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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第529回

HPの命運を変えた第一世代PA-RISCの誕生 業界に多大な影響を与えた現存メーカー

2019年09月23日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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低価格版のPA-7100LCが発売

 PA-7100をベースとした低価格版のPA-7100LCが、やはり1994年に登場している。Hummingbirdというコード名のこのPA-7100LC、基本的な構成はPA-7100/7150に似ているが、ALUが2命令同時実行(ただし完全なALUは1つで、もう1つはLoad/Store/Shiftのみを実行)で3命令のスーパースカラ構成となった。

 そのほか、1KBの1次命令キャッシュがチップに内蔵され、それとは別にオフチップで1MBの1次命令キャッシュと2MBの1次データキャッシュが接続されるという形になっている。

 この1KBの内蔵1次キャッシュは、言ってみればオフチップの1次命令キャッシュのFIFOというかプリフェッチバッファとでもいう構成になったほか、メモリーコントローラーもチップ内に内蔵された。

PA-7100/7150で必要なMIOCが削減できることで、CPUボードの簡素化が可能になった。実際PA-7100LC以外に必要なのはキャッシュとTAG用のSRAMだけである

 もっともその分TLBは64エントリーに、BTLBは8エントリーに減らすことでダイサイズの削減を図っているが、その代わり3命令の命令キューや静的な分岐予測メカニズムを実装するなど性能改善の工夫も追加されている。

 プロセスはやはりCMOS26Bながら、0.75μmと微妙に微細化が進められている。動作周波数はやはり最大100MHz、トランジスタ数はやや増えて90万個、ダイサイズは14.2mm角となっている。

PA-7100LCのダイ写真。前述のPA-7000のダイ写真と比べると結構配置が異なっているのがわかる

 このPA-7100LCはHP 9000/712・715・725・743i・748iのワークステーションのほか、HP 9000/D200・D210・D300・D310及びE25・E35・E45・E55 の各サーバーに利用された。

 このあと命令セットをさらに拡張したPA-RISC Version 1.1dを実装し、プロセスを0.55μmのCMOS14Aに切り替えてキャッシュ容量や速度を向上したPA-7200が1995年に、このPA-7200をベースとしたローコスト版ながら、オンチップで64KBの命令/データキャッシュを搭載し、MAX-1というマルチメディア向けSIMD命令拡張を実装、プロセスを0.5μmに微細化したPA-7300LCを1996年にそれぞれリリース。このPA-7300LCが第一世代PA-RISCの最後の製品となった。

HP 3000シリーズでも使われていた
PA-RISC

 さて、このPA-7200やPA-7300LCはもちろんHP 9000シリーズにも利用されたわけだが、HP 3000シリーズを無視していたわけではない。

 実際以下の大きく5つのグループがPA-RISC 1.1ベースのCPUを搭載して提供されたことはわかっている。

PA-RISC 1.1ベースのCPUを搭載した製品
グループ 製品名
グループ1 HP 3000 Series 917・920・922・927
グループ2 HP 3000 Series 937・947・948・957
グループ3 HP 3000 Series 958・967・977・987
グループ4 HP 3000 Series 990・991・992・995
グループ5 HP 3000 Series 918・968・978・988

 問題はどのグループがどのCPUを使っていたのか、今回調べがつかなかったことだ。ただHP 3000シリーズはこの第一世代PA-RISCとともに製品を投入し続け、次のPA-RISC 2.0世代まで製品提供が続いており、20年を超える期間出荷が続く、看板シリーズになっていたのは事実である。

 そのHP 3000シリーズを最終的に置き換え始めたのがHP 9000シリーズであった、という話を次回説明したい。

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