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サウジ施設攻撃で石油供給に不安、消費増税の日本経済「直撃」の恐れ

2019年09月19日 06時00分更新

文● ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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無人機による攻撃を受けたサウジアラビアの石油生産関連施設。世界中に石油供給不安が一気に広がった Photo:REUTERS/AFLO

サウジアラビアの石油生産関連施設が無人機によって攻撃され、石油供給不安が世界中に広がっている。攻撃直後は原油価格が上昇。中東で混乱が長期化し、原油価格が高値で推移すれば、消費増税を控える日本経済を直撃する恐れが出てくる。(ダイヤモンド編集部 竹田孝洋、堀内 亮)

 「今回の石油供給不安はタイミングが最悪」。エネルギー業界関係者はこわばった表情で「消費増税と重なるなんて」と呻いた。

 9月14 日にサウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコの石油生産関連施設が無人機による攻撃を受け、原油価格が上昇した。

 この攻撃によって、世界の生産量の約5%に当たる日量570万バレルの生産が停止に追い込まれた。世界最大ともいわれるサウジの石油生産関連施設が襲われたことは、国際石油市場に衝撃を与え、石油供給不安が一気に広がった。

 一般的に原油価格が上昇した場合、燃料費や原材料費の高騰につながる。企業はその高騰分を価格に転嫁する。最終的には電気代やガス代、ガソリン代、または小売価格の値上げという形で消費者はその影響を受ける。

 ただ、タイミングが悪い。ここしばらくは、日本企業は簡単に価格転嫁に踏み切れない状況なのだ。

 日本では10月に消費税率が8%から10%に引き上げられる。消費増税によって、ただでさえ消費が落ち込む上、原油価格上昇の影響による価格転嫁に踏み切れば、さらに消費マインドに冷や水を浴びせかねない。

 最悪のパターンは、原油価格上昇分を価格転嫁できずに原材料費の上昇分をもろにかぶり、製造業をはじめ多くの業界で業績を悪化させる企業が続出することだ。

 日本エネルギー経済研究所の分析によれば、原油価格が1バレル当たり15ドル上昇した場合、日本経済の成長率が0.2%押し下げられるという。

 さて、原油価格はどこまで上昇するのか。

 欧州の原油価格の指標である北海ブレントは9月16日に一時、1バレル当たり70ドルを超え、前日比で約16%上昇。湾岸戦争以来28年半ぶりの上昇率を記録した。

 同日に米国の価格の指標であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)は一時、1バレル当たり60ドルを超え、前日比15%上昇した。11年ぶりの上昇率だ。

 世界各国は、市場の安定化へ動きだしてはいる。サウジは在庫を取り崩して輸出に充てる方針であるとされ、米国も原油価格が高騰すれば戦略石油備蓄を取り崩すとしている。

 市場関係者の間で、原油価格がさらに上値を追っていくと予想する向きは17日時点では少ない。

 攻撃直後に記録した北海ブレントの70ドル台、WTIの60ドル台。それ自体は今年の5月前後の価格水準と同じだ。この価格レンジにとどまってくれれば、世界経済に大きな影響はないだろう。

 しかし、原油価格がさらに上昇していく可能性が消えたわけではない。

 サウジは早期に石油関連施設の生産能力が回復するとしているが、攻撃前の状態に戻るには数ヵ月かかるとの情報もあり、そうなれば在庫が底を突いて、生産が停止している日量570万バレルの減少分をサウジ以外の産油国で補わなければならない。

 中東産油国を中心とするOPEC(石油輸出国機構)加盟国の余剰生産能力は日量500万バレルとされ、「200万バレルがサウジ、160万バレルがイラン」(新村敏弘・マーケットリスクアドバイザリー代表)。サウジ、イラン両国を除いたOPEC加盟国の余剰生産能力は140万バレルしかないとみられる。

 フル稼働している非OPEC加盟国の余剰生産能力は乏しい。故に最悪の場合、日量300万バレル前後が不足する恐れがある。

 米国のシェールオイルの増産が期待されるが、シェールオイル生産企業は増産に踏み切りにくいという。地政学リスクによる高騰となると、状況の変化で一転、価格が反落する可能性があるからだ。

 また、武力衝突の懸念も消えない。今回の無人機攻撃について、イエメンのフーシ派が犯行声明を出したものの、米国は、フーシ派を支援しているイランの犯行と断定している。対イラン強硬派のボルトン氏の大統領補佐官辞任で好転するかに見えた米・イラン関係は、再び緊張が高まっている。

 攻撃したのがフーシ派にせよ、イランにせよ、石油関連施設を破壊されたサウジが報復をしないでいるとは考えにくい。

 世界最大の石油供給エリアである中東で武力衝突が起き、報復し合う展開になれば、原油価格が100ドルに近づいてもおかしくない。

 中東での混乱が長期化すれば、米中貿易摩擦長期化で減速傾向が続いている世界経済の足を引っ張ることになりかねない。

石油元売りは原油価格上昇で恩恵を受ける

 中東の混乱が長期化し、原油価格が高値圏で推移すれば、日本企業への影響も大きくなっていこう。その中で、 原油価格の上昇で恩恵を受ける業界がある。JXTGホールディングスや出光興産が代表格となる石油元売り業界だ。

 元売り各社には、70日間の「民間備蓄」が法律で定められている。原油価格が上昇すれば備蓄分の在庫評価がプラスとなり、増益要因となるのだ。

 多くの業界にとって事態の長期化は憂いだ。今のところは日本への影響は軽微だが、70ドル前後で推移したとしても、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動減が懸念される時期に物価上昇圧力が増大することになり、消費減に拍車を掛けるだろう。武力衝突ともなれば世界経済のより一層の減速による輸出減少も加わり、日本経済が腰折れする可能性が高まる。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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