 まず柱になるのが、投手1人の投球数について「7日間で500球以内」とする制限を設けたこと。もう1つは投手1人の「3連投の制限」。3日連続の登板は球数に関係なく禁じる、という内容だ。

 ほかに試合だけではなく、▽日ごろの練習でノースローデーを設置、▽講習会などを通じた指導者の育成、▽健康管理と障害予防の徹底、などを盛り込むとした。

 即時にルール化するのではなく、まずはガイドラインとして提示。3年間の試行期間を経て検証し、軟式野球の全国・地方大会も対象とする。時期は「来春のセンバツから」を提案する方針という。

 ほかにも投手保護の観点から、打者有利となる金属バットの高い反発性を見直し「飛ばないバット」の導入を目指す。

 有識者会議は11月に第4回会合で提言をまとめ、同下旬の日本高野連理事会に提出する。それぞれの提言は理事会を経て正式に承認される。

 球数制限の問題を巡っては、新潟県高野連が昨年12月、春季新潟大会で「投球数が100球を超えたイニングまでの登板とする」という独自の制度導入を表明。

 日本高野連が今年2月に「勝敗に影響を及ぼす規則は全国で足並みをそろえるべきだ」として再考を促し、新潟県高野連は3月、有識者会議発足の取り組みなどを受けて撤回していた。

ご意見番vs現役メジャー投手

 投手の球数制限や起用法を巡ってはこの夏、甲子園予選となる岩手県大会で大船渡高校の佐々木朗希投手が決勝戦の登板を回避したことを受け、往年のプロ野球名選手と現役メジャーリーガーの応酬も話題になった。

 通算3085本安打など輝かしい記録を打ち立てた野球評論家の張本勲さんが、7月28日放送のテレビ番組で「最近のスポーツ界で一番残念だと思いました」「けがを怖がったんじゃスポーツ辞めたほうがいい」「楽させちゃダメ」などと発言。

 これに対し、メジャーリーグのシカゴ・カブスに所属するダルビッシュ有投手がツイッターで「シェンロンが一つ願いこと叶(かな)えてあげるって言ってきたら迷いなくこのコーナーを消してくださいと言う。」と強烈に批判した。

 シェンロンとは人気少年漫画「ドラゴンボール」に登場し、世界中に散らばるドラゴンボールを7つすべて集めると、どんな願い事でもかなえてくれる神龍だ。

 さらに翌日に「10万いいね」が付いたことに驚きを示しつつ「自分ほど酷使をされなかった強豪校のピッチャーはいないと思います」などと、肩が温存された東北高校時代の経験を明らかにしていた。

 このやりとりは、スポーツ新聞や雑誌、ネットなどで賛否が渦巻き、ちょっとした論争にも発展した。

 この問題を分かりにくくしたのが、大船渡高校監督の采配かもしれない。というのは、コアな高校野球ファンならご存じと思うが、佐々木投手は7月21日の4回戦で194球を投じた。

 実戦でマウンドに立てる複数の投手を育てていたのに、戦力的に有利と見られていた準決勝では佐々木投手が登板。一方、決勝戦の王者・花巻東戦に控え投手を先発・継投させ、4番バッターでもあった佐々木投手はベンチから声援を送り続けた。

 監督は佐々木投手が注目され始めたころから、無理をさせない方針を明言。決勝戦で佐々木投手を登板させなかった理由としても「故障を防ぐため」と説明したが、4回戦の投球数、準決勝と決勝の起用法は明らかに不可解だった。

 監督は筑波大を卒業後、アメリカ独立リーグでプレーしており、本場の経験者だ。なぜこんなことになったか。

 推測だが、歴史の古い公立高校は甲子園出場のチャンスがあると、突然に「あんた、誰?」というOBや自称・関係者が湧いて出てくる。

 同じような状況になった監督から何度か話を聞いたことがある。ある方は「船頭が乗客より多くて、今にも沈みそうな状態」と話していた。大船渡高校監督の“迷走”は、そうした方々の圧力という邪魔があったのかもしれない。

 大船渡高校には決勝戦後、さまざまな苦情や嫌がらせの電話やメールが寄せられたという。こうした外野のノイズは当事者にとって迷惑極まりないので、本当にやめてほしいと思う。

金属バットと木製バット

 今回の提言で関係者を驚かせたのが「金属バットの性能見直し」だ。

 金属バットと木製バットの違いについて、詳しくご存じの方はそう多くないのではなかろうか。

 さまざまな説はあるが、一つは打球を飛ばすための芯の部分が木製は狭く、金属は広いという点だ。技術のない高校生は、芯を外してバットを折ったり、手首を痛めたりする。

 チーム事情にもよるが、折りまくると経済的にそれほど潤沢ではない高校野球では補充が大変だし、下手すると骨折する。そこが一番、大きな理由とされる。

 もう一つは反発力の違いだ。打ち方も違い、金属は反発力ではじき返す感覚だが、木製はムチのようにしならせ、パワーで運ぶという感覚だ。

 金属は芯を外してもボールが弾むのでヒットになりやすく、遠くまで飛ぶとされる。明らかに打者有利の道具なのだ。

 とはいえ、前述の事情で金属を禁止するというわけにはいかない。今回の提言は、金属の反発性能を抑制し、木製に近づけるというものだ。これは面白い試みと思う。

 1998年夏の甲子園で782球を投じた横浜の松坂大輔、2006年夏に948球を投じた早実の斎藤佑樹、昨年夏に881球を投じた金足農の吉田輝星…。

 松坂はとっくに200勝していたのではないか…。斎藤はもっと華々しい活躍をしていたのではないか…。吉田は今シーズンに新人賞を取れるほど活躍していたのではないか…。

 賛否両論あると思う。

 筆者はご意見番の現役時代を見ていた。大ファンであり、憧れでもあった。

 しかし、故障で野球をあきらめた球児を多く見てきた筆者の感想だが、ご意見番の意見は「われわれ年寄りを楽しませてほしかった。後は知らんけど…」というように聞こえた。正直、少し残念だった。

 有識者会議第4回会合と、日本高野連理事会の結論に期待したい。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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